リアルハント

岸亜里沙

リアルハント【前編】

ダウンロードしたネットゲーム『リアルハント』は、自分プレイヤーがスナイパーとなり登場人物を狙撃するという単純なもの。

リアルに表現された渋谷のスクランブル交差点近くのビルの屋上から、ボクは様々な人物を狙う。

動きの遅い老人や子供などは得点が低く、車に乗った人物などを狙撃すれば、高得点を稼げる仕組み。

得点を稼ぐ事で、更に性能の良いライフルを手に入れられるのだが、警察に捕まるか、逆に自分プレイヤーが襲われてしまうとゲームオーバーらしい。

試しにボクは道路を歩く、ヤンキー風のキャラクターにライフルの照準スコープを合わせる。

驚く事に、そこにはそのキャラクターの名前までもが表示された。

田中愁斗たなかしゅうと、23歳、男】

「なんか凝ってるゲームだな」

昼間だがカーテンをしめきった暗い自室で、パソコン画面を見ながらボクはぶつぶつと呟く。

そしてタイミングを見計らい、キーボードを操作し銃弾を発射する。

見事に一発で仕留めると、キャラクターの頭が粉々に砕け、血が吹き出る演出。すると右上に得点が表示され【30点】となった。

「なんか簡単だな。もう一度やってみるか。今度はじいさんを狙ってみるか」

ボクはまた別のキャラクターに照準スコープを合わせる。

嶋原源蔵しまばらげんぞう、81歳、男】

こちらもまた一発で頭を撃ち抜く。

得点は【35点】に増える。

「やっぱじいさんだと得点は低いな。車に乗ってるキャラを狙ってみるか」

ボクはそうして様々なキャラクターを狙撃し、得点を120まで増やす。

小休止をしようと思い、携帯電話ケータイでX(旧Twitter)を開くとそこには「通り魔ヤバイ」のポストが散見された。

「通り魔?」

ネットニュースを辿ると、渋谷のスクランブル交差点で無差別発砲事件が起き、8人が死亡したそう。

ニュースサイトに書かれていた被害者の名前を見て、ボクは鳥肌が立った。

田中たなか愁斗しゅうと嶋原源蔵しまばらげんぞう・・・?」

それ以外にも、ゲーム内でボクが狙撃したキャラクターと同姓同名の名前が、被害者として書かれていた。

「もしかしてこのゲーム、現実世界とリンクしているのか?」

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