🔮パープル式部一代記・第七十八話
こうなればこっちのモノとばかりに、黒い太陽のフルスロットルな説得がはじまっていた。
「だからさ……そもそもの前提として、これだけの……」
「それはそれ、これはこれ」
「じゃあ、こっちの大宰府でのアレは、俺がまとめ上げたのが結局は……あ、もうひとつ! あのまま黒い流れ星が帝になっていたら、
「う――む……」
話は永遠に続くかに思え、ゆかりは、こくりこくりと居眠りをはじめていた。
「まあね、確かに
「じゃあさ、コイツ! ゆかりは俺が助けたから、ゆかりの徳を、俺の足りないところへ足してくれっ! そもそもの出会いは、もはや行き倒れ寸前のこいつを、どうのこうの、うんぬんかんぬん……」
そう言い出したのである。
「え……なんでそこまで、わたしが……」
居眠りをしていたゆかりが大声に目が覚めて、あせって口を挟みつつ、じめついていると、道長が生前に出していた「地獄ゆき免除願い状」を持っていた鬼神は、なにやら深く考え込み出す。
「確かに……そなたが助けねば、そっちの根暗は行き倒れていたか……では、足して半々に、ということで……」
鬼神は、道長の繰り出す巧みな話術に最後には納得していた。そんな訳で、ゆかりが抗議する間もなくひとでなしのふたりは、二羽の
なんのしがらみもない世界へ……あるいは地獄が怖くて二度と近づくまいと、逃げ回っているだけなのかもしれないけれど……。
***
〈 現代 〉
現代の京都にある古書店は、ときどきデカい態度の
「今日も店にはなにも買わぬ、ときを超えた
『じじい、千年たっても、まだ自費出版の在庫を抱えてるのか…………言わんこっちゃない。わたしみたいな大作家しか、そんなホイホイ売れるもんじゃないんだよ……』
『法成寺は燃える前に、お前が忠告しないからだろ! この、じじいっ!』
「
店主は、
「作者直筆サイン入り『
店主は、額縁に入れて飾ってある金のチケットを見上げてにたりと笑ってからつぶやく。
「ま、ガラガラには白い玉しか入れてないんだけどね。一応、お迎えがきたとき用に取っておかなければ……」
そして、不思議な
『まあ手狭だが、しかたね――な』
『あのじじい絶対に知ってて知らん振りしてる……バカさまは早く徳を積んで、わたしの徳を返せ……関白でもなかったくせに
『徳を積むのは難しいな。なにせ
『この☓☓☓☓やろうめ……』
お互いが、いつも側にいるのに気づかない……そんな、極東にいた、格差のありすぎた、黒すぎるロミオと根暗すぎたジュリエットは、永遠にお互いが自分の心に気づかないまま……。
ふたりが永遠に結ばれないのは、救いようもないほどにどす黒すぎるロミオの
ふたり……いや、二羽の付きあいは続くのだ……
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