第25話「その頃のグレイブヤード」
アルシアとニーズヘッグがヴェルンドに到着した頃。
グレイブヤードの最下層……、玉座の間ではロキが玉座に座りながら、死んだ様に眠りに就いていた。休眠状態に入っているのである。
その両脇に、配下であるフェンリルとフレスベルグが護衛として立っていた。
2人は周囲の気配に気を配りながら、真っ直ぐ前を見つめている。
初めに口を開いたのはフェンリルだ。
「フレス。ロキから何か聞いておるか?」
「眠るとしか聞いていない。君と同じさ。」
「……そうか。」
「何か聞きたいことでも?」
腰に差した刀の柄に手を置きながら、フレスベルグは腕を組んでいるフェンリルに問い掛ける。
フェンリルは視線だけをロキに向けた後、口を開いた。
気にはなるが、聞かれていようと同じことだったからだ。
「ロキが何を隠しているか……、じゃ。」
「……やはり君も気付いていたか。」
「ニーザも気付いておるし、口にはせんが、アルシアも気付いておる。先日の模擬戦やスルトが良く出入りしてる事から考えて、気付くなという方が無理があるじゃろう?」
「そうだな。特にこの間の模擬戦とやらだ。手合わせくらいなら時折あるが、あんな突発的に戦うのは、ロキの性格からして絶対にやらない。」
穏やかな顔で少しだけその双眸を細めたフレスベルグにフェンリルは頷いた。
あの時、ニーズヘッグも言っていたが基本的にはその手の事をやる際、ロキは必ず双方の準備が出来るまで戦おうとしない。
特にアルシアが混ざる時は絶対にだ。
自分の力を自覚している分、万が一が起きるのを避けているのだろう。
この間の模擬戦はそれを考えると、その全てが違和感しかないのだ。
まるで、いつかそんな日が来るかもしれないぞ、と暗に言っているような、そんな気さえした。
フレスベルグは休眠状態のロキを見た後、今度はフェンリルを見た。
「この間のインドラの件、暴走魔族と関係があると見て間違いないだろうな。」
「ああ。じゃが……、それが誰に出来る?」
大陸規模で存在する魔族全てに暴走を付与するどころか、零落しているとはいえ、神すらも暴走させる存在……。
フェンリルとフレスベルグは同時にロキに視線をまた移す。
彼の仕業ではない事は分かっている。だが……、
(いったい、何を隠している……?)
それを出来る存在など限られている。
少なくとも、フェンリル達でも無理だ。
グレイブヤードの後押しを受けてフェンリル、フレスベルグ、ニーズヘッグの3人掛かりで全力でやればもしかしたら出来るかもしれない、そういうレベルの話だ。
2人の臣下が探るような視線を向けるが、玉座にて眠る下界の守護者は眠ったまま、それに答えることは無かった。
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