第13話「監視対象」
村を出た後、俺達はインドラ神が住んでいるというカトレ遺跡の敷地内を歩いていた。
一度、フェンリル達も呼ぼうかとニーザに提案してみたのだが、今日に限って2人とも、こちらとは真反対の方角に仕事しに行っている為、こちらに来るのはどうしても時間がかかるという事で断念した。
今回ばかりは時間が足りないので仕方ない。
それよりも……、
「何であいつら、先行してんだ?」
「さあ?死にたいんじゃないかしら。」
前方ではマグジール、エドワード、ムスタの3人が談笑しながら先の方を歩いていた。
あの様子を見る限り、どうにも自分達がこれから何を相手するのかをいまいち理解していない様にも見える。
取り敢えず、それ以外にも気になる事はあったので、俺は一緒に歩いているリディアに聞くことにした。
「そもそも、お前ら何で俺達を追ってきたんだ。」
「………陛下の指示よ。貴方の動向の監視って。」
「やっぱりな……。」
答えづらそうに話すリディアに溜め息を吐く。
大方、昨日の事が原因だろう。
事情を知らないニーザが不思議そうに会話に入ってくる。
「何があったの?」
「詳しくは後で話すが、昨日城で―――、」
「貴女は会話に入ってこないで、ニーズヘッグ。私はアルシアとだけ話してるの。」
「……本当にいつも喧嘩腰ね、リディア。」
「いい加減、アルシアを誑かすのは止めて。貴方達はアルシアをいいように使って何かする気でしょう?ここ最近の暴走魔族の事だって……!」
「リディア。」
ニーザに食ってかかるリディアの名前を呼んで止める。
俺があまりにも冷たい声で言ったのにリディアどころかニーザまで驚いていたが、構わず続ける。
「俺の事を悪く言うのは別に構わないがな。こいつらの事まで悪く言うなら黙っちゃいねえぞ。」
「まだそんな事言うの?こいつらは―――、」
「俺の大事な仲間で、大事な友人だ。くだらん口喧嘩をこれ以上続けて戦闘中も足を引っ張るつもりなら邪魔だから帰れ。」
「……なんでそんな酷い事言うの?私は貴方の為を思って……!」
「おいおい、痴話喧嘩かよ。」
「モテてるようで悪いけどアルシアちゃん。うちのメンバーに喧嘩売るってなら、神様相手する前にお前からシメちゃうよ?」
「……やめないかエドワード、ムスタ。とは言え、2人の言う通りだ、アルシア。リディアを不必要に傷つけるなら僕達は黙ってる訳にはいかない。」
何処かのタイミングから聞いていたのだろう。
相変わらずズレた言いがかりをつけてくる3人を睨んで、俺は口を開いた。
「そう思うならとっとと消えろよ。俺達は依頼で来たんだ。遠足気分で来ている三流パーティーの面倒を見てる暇は………っ、」
「…………っ!」
言いかけたところで、俺とニーザは武器を構えた。
今まで留まっていた気配が動いたからだ。
だがマグジール達は自分達に向けて構えたと勘違いしたらしく、こちらを向いたまま、同じ様に武器を構えた。
大盾と槍を構えたエドワードが叫ぶ。
「おいおいおい、陛下の目が無いからっていいのか、アルシアよぉ!!」
「お前らじゃねえ、後ろだ。」
武器を構えたエドワード達の背後を睨み据えながら、抜き放った武器を逆手に構え直す。
そこにはゆったりとした服を着て、小柄で痩せ細った老人が静かにこちらに歩いてきていた。
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