魔都★妖刀夜行 ~現代にて最強最悪の陰陽師がVRゲームを創っちゃいました!~
神嘗 歪
最強最強陰陽師……暗躍してます
第1話
ーー…2年前。
「道川くん」
「………」
「道川くん、聞いてるのかねッ」
「…ちょッ、えッ、わッ!」
ボーーーーンッ!!
「うわッッああアアァァ~~~~…」
無駄に広い会議室に響きわたる叫び声。
男性とも女性ともつかない叫び声の主…道川 明星(みちかわ みょうじょう)
は、座っているイスの背もたれをギッと軋ませ、片手を顔面に当てて天を仰ぐ。その時、反対の手に持つポータブルゲーム機の画面の中では、七色の光沢のアンドロイドが対戦相手から放たれた必殺技をモロに食らい、爆風で後ろにフッ飛んでいた。
「あ"あ~ッ、あとチョットで勝てたのに~~…
」
手の間から漏れる明星の悔しそうな声。間髪入れずに…。
「ゲームを止めないかッ、道川くんッ」
そう言ったのは、先ほどから呼んでもシカトされていた初老の男性。声の音量がどんどん上がっていく様子から、かなりご立腹のようだ。
だが、ゲームをしている明星に対し怒りをおぼえているのはこの男性だけではない。
部屋中央、Uの字を反対にしたような形の会議席。声を発した二人の他に男性が数人着席している。
皆、ネクタイにスーツ姿。歳は50代~70代といったところか。よく見ると、その顔ぶれには見覚えがある。そう、テレビとか新聞で時々見る。
だからって犯罪を犯した凶悪犯や芸能人というわけではない。この日本という国を支えている重鎮。いわゆる政治家と呼ばれる人たちだ。
そんな大物たちを前にしての明星の服装は、荒い木綿生地の白いシャツに、カーキ色のカーディガンを羽織っている。下は黒いジーンズ生地のパンツ。小綺麗ではあるがその不敬な態度といい、あまりにこの場に浮いている。それが一人の例外を残し、国のトップである年長者たちをイラつかせていた。
けれどイラついているのは、こちらも同じようだ…。
「…はあ?」
明星の薄い形の良い唇から放たれた、冷たく低い声。
「忙しいのに出向いてやってるの、こっちなんだけど」
そう言うと顔から手を外し、イスの背もたれに預けていた上半身をユラリと起こす。
「さっきからゲームばかりしているくせに、どの口がッ!」と思っていた若手の議員男性(と言ってもこの中ではというだけで、歳は50過ぎ)だったが、直視した明星の美しい顔立ちに一瞬…。
「ッ」
…目を奪われた。
その肌は陶器のよう白く、鼻筋はスッと伸びている。目は切れ長で、黒曜石を思わせる鈍い光を孕んだ漆黒の瞳。長い髪も瞳同様に漆黒で、新月の夜の川面の流れのようだ。
歳は二十代前半。髪型や美しさから想像すると女性と思われるだろうが、声同様判断がつかない。顔も体つきも、女性を感じる丸みが全く無いからだ。
ハッと我に返る若手議員。
年甲斐もなくウブな若者のように、美しさに魅入られたことを恥じたのか、隠すように更に声を荒立てる。
「きッ、君はッ、この国での自分の重要性や責任の重さを解っているのかねッ!?」
「責任? ハッ、そういうの押し付けられても困るだよね~」
ゲーム機を持ったまま軽く両手を上げ、肩をすくめてみせる明星。
「なんという態度だッ!愛国心のカケラもない!」
若手議員はワナワナと震える手でバン!と目の前テーブルを叩きながら、勢いよく立ち上がった。
普通なら大の男をここまで怒らせれば、怖じ気づいて萎縮してしまいそうだが、この期に及んでも口元を歪ませるように明星は「あるわけないし」と微笑するのみ。
「ッッ!!~~…」
みるみる高揚していく若手議員の顔。ギリギリまで抑えていた感情の限界値が一気に振り切れた。
ガタンッと自分が座っていたイスを乱雑に退かすと、若手議員の足は明星に向かう。
ザワつく周囲。誰もが乱闘になることを覚悟した…。
が。
「…それ以上、近づくな…」
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