可惜夜に僕らは

飛文。

第1話 可惜夜に僕らは

 近年、世界は二色に染められているようだ。


 今まで世界はもっとカラフルで、多くの人は、カラフルな世界を楽しんでいた。

だが、二色になった今、そのわずかな境い目を楽しむには、人々は余裕がなさすぎる。

 残った二色が今、もっとも濃い色を出している。



 僕は、昔から夏が苦手だ。


 世界の気温は毎年上昇し、外に出れば、毎秒あぶられている気分だ。

鉄板の上にジュ~と音を立てる肉のように。さらに体のどこに隠し持っていたのか気になるくらい汗がでくる。

 生かわきの服を着ていた日には最悪だ。見た目と匂いに気を付けないと一機に人前では生きていけなくなる。


 夏が苦手な理由は挙げたらキリがないが、嫌いとまでいかないのには理由がある。

勘違いしないでほしいのは、汗をかいた後の風呂がさっぱりと気持ちいいとか、洗濯物がすぐ乾くとか、クーラーをガンガンに効かせた部屋で、布団をかぶって寝るのが気持ちいいとか、キンキンに冷えたビールが記憶が飛ぶくらい旨いとか、そんな小さな幸せで、僕の気持ちを変えることbなんてできやしない。

 なぜなら僕は、決まった時間に起きるし、寝る。自炊もするし、洗濯物は毎回同じ曜日に行うし、体を洗う順番は毎回同じだし、歯は右上の奥歯から磨く。


 もうお分かりの通り、僕に隙間はないのだが、嫌いではなく苦手止まりな理由は、花火が打ち上がる季節だからだ。

 それまで眺めるだけだった花火が特別なものになったあの日が、夏を嫌いにさせてくれない。

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