🔮パープル式部一代記・第四十一話
少し本編から逸れたような話にはなるが、皇后・定子さまがお隠れになったあと、例の「
しかし、その
そして、父である一条天皇が
そんな訳で彼女は、あの思考が大混乱状態であった定子さまの「そたなが男であったなら」その言葉の呪縛なのか環境のせいなのか、寝ているとき以外は『かんしゃく玉』のような状態の子どもになっていた。
彼女に仕えるはめになった、女官や女房たちは密かに、あるいは大っぴらに彼女のことを「いがぐり内親王」と呼んでいたし、彼女たちが住まう殿舎は、「
「なんで!? なんで、きょうは、てんきがよくないわけっ!?」
その日いがぐりは、御几帳台から出ると目に入った曇り空がうっとおしいと、朝一発目のかんしゃくを起こし、洗顔用にと用意されていた
「あっ……!」
周囲の女房が止めようとしたときはすでに遅かった。磨き抜かれた床と美しい縁の施された畳は水浸しで……「早う、早うだれぞ片づけを!」
「今日のかんしゃくはなん連発だと思う……?」
「さあね……あたしらには関係ないよ……」
下働きたちは女房たちがおろおろと、「いがぐり」の周りで騒いでいる中、そんなことを言いつつ床を掃除して、周囲の片付けを終えると姿を消す。
自分たちは高貴な方々と口なんて聞けない身分でよかった。彼女たちは、ただそう思いながら、日々こんな後片付けに追われる始末である。
掃除道具を片付けていたひとりが、ふと、よそで聞いたウワサを口にしていた。
「あのさ……いがぐり内親王ってば、
「なにその変な話し方?」
「いいからいいからここだけの話……いがぐりと、
「へっ!?
「それな! いがぐり厳しいよな――ただの栗ならよかったのにね」
いがぐり内親王は散々な言われようであった。
しかしながら内裏を覆う黒い太陽こと道長が、
***
母のいなくなった
その話は道長の狙い通りすげなく却下される。そう、彼の思惑通りに……そしてそれが前出の事件にいたる、道長の計略のはじまりであった。
『
***
亡き皇后の遺児である
***
それに
内裏の公卿たちは黒い太陽・道長と元ヤン・
「あえて選べと言われれば……」
「う――ん元ヤン・
「それにアイツといえば……譲位した花山法皇に矢をぶっ放すようなヤバいやつだからな……」
「弟といいあれからまだ五年、どうもあの腰の引くさがかえってうさんくさい……あたらずさわらず……」
そんな感じの評判であった。
そしてその扱いは真実をついていた。そう、元ヤン・
ゆえに、道長の狙い通りにその奏上は、
「
道長の
すべてを道長が予想した通り、いや、少し彼が手傷を少し負う程度くらいには、ほんの少しその予想を上回りはしていたが……
そして、その襲撃をなんとか避け切った道長は、あえてそれら
帝は、退けたこの話を今度は許可せざるを得ない、あるいは道長に今度は自分から頼まねばならぬ、そんな状況に陥ってゆく。
「もう、いがぐり内親王と、
道長は、そんな圧をあの日こっそり
いま現在の自分の東宮は「
そして当然ながら帝はそれを廃して、「
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