波間の恋
ごま油を引いたフライパン
波間の恋
音を立てて押し寄せた波が静かに引いていった時、彩奈の恋は終わりを告げた。
ここは七里ヶ浜。多くの人の想いが波に攫われていく場所だ。
彩奈も、二年間の想いを波に攫われたが、彼女はそれを取り戻そうと走ることもしないで、ただただその場で涙を流した。
同じ部活、一個上の先輩だった。
「ごめん。彼女がいるんだ」で終わったその恋はきっと、いくら波間からすくい上げても、当分叶わないだろう。
彩奈の足元に波が迫ってきた。どうもそろそろ満潮らしい。彼女は、水しぶきに気づいて、一歩後ろに下がった。
いっぱいの波が打ち寄せ、引いていく。
波間の恋 ごま油を引いたフライパン @gomaabura_pan
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