第1章「国王と勇者一行」
第6話「冷たいアルシア」
「さて、ニコライは何処にいるかな……。」
グレイブヤードを離れ1時間後、俺はファルゼア城に来ていた。
頼まれていた件の報告をする為だ。
間違いなく何処かで仕事をしているのには違いないので、探知魔法を起動してニコライを探そうとした時だった。
「ラグド殿。」
「……ん?」
呼ばれて振り返ると、そこには王国の兵士が立っていた。
面識もあり、会えばよく話す兵士で、彼は申し訳無さそうに口を開く。
「おう、久しぶりだな。」
「お元気そうで何よりなのですが、その……、陛下がお呼びです。」
「げっ、マジか……。」
「はい、マジです……。」
こちらに合わせて軽口で話してくれる彼に「サンキューな。」と返して、国王ヴォルフラムの元へ足を向け、ある事を思い出した。
「そうだ。ニコライが何処にいるか知らないか?」
「宰相であれば、騎士団詰所にいるはずです。」
「働き者だな、アイツは……。何度も悪いな。」
それだけ言って、今度こそ俺は謁見の間に向かうのだった。
◆◆◆
「遅いぞ、アルシア!」
厭々玉座の間に向かうと、そこにいた先客であるファルゼア王国の勇者……ではなく、その一行の1人である大盾と槍使い、エドワード・フォスターが俺に食ってかかるも、俺は一瞥をくれるだけで気にすることなく、玉座に座る男に視線を戻した。
「何の用だ、ヴォルフラム。生憎お前の相手をしなきゃならん程、俺は暇じゃない。」
「てめえ、陛下になんて口を……!」
「お前に話していない。俺はヴォルフラムと話をしている。」
「おうおう、災い起こしのアルシアちゃんよ?いくらお前が王国最強だなんて各地で呼ばれていても、お前は今1人だぜ?俺らで総出でかかったら、いくらお前でもきついんじゃないの?」
エドワードを挑発するように睨むと、その横で大槌と魔法を使う男、ムスタ・バーンズが俺を見下すように笑いながら口を開く。
(安い挑発だな……。)
俺は初めて、エドワード達に向き直る。
「ほう。総出で、か。揃ってかからないと俺に勝てないと言ってるような物だぞ。魔法も使える分、それくらいは頭が回るか?ムスタ・バーンズ。」
「――――っ!言わせておけば……!!」
収納魔法から取り出した大槌を構えたムスタが俺に向かってくるが、俺は鞘に収めたままの魔剣を1つ収納魔法から取り出して、向かってくるその首元に柄を押し付けた。
ムスタは大槌を上段に構えたまま、たじろぎながら後退する。
その時だった。
「やめぬか、貴様ら!!」
しゃがれた怒号が響き、ムスタの首元に柄を向けたまま、声の方に視線を戻す。
そこには老いた王、ヴォルフラム・ゴーランが俺達を玉座に座りながら見下ろしていた。
「し、失礼致しました、陛下!」
俺に敵意を見せていたエドワードとムスタが慌てたようにヴォルフラムに向けて跪いたので、手にした魔剣をしまい、再び質問する。
「それで、何の用か聞いたんだヴォルフラム。用が無いなら、俺は行くぞ。」
「口を慎むんだ、アルシア!!」
腰に右手を当てながら、面倒くさそうにする俺を叱責する声がムスタ達がいる側の反対側、つまり俺の左側から投げかけられ、俺はそっちの方に視線を移した。
そこにはこの国の勇者、マグジール・ブレントが片膝をついたまま、こちらをまっすぐと見据えていた。
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