第4章「終わりへの脈動」
第32話「作戦会議・1」
アルシアとニーズヘッグがドワーフの依頼で暴走魔族と戦っている頃、砂漠を絶えず移動し続ける超巨大神器、遺跡図書館トート。
図書館内部にある投写装置の前に2人の男が立っていた。
1人目は炎神・スルト。2人目は投写映像ではあるが、この遺跡図書館の名前にもなっている神、司書管のトートである。
2人は静かに、これから来るであろう3人目を待っていた。
暫くした時だった。
「お待たせ、遅れてごめんね。」
そこには髪も肌も、着ている物も何かもが白い少女が立っていた。
耳に着けた羽飾りだけは黒い、真っ白な少女。
こんな少女に知り合いはいない。だが、感じる気配は間違えるはずもないので、呆れたように目を細め、スルトはその少女に返事を返した。
「………何やってんだ、ロキ?」
「何って、偽装だよ。外出用のね。」
「お前、そんな趣味があったのか……。」
少女の姿のまま、いつもの様に話すロキに、スルトは溜め息を吐いた。
それを見て、ロキはむくれた顔で反論する。
「失礼な。悪神対策と、もしもの時の為にと色々考えて作った身体なんだから仕方ないだろ。こういう姿の方が、いざ人間達と活動するってなった時に疑われにくくて済むからね。」
トートは厳重な防犯、防衛機構が施されており、グレイブヤードや外にいる時は呼び水となりかねない為、呼ばないようにしていた悪神の名を出しながら、その身体を見せるように手を広げた。
「それなら仕方ねえのか……。因みにその身体、戦えんのか?」
「いや、無理。大きな神術1回使うだけですぐバテる。あくまで本体の能力を保存する為だけの器だからね。権能とかはちゃんと持ってるけど、本当に緊急用の身体さ。だからその辺はアテにしないでほしい。」
「なるほどな……。」
スルトが納得する様に頷くと、ロキはトートに近付いて、特殊な神術をかけた。
「久しぶりだね、トート。数十年ぶりくらいかな?」
「そうだな。あの時は何の助けにもなれず申し訳なかったよ。」
「気にしなくていいよ。結局、アレも何なのかよく分からなかったからね。さて、開示情報制限は一時的に解除した。これで満足に話せるはずだけど……、どうかな?」
「ふむ……。礼を言うよ、ロキ。これで問題無く悪神の事も話せる。」
鳥の仮面の奥底の双眸を細めながら微笑むトートを見て、ロキは頷く。
これで準備は出来た。
「さあ、始めようか。これからの……、やがて来る終わりへ向けての対策会議を、さ。」
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