トランペットで籠城します!〜俺の五日間籠城〜

Assuly

第1話 計画

「拓人、宿題やった?」

母が無言で部屋のドアを開けて魔のセリフを言い放つ。俺にとっては大ダメージの言葉だ。

「今からやるところ。」

親に「宿題やった?」と聞かれた時に返す言葉の二代巨頭である。それは母も知っているため、

「じゃあゲーム預かるね。」

最悪のカウンターと共に、ゲームを持ってリビングへと戻る。

「あー終わった……。」

俺の口から出た言葉はそれだけだ。

俺の名前は鈴木拓人、今は中学二年として普通の生活をしているつもりだが、周りからは厨二病と言われている。人にはそれぞれの考え方があり、個性を重んじる現代社会において「厨二病」という括りで多くの少年をまとめるのはいかがなものかと思いながら周りと接している。

そんな俺は母に対して反旗を翻そうと考えている。毎日のように聞かれる宿題の件、別に言われなくとも夜にはするのにも関わらず、帰宅後一時間以内に聞いてくる。「なぜ俺には自由がないのか!」という気持ちが反旗を翻す理由の全てだ。

時はそれなりに流れ、ゴールデンウィーク前日だ。今年のゴールデンウィークは、奇跡的な祝日と休日の重なり方から五連休を獲得している。俺はいつも通り退屈な学校生活から解放され、やっとの思いで家へ帰ることができた。そして帰って自室へ入った瞬間計画を実行する。

その計画は至ってシンプルだ。まず家にあったトランペットをケースに入れる。そしてそれをドアとベットの足に挟み外から開かないようにする。以上だ。

そう、これは自室に籠城することが目的の計画である。何があっても家族を自室に入れさせずゲーム機を死守する、そしてこの五日間の予定を、自分だけで構築し充実させることが最終的なゴールだ。

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