第16.5話「ある日の事・1」
今から2年前………。
「アルシアってさ。生まれは普通なのに神殺し持ちだったり、アーティファクトいくつも持ってたり、育ちとか、色々おかしいよね。」
「ぐっ!?げほ、げほっ!」
「何だそれ、褒めてるのか貶してるのか。」
突然そんな事を言い出したロキに、俺はジト目を向ける。
因みにロキは現在、玉座に座って俺が持ってきたケーキを更に乗せてフォークで食べている最中だ。
たまたまスルトも来ていたのだが、彼に至っては手で掴んで食べていたケーキが器官にでも入ったのか、噎せ返っている。
ロキは食べ終わった皿を脇に避けながら、どう答えるべきか……と口に人差し指を当てて考え込む。
「うーん……。貶してはない、ね。褒めて……もいないか、うん。褒めてもない。」
「何だそりゃ……。」
「いや、大丈夫なのかな、って。」
「大丈夫?」
「うん。アルシアってさ、神殺しの力ってどう思ってる?」
「使い道が無い。」
即答した俺をロキとスルトが苦笑して見ている。
だが、そうとしか言いようがない。
『神殺し』とはその名の通り、神を葬る事が出来る、極一部の人間だけが持つ力と聞いている。
能力には個人差があり、例えば俺の持つ『神殺し・破壊』は神の力を文字通り砕き、破壊する。
この能力は本当に個人で分かれ、力を静止させて無効にしたり、神の力を喰い殺す力もあるのだとか。
加えて、神殺しの基本能力として、神の纏う護りの力である『神衣』を突破し、通常の魔法などでも傷を負わせることも出来る。
後はあるとすれば、この力は神とそれに類する力を持つ者にとっては猛毒であり、一撃を貰うだけでもそれらにとっては致命傷になりかねないという事くらいだ。
だから、ロキやスルト、フェンリル達と手合わせをする時は意図的にこの力を使わないか、使っても仮想空間などを生み出してそこで戦うようにしている。
うん、本当にそれだけだ。
使い道などまるで無い。
そもそも、その名の通り神に機能する技で、人間や亜人種、通常の魔族には何の役にも立たないのだ。
「どうしてそう思うのかな?」
「基本的に使う相手がまずいない。いたとしても、それはロキ達だけど、殺したりとか、そんな物騒な話が混ざる相手じゃない。何より……、」
「神殺しがあるから必ず神に勝てる訳じゃねえ。戦える為の必要な材料がやっと1つ揃う、だろ?」
スルトが言った答えに頷いて返した。
最後の理由はそれだ。
スルトの言う通り、神殺しの力があるから神にも確実に勝てる。
それは大間違いだ。
それなら俺は目の前にいる2人の神に一度でも負けたりはしていないだろう。
神殺しを持つ。それは初めて、人が神に挑む資格を得たというだけなのだ。
神とは言ってしまえば世界を構成する概念そのもの、もしくは世界そのものと言っていい。
本当に神を倒したいのなら神殺しと……、その他色んな要素を合わせて挑むしかない。だが……、
「………やっぱり、使い道は無いな。無い方がいい。神を殺す機会なんてな。」
「……そうだね。その方がいい。」
「………ロキ?」
少し悲しげな笑みを浮かべるロキにどうした?と視線を向けるが、彼はその顔のまま、静かに微笑むだけだった。
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