『先輩先輩』と呼んでくる後輩がただただかわいい
たいおあげ
一章
第1話 お昼休憩に先輩と後輩
「先輩先輩、お昼食べるっすよ」
後ろから声をかけられる。
今は、4限が終わった事を告げるチャイムが終わってすぐだというのにどうして、俺の教室に来ているのか。まだ、教科書を机の上から片付けている最中だというのに。
「お前、来るの早くないか?」
「何言ってるんすか、先輩とご飯を食べれるなら、例え火の中、水の中、どんな所にだって駆けつけるっすよ」
「熱狂的な後輩を持てて俺はウレシイヨー」
「あぁ! 何でそこ棒読みなんすか! こんな薄情な先輩を持って私は悲しいっす」
そんな無駄で無駄な無駄でしかない無駄話を繰り広げているうちにいつもお昼を食べている中庭のベンチについた。俺たちの特等席だったりする。
というか、周りに人が近づかないというか、ちょっと離れたところにはいるのにねー。
「さてさて、今日の弁当は何だろなー」
「そんな暗い感じで、言われると、私悲しくなるっす。せっかく丹精込めて作ったのに! シクシク」
「わ、ワァ! な、ナンダコレハ! ホウセキバコヤ!」
「だから棒読みっすよ!! あと、それ食レポっす!」
棒読みなのも許して欲しいものだ。
俺たちはこれでも付き合っていないのだ。なのにこんな関係とは意味がわからない。全くその通りだと、我ながら他人事のように思うよ。
恋人でもない異性からの手作りお弁当なのだ。どう反応していいのか教えて欲しいものだ。誰か教えてくれ……。
「うん。普通にうまいうまい」
「先輩サイテー」
「なんで?」
「いやいや、そこはわかるっすよね! 手作り弁当にその感想は最低以外ありますか!」
「毎日貰ってるのに、毎日違う感想を求められる方が難易度高いんだが」
「そこは先輩の力の見せ所っす! さ、頑張って!」
「し、仕方ないな。うまいうまいうまいうまいうまいうまいうまい」
と飯を口にかきこむように『うまいうまいうまい』と言いながら食ってみる事にした。引いてダメなら力技作戦。
「サイテー」
「いや、百点満点花丸を貰えると自負できるほどに最高なパフォーマンスだったと思うんだが」
「何でそこまで自信満々なんすか。むしろ、論外以外何が、ありますか!」
「さて、もう少しでお昼時間がオワルナー」
「明らかに話を逸らさないで欲しいっす。それにお昼はまだまだあるっすよ!」
不満そうにほっぺを膨らませる姿はかわい……ごほん。稚拙な行動が目に余るぞ、後輩。
「お前は、もう少し歳相応の態度をだなぁ」
「あーあー。聞きたくないー」
大声を出し、耳を塞いで、聞かないという姿勢を示された。俺が説教しようとすると、いつもこの態度を取られる。少しは聞いてくれてもいいじゃんか。
「先輩、はい。あーん」
「ん。うまい」
「だから先輩は感想が単調なんです!」
「りんごはりんごだろ」
「全く女心がわかっていませんね」
女心など分かりません。修行してくればいいのだろうか。後輩が、ジト目でこちらを見てくる。やめて、照れ……ごほん。そんな目線向けらると、自分の出来なさに虚しくなるじゃないか。
「さて、ご飯は食べ終わりましたしどうするっすか?」
「何もない」
「頼りない先輩っすね」
「頼りなくてすまないな」
「拗ねないでくださいよ」
後輩に『頼りない』と言われる先輩です。こんな頼りない先輩のことは置いておいてくれ。後輩には頼りにされる先輩でありたかった。
「仕方ないっすね。膝枕してあげるっす」
「……」
「ちょー!! 無言で、膝に頭を乗せないで欲しいっす!」
「俺は大変機嫌が悪いので、お前は後輩として先輩を慰めるべきだと思うんだよ」
「まじキモいっす。もう少し、考えてください!」
「……き、キモい」
「今の先輩は普通にキモいっす」
後輩にこんな言われようをされる先輩が今までいただろうか。ましてや、こいつは俺の××な人なわけだし、いっそう心に深いダメージが……。『キモいキモい』連呼しないで欲しい。
そんないつも通りな昼休憩は終わりが近づき、教室へと戻らなければならなくなった。
「あー、昼休憩が終わっちゃうー」
「だよな。短いわ」
「そうっすよね。昼休憩はもう少し長くあるべきだと思うんすよ」
「教室戻るぞ。つべこべ言ってないで、立て」
「えー。先輩立たせて」
「はいはい」
さすがに、身体を触ると後々文句を言われると考え、渋々ながら腕を引っ張る事にした。こいつは小柄なので、見た目通り軽い。
「行くぞ」
「ちょ、先輩待ってくださいよ」
「遅い」
「先輩が早いんすよ」
俺が先を行くのに後輩が後ろを慌ててついてくる。一応、後輩に合わせて歩幅は小さめにしているつもりだ。
しばらくして、後輩の教室へとついた。
「じゃあな」
「先輩。またっす。さ、行った行ったー」
さて、俺も教室に。
ついたついた。
「よ、晴海」
「おっす」
「今日もアツアツでしたなぁ」
「見てたのか。別に普通だろ」
「普通じゃねえよ」
こいつは、幻夜(げんや)。俺の親友で、とにかくウザいので、適度にあしらってもいい感じのやつ。
「しかし、お前たち付き合ってないの嘘だろ」
「嘘じゃねえよ」
「クラス、いや、学校中の奴らにとってお前らは付き合ってるって事が周知の事実だからな」
「まじ」
「まじまじ」
「そっかー」
「そうそう」
幻夜と話しているうちに午後の授業開始のチャイムがなりこの話はここまでとなった。
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