第8話

【ある過去の話】


9年前の私は、絵本で読んだサンタさんが大好きで、将来の夢はサンタさん!って言ってたこともあった。とお母さんから聞いたことがある。

でも、サンタさんは大きくなったら来ないと知って。


『じゃあ、ユイちゃんはおとなにならない!』


って宣言した。


『サンタさんになるには大人にならないといけないなぁ。』


お母さんは私にそんなことを言った気がする。


『なんで!おとなになったらこないの?』


『大人になるとね、サンタさんのことを忘れちゃうのよ。』


今なら意味が分かる。歳を重ねるに連れてクリスマスは「サンタさんが来る日」ではなくなっていくということ。クリスマスがただの平日になっていくということ。


昔の私には分からなかった。


『ユイちゃんはわすれないの!わすれなかったらサンタさんくるもん!』


『ほんとかなぁ。』


だって…と小さな声でつぶやく私がみえる。ふてくされて手に持っていた絵本をいじり始めた。私ってこんなに本好きだったっけ。


『そうだ!ママ!ことしのおねがいごときめた!』


昔の私がいきなり顔をあげる。何かを思いついたらしい。残念なことに今の私は何も覚えていない。



『おとなになっても、サンタさんをおぼえていますように!』

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