🔮パープル式部一代記・終話

 あの日、宣孝のぶたかとの出会いから、満月がくるたびに取材を終えたゆかりは、「あの綺麗な滝のしゅわしゅわキラキラを見たい……」そんなことを言って、ホストクラブ『鬼子母神』へ通っては宣孝のぶたかを指名して十段重ねのシャンパンタワーから流れる「しゅわしゅわキラキラ」を、うっとりながめていたので、バカさまに渡す「小遣い」が、あっという間になくなってしまう。


 結果、自由に遊び歩けなくなり怒ったバカさまは、宣孝のぶたかから、「てめ――家賃を払え!(ゆかりのマンション)」なんて言うと、相当な額の金を取り上げ、ネットで英語をマスターして時鳥ホトトギスの姿でスマホを背負い、船でアメリカまで密航していた。


 アメリカに渡ってなんだかんだとありながら、なんとかラスベガスへたどり着くと、ようやく巡ってきた満月の夜、彼は満を持して、持ち前の黒い太陽の強運をフルスロットル! ポーカーを含めたカジノのテーブルゲームで、ホテルの経営が傾くほど大勝ちをし、送金手続きを済ませ、素早くジェット機のファーストクラスで日本へ帰り、もう一台、新品のパソコンをどこからかくると、アカウント名を、『フルムーン・御堂』と名乗り、を元手に令和の相場師として、あっという間にその道の世界に君臨していた。


 はた目には、パソコンのキーボードの上でイタズラしてる時鳥ホトトギスと、パソコンのモニターをガン見している、変な時鳥ホトトギスだったが。


 そして、再び訪れた満月の夜、ふたりはまた人の姿に戻る。


 ***


「ははっ! 時代は変わっても俺はが似合う男なんだ!」

「はいはい……ねえ、お金を貸してくれない?……今度のエッセイの入金がまだでさ……突撃取材のあと、また『鬼子母神』へ行くんだ……エッセイ、凄い勢いで紙もダウンロード版も売れてるからきっと返すし……紙なんて二百万部もう売り切ったって言っているから、ちゃんと返すアテはある……『しゅわしゅわキラキラ』の滝が見たいんだ……あ、そうか……いままでのお小遣いを返して……これからはバカさまがわたしに、お小遣いをくれ……」

「……お前、どんだけ宣孝のぶたかみつぐ気だよ……ほらよっ!」


『ピロンッ!』


 ***


〈 少し前の全国展開の大型書店・京都店 〉


むらさきゆかり先生の新作エッセイ、抽選で百部直筆サイン入り!『豪華装丁版・シャンパンに流されて』(定価一万千円・税込)本日限定三百部販売! おひとりさま、二冊までです!】


 そんなポスターが貼ってある大型書店ではサイン本を求めて、元・信者、生まれ変わっていた、宰相さいしょうの君こと、藤原豊子ふじわらとみこ(微妙に呼び名が変わっている) が、やはり、「サイン本当たれ……サイン本……」なんて言いながら、最前列に並んで購入していた。二日前から、待機していたのである。

 新作、『シャンパンに流されて』は出版社も驚くほどの勢いで、瞬く間に売り切れていた。


むらさきゆかり先生の新作『シャンパンに流されて』の購入最後尾はこちらです! 『シャンパンに流されて』必ず整理券をお持ちになってお並び下さい!」


 書店の店員は開店の数時間前から、伸びる一方の列を誘導する作業に追われていた。


 ***

 

 そして話は戻る。


「じゃ、先に突撃取材へ行こうか……」

「しょうがねぇな……自分で持てよな……いつも俺に持たせやがって……」


 今夜、あなたのお部屋にも、ひょっこりと、紫色のオーラを放つが、を持って、顔を出すかもしれません……。

 くれぐれもご注意のほどを……。


「わたし紫式部……いま、あなたの家の床下にいるの……」


 ──∞──∞──∞──∞──


 その頃、例の古書店には、「ふはっ! ふははは!」そんな風に、変な鳴き声のギラギラした目を持つ時鳥ホトトギスと、もう一羽、やたらと気の荒そうな時鳥ホトトギスが突っ込んできて、入口の扉を突き破って入り込み、ケンカをはじめて、在庫の山をぐしゃぐしゃにして、じじいに呪詛されそうになり、大慌てで飛んで逃げていた。


 ──∞──∞──∞──∞──


 ※小話があります。よろしくお願い致します。小話は二本立て、合計三段タワーです。


【ラフレシア・ 妍子きよこ・イザベルの戦い in カスティーリャ、前後編】

 &

【🔮! 硯島すずりじま(巌流島)の戦い!】


 dauthuz!(death)



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