音奏で咲き誇れ
クズグッズ
第1話 再会
高校1年生になる春。私は長崎から静岡へと引っ越した。親が転勤族のため、今までにも引っ越すことはあったが、全て九州の中に収まっていた。
「まさか本州に来ることになるとはなあ。」
お父さんとお母さんは片付けなどで忙しいようだ。弟はどっか行っちゃったから面白くない。
「お父さんお母さんちょっと散歩に行ってくるね〜。」
「はーーい。」
よしっ!私は靴を履いて玄関を飛び出した。
「あっ!こんなとこに池がある!鯉いるじゃん。きれー!」
赤、白、金色!時々黒。和を体現した鯉たちが優雅に泳いでいる。
私が握りこぶしを池の方へと突き出すと一目散によってきて、口をパクパクし始めた。その瞬間私は手をパーにする。
「ざんねーん。私は餌を持っていないんだなぁ。ごめんねー。」
鯉は餌がないと分かった瞬間すぐさまここを離れてまた優雅に泳ぎ出した。利口な奴らだな。
私はまたあるきだす。
「いやはや我が長崎から謎の本土に飛ばされることになろうとは。」
学校にいることを想像して、少し気が引ける。
私は友達を作ることが得意なわけじゃない。
長崎では友達はいたけれど、小学1年生から同じだったから自然と友達になっていたって感じだ。
「いやー…友達作るの難しいよなぁ………。」
一人ため息をつく。
「ジャァァァァン。」
歩いていたらかすかにギターの音色がした。
「……Cコード。」
「ジャァンジャァン」
「C。」
「ジャァンジャァン」
「G。」
「ジャァンジャァン」
「Aマイナー。」
「ジャァンジャァン
「Eマイナーセブン?」
歩くたびに音が少しずつ大きくなっていく。
「ジャァンジャァン、ジャァンジャァン」
F…C………
これはもしや……!
間に合うために私は走り出した。
「ジャァンジャァン、ジャァンジャァン」
F…………G…!!!
きっとそうだ!
走り抜けるとそこには、一本の大きな桜の木が生えている公園だった。
間に合ったっ!
「風の強さがちょぉっと心を揺さぶりすぎてぇ」
やっぱりこの曲だ。
私も一緒になって歌う。
「「真面目に見つめた君が恋しい」」
「いぃつまでもいぃつまでも、離さなぁい」
ギターの演奏と私の歌が幕を閉じる。
あいみょんのマリーゴールド。私にとって、思い出深い一曲だ。
少し余韻にひたる。あぁ心地良い。
そして、歓声を浴びていたことに気づき、お礼を言う。
いつの間にか歌は私だけになっていた。
「すいません、勝手に歌ってしまって。」
私はギターの人に謝る。顔はふせていたから少ししか見えていなかったんだよな。見た感じ同い年?くらいだと思ったんだけど。
「いえいえ。素敵な歌声ありがとうございました。」
顔がやっと顔を上げ……
「え?!!」
「え?どうしまし……ぇ゙?!!」
「舞希??!」
「一華??!」
これが私、沙希一華と彼、矢口舞希の再会だった。
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