8章 テンペスト
**地球国営通信WEB記事**
**オリュンポス市とアテネ市、オリンピック共同開催へ:復興と平和の象徴として期待**
オリュンポス市(火星)— 今年予定されていたオリュンポス市でのオリンピック大会は、海王星連合の急襲による甚大な被害を受け、一部競技の開催が困難となりました。これにより、オリュンポス市の姉妹都市である地球のアテネ市との共同開催が決定され、ついに来週開会式が行われる運びとなりました。開会式はアテネ市で、閉会式は予定通りオリュンポス市で行われます。
オリンピックは通常、一都市での開催が原則ですが、今回の異例の措置は国際オリンピック連盟との慎重な協議の結果として決定されました。復興のシンボルとして、また戦乱の中での平和の象徴として、この共同開催が人類にとって特別な意味を持つものと期待されています。
なお、本大会では海王星連合地区からの選手団(具体的には、海王星のトリトン、プロテウス、天王星のタイタニア、オベロンなどの衛星を含む)には招待が送られていません。これについて、国際オリンピック連盟は、海王星連合の継続的な戦闘行為とこれに伴う国際的非難を受けての決定であると説明しています。
オリンピック競技は復興の証としてオリュンポス市とアテネ市で繰り広げられ、平和の祭典として再び人類を一つに結ぶ場となることでしょう。大会日程は、各競技の詳細が既に発表されており、来週からの開幕に向けて準備が着々と進められています。
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**ユーザー1:**
「マラソンで地球代表が金メダル獲ったら最高!アテネでの開催だし、これは期待してもいいよね?」
**ユーザー2:**
「なんで海王星連合の奴らがいないかって?そりゃ当然でしょ!平和の祭典に戦争屋はいらないよ!」
**ユーザー3:**
「スカイボード競技が待ちきれない!月のエレナ選手、俺たち地球人の誇りだ!ぶっ飛ばしてこい!」
**ユーザー4:**
「タイタンとか、まだまともに選手団組織できる状態なの?正直心配だわ…」
**ユーザー5:**
「ホログラム格闘技なんて初めて聞いたけど、めっちゃ面白そうじゃん!誰か注目選手とかいるの?」
**ユーザー6:**
「重力変動レース、絶対見逃せない!ラオ・ウェイ選手の滑りは神だし、金メダル確定じゃない?」
**ユーザー7:**
「火星の状況ヤバいけど、クローズド・サーキットレースやるのか?なんか複雑だけど、ジャック・マーティン頑張れ!」
**ユーザー8:**
「今回のオリンピックは特別だよな。復興に向けて皆で盛り上げよう!…って言いながら、ビール片手に観戦する予定w」
**ユーザー9:**
「オリュンポス市って、今でもそんなにヤバいのか。まぁ閉会式くらいは無事に終わってほしいね。」
**ユーザー10:**
「新体操で地元アテネのサンドラちゃんが出るらしい!これは応援しないと!金メダルいけるっしょ!」
**太平洋新聞**
**オリンピック実行委員会、金メダルデザインの差し替えを発表:新デザインは太陽系の星図に**
オリンピック実行委員会は、開幕直前に金メダルのデザインを差し替えることを発表しました。元々のデザインは、オリュンポス山とオリュンポス市をモチーフにしたものでしたが、海王星連合による攻撃で大規模に破壊されたオリュンポス市が連想されるとして、太陽系の星図をあしらった新しいデザインに変更されました。
また、金メダル自体も、当初の金のデザインが海王星連合の旗艦アースクエイクを思い起こさせるとの懸念がありました。この旗艦は、現在は地球軍に鹵獲され、「ラマヌジャン」として運用されていますが、アースクエイクの金の塗装が人々の記憶に残っていることから、メダルの素材も変更されました。新しいメダルはプラチナとルビーがあしらわれており、名称は引き続き「金メダル」のままとなっています。
今回のデザイン変更について、オリンピック実行委員会は「準備を進めていましたが、間に合うかどうかが心配でした。最終的に変更が間に合い、発表できたことを嬉しく思います」とコメントしています。
この決定に対する反応は概ね好意的で、多くの人々が新デザインを支持しています。オリンピックという平和の祭典において、戦争の象徴となりかねない要素を排除し、新たなスタートを切る意図が多くの共感を得たと見られます。
オリンピックは、競技だけでなく、その象徴となるメダルもまた、平和と団結の象徴として重要な役割を担っています。今回のデザイン変更が、オリンピック精神をより一層引き立てるものとなるでしょう。
**月面TV 遠隔インタビュー**
**インタビュアー:** 「本日は海王星のオベロン衛星から、前回オリンピックのアーチェリー金メダリスト、ギアール・ガンベ選手にお話を伺います。ガンベ選手、オベロンからの参加が今回は難しくなっている中、どのような気持ちでこのオリンピックを見つめていますか?」
**ギアール・ガンベ:** 「私たちオベロンの選手たちは、今回のオリンピックに参加できないことを非常に残念に思っています。しかし、どのような状況にあっても、スポーツの精神は決して失われません。平和と団結の象徴であるオリンピックが、今回もその意義を保ち続けることを願っています。」
**インタビュアー:** 「スポーツを通じた平和の精神は、どの時代でも大切ですよね。ガンベ選手としては、今後のスポーツ活動にどのように取り組んでいくつもりですか?」
**ギアール・ガンベ:** 「私たちの状況は厳しいですが、困難な状況下でもスポーツを通じて希望を持ち続けたいと考えています。特に若い世代には、スポーツの力を信じて未来を切り開いてほしいですね。」
**インタビュアー:** 「それは素晴らしいお考えです。最後に、地球の視聴者に何かメッセージはありますか?」
**ギアール・ガンベ:** 「私たちは皆、人類の一員です。困難を乗り越え、未来に向けて共に歩んでいけることを信じています。スポーツを通じて築かれる友情と理解が、今後さらに深まることを願っています。」
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**注**
インタビューの際、ギアール・ガンベ選手は「サートマのテロを忘れるな」と書かれたユニフォームを着ていました。このメッセージは、オベロンのサートマ村基地で行われた地球連合軍の人質奪還作戦に抗議する意図があると見られます。しかし、この作戦は人質奪還そのものであり、救出のための正当な軍事行動です。ガンベ選手はこのユニフォームについて特に言及することはなく、インタビュアーもその内容に気づいていないようでした。
**地球国営通信WEB記事**
**月面TVのインタビュー放送に非難の声高まる:火星や地球で波紋広がる**
先日、月面TVが放送した海王星連合オベロン衛星のアーチェリー金メダリスト、ギアール・ガンベ選手のインタビューに対し、火星や地球を中心に非難の声が高まっています。問題となったのは、ガンベ選手がインタビュー中に着用していたユニフォームに記された「サートマのテロを忘れるな」というメッセージです。
サートマ村は、オベロン衛星にある海王星連合の秘密基地が位置していた場所で、地球連合軍による人質奪還作戦が行われた現場でもあります。この作戦により、数多くの女性や子供が非人道的な状況から救出されました。ギアール選手のメッセージは、この正当な軍事行動を「テロ」として非難する意図が含まれていると解釈され、多くの視聴者に衝撃を与えました。
月面TVは、放送後にこのメッセージの内容に気づき、急遽声明を発表しました。「インタビューの内容は中立的であり、選手の服装については事前に確認できていなかった。私たちは選手の服装を指定・監督する権利や責任を持っていない」と弁明しています。また、インタビュー自体の内容については、政治的中立を保ち、いかなる勢力にも肩入れする意図はなかったと強調しました。
しかし、この弁明にもかかわらず、火星や地球の市民からは厳しい批判が続いています。特に、オベロンのサートマ村基地から救出された人質の一人であるスーラ・アリシュさんは、ガンベ選手の発言に強く反発しています。アリシュさんは「地球軍の兵士たちは、あの地獄のような場所から私たちを救い出してくれた神様のような存在でした」と述べ、彼らの行動が人道的であり、真の救済者であったことを訴えました。彼女の家族も同様のコメントを発表し、地球軍に対する感謝の意を示しています。
さらに、政治報道学者のカール・ステンソン教授は、この問題について専門的な見解を述べています。「海王星連合のプロパガンダに対抗する上で、今回のような事件は非常にデリケートです。ガンベ選手のユニフォームに記されたメッセージは、彼が所属する勢力の政治的立場を反映しており、これを無視することは不可能です。月面TVの中立的な姿勢は理解できますが、公共のメディアとしての責任は、そうした微妙な政治的シンボルを見逃さないことにあるでしょう。」
今回のインタビューを巡る騒動は、海王星や天王星の選手団をオリンピックに招待しないという国際オリンピック連盟の決定を再評価する動きにもつながっています。火星や地球の市民の間では、この決定を支持する声が圧倒的ですが、一部からは、スポーツと政治を分離すべきだという意見もあります。
いずれにせよ、今回の事件は、地球連合と海王星連合の緊張が依然として続いていることを浮き彫りにし、平和の象徴であるオリンピックが政治的にどれほど敏感なテーマとなり得るかを再認識させるものとなりました。
**ユーザー1:**
「月面TV、完全にやらかしたな。ガンベ選手のメッセージをそのまま放送するなんて、まるでプロパガンダの片棒を担いでるように見えるぞ。」
**ユーザー2:**
「スーラ・アリシュさんの話を聞いて、涙が止まらなかった。あんな地獄を生き延びた彼女に、ガンベ選手のユニフォームはあまりにも酷すぎる。他の人質たちも一刻も早く救い出してほしい。」
**ユーザー3:**
「テレビ局は、スポンサーの競合他社のスポーツドリンクが画面に映るだけで即座に排除するのに、ガンベ選手のユニフォームのメッセージに気づかなかったって言い訳、誰が信じるんだよ?」
**ユーザー4:**
「オリンピックでスポーツと政治を分けるべきって意見もあるけど、今回の件は無理だろ。あのメッセージが放送された時点で、政治問題になってしまってる。」
**ユーザー5:**
「ガンベ選手のアーチェリーのファンだったけど、今回の件で失望した。オリンピックの精神を汚さないでほしい。」
**ユーザー6:**
「でもさ、海王星連合って、体制に批判的な自国民を処刑してるって話じゃん?もしかしたらガンベ選手も半ば強制されて、あのメッセージを発信させられてるのかもしれない。彼だって被害者かも…」
**ユーザー7:**
「月面TV、スポンサーの都合で映像編集するくせに、政治的なメッセージには気づかないなんて、矛盾してるよな。」
**ユーザー8:**
「スーラさんの言葉が全てだよ。地球軍がいなかったら、彼女たちはまだあの地獄にいたんだ。ガンベ選手の言動には納得できない。」
**ユーザー9:**
「ガンベ選手がプロパガンダに利用されてる可能性もある。でも、だからって彼が発信したメッセージを無視するわけにはいかないよな。」
**ユーザー10:**
「オリンピックを政治から切り離すなんて理想論。特に今回のような場合、どう考えても現実的じゃないよ。」
**タイタンの選手団、オリンピック出場への決意を表明:海王星連合の攻撃による深い傷跡**
タイタン— 海王星連合の攻撃によって壊滅的な被害を受けたタイタンのオリンピック選手団が、会見を開きました。代表として登壇したのは、かつてオリンピックに出場した経験を持つレスリングのコーチです。彼は、今回のオリンピック参加を「タイタンの誇りを示すための試み」として語りました。
会見では、タイタン選手団に内定していた330名のアスリートのうち、305名が海王星連合の攻撃により死傷、または行方不明となり、競技に参加できる状況ではないことが明らかにされました。
「残された25人」は主に、侵攻時に避難に成功した者や、幸運にも他の惑星や衛星で強化合宿や試合に参加していたアスリートたちです。
コーチは、「直前ではありますが、オリンピック連盟との協議を重ねた結果、メンバーを可能な限り補充することが許可されました。そのため、最終的な選手団の人数はまだ未定ですが、決定次第報告いたします」と述べ、限られた人数でもタイタンを代表して戦う決意を示しました。
また、男子サッカー選手のラーマニー・フランス氏とアルファス・フランス氏が、現在所属している地球シンガポールのサッカーチームからタイタン代表としてオリンピックに出場することも発表されました。彼らはタイタンにルーツを持つことから、今回の大会では故郷を背負ってプレーすることを選んだのです。
コーチは、避難中に練習場所を提供してくれた地球および火星の自治体にも感謝の意を表明しました。「困難な状況の中で支えてくれた皆さんに、心から感謝しています。私たちのオリンピック出場は、皆さんの支援なしには実現できませんでした。」
地球国営通信の調査によると、「残された25人」の全員が海王星連合の襲撃で一人以上の肉親を失っていることが確認されています。特にピストル射的の代表として出場するハーラステイア・ダイアモンド選手は、両親、夫、妹、そして3人の子供たちを失い、その心の傷は計り知れません。
タイタンの選手団がどのような戦いを見せるのか、そして彼らの出場がもたらす感動と希望が、世界中の人々の心にどのように響くのか、注目が集まります。
**ユーザー1:**
「胸が締め付けられる思いだ。305名のアスリートが亡くなったり行方不明なんて…。それでも出場を決めたタイタン選手団には敬意を表したい。彼らの戦いはただのスポーツじゃない。」
**ユーザー2:**
「ハーラステイア・ダイアモンド選手、信じられない強さだ。家族を失っても戦い続ける彼女を応援しないわけにはいかない。彼女の勇気に涙が出る。」
**ユーザー3:**
「地球や火星が練習場所を提供してくれたって話、ちょっと感動した。オリンピックは戦争じゃなくて、こうやって助け合うことが大事なんだよな。」
**ユーザー4:**
「ラーマニーとアルファスがタイタン代表として出場するのはすごい決断だと思う。地球でプレーしてるけど、故郷を忘れないって姿勢、かっこいい!」
**ユーザー5:**
「こんな状況でもオリンピックに出場するって、タイタンの選手たちは本当に強い。彼らがどんな結果を残しても、すでに勝者だと思う。」
**ユーザー6:**
「亡くなった305名の選手たちの無念を考えると胸が痛いけど、残された25人が彼らの分まで戦ってくれるはず。絶対に応援する!」
**ユーザー7:**
「今回のオリンピック、タイタン選手団はただ参加するだけでも奇跡みたいなもの。彼らが競技に出るたびに、その裏にある物語を思い出してほしい。」
**ユーザー8:**
「地球や火星がタイタンを支援した話を聞いて、少し安心したよ。まだ人間らしさが残ってるってことだよな。スポーツで絆が強まることを願ってる。」
**ユーザー9:**
「ダイアモンド選手の話は心が痛むけど、彼女が立ち上がって競技に臨む姿は、本当に尊敬するしかない。どうか彼女に力が与えられますように。」
**ユーザー10:**
「タイタンの選手たちの犠牲があまりにも大きすぎる。オリンピックは彼らのためにこそあるべきだ。全力で応援して、少しでも力になりたい。」
**太平洋新聞**
**タイタンのハーラステイア・ダイアモンド、ピストル射的で金メダル獲得:タイタン選手団初の栄誉**
オリンピック2日目、機械制御無しのピストル射的競技で、タイタンのハーラステイア・ダイアモンド選手が金メダルを獲得しました。これは、タイタン選手団にとって初のメダルであり、彼女の並外れた精神力と技術が世界に示された瞬間でした。
ハーラステイア・ダイアモンド選手は、海王星連合軍によるタイタン襲撃で家族全員を失うという悲劇を経験しています。襲撃によって両親、夫、妹、そして3人の子供たちを失い、火の海と化した故郷から一人で生き延びた彼女の苦悩と喪失感は計り知れません。それでも、彼女はこの試練を乗り越え、ピストル射的で見事な勝利を収めました。
**ダイアモンド選手のインタビュー:**
「この金メダルは私の家族、そしてタイタンのすべての犠牲者のためのものです。彼らの記憶が私を強くしてくれました。辛い時間もありましたが、この瞬間に全てが報われた気がします。私の背後にいるすべての人々のために戦い続けました。」
彼女の勝利は、タイタンだけでなく、全ての困難に立ち向かう人々にとっての希望の象徴となりました。
**各界専門家のコメント:**
**過去の射的メダリスト、ジョン・カンポス氏:**
「ハーラステイアの勝利は、単なるスポーツの結果ではありません。彼女の冷静さ、そして正確無比な技術は、どれほどのプレッシャーの下でも揺るがない精神力の賜物です。まさに『ダイアモンドの精神』が勝利を導いたのです。」
**スポーツ心理学者、リサ・バートン氏:**
「彼女が経験したトラウマは想像を絶しますが、それでも彼女はその痛みを力に変えて、目の前の試練を克服しました。彼女の精神力と集中力は、まさに奇跡と言えるでしょう。」
**タイタンからの避難市民、マリク・シェーン氏:**
「ダイアモンド選手の勝利は、タイタンの人々にとって希望の光です。彼女がこの困難な状況下で金メダルを獲得したことは、私たちの心を勇気づけ、再び立ち上がる力を与えてくれました。」
さらに、アテネ市市長はこの偉業を称えるため、通常の金メダルに加え、彼女のために特別なダイヤモンド製のメダルを製作することを発表しました。「彼女の精神はまさにダイヤモンドのごとく固く、美しい。彼女が成し遂げたことを永遠に讃えるために、特別なメダルを贈ります」と、市長はコメントしています。
ダイアモンド選手の勝利は、オリンピックの精神そのものであり、多くの人々に深い感動を与えました。タイタンからの初の金メダルは、まさに彼女の名にふさわしい輝きを放っています。
**議事録: 作戦会議 - フォートレス・セクター7**
**場所:** フォートレス・セクター7、ガニメデ近傍宇宙ステーション
**出席者:**
- ジャック・ヒーリング大佐(地球連合軍特殊部隊指揮官)
- カースティン・リ・ド・ヴァルド中将(地球連合軍土星方面艦隊司令官)
- メイ・シーア少将(地球連合軍土星方面艦隊副司令官)
- ガラ・エリオス中佐(地球連合軍特別士官)
- その他士官、情報分析官
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**カースティン・リ・ド・ヴァルド中将:**
「諸君、我々は木星宙域での戦艦ワシントンによる敵艦隊撃滅作戦を成功させたが、これにより海王星連合の防衛ラインに変化が生じている。具体的には、タイタンの戦艦ビッグフラッドを含む敵戦力がエウロパ宙域まで前進していることが確認された。これに伴い、タイタン周辺の防衛は手薄になっている。今日の議題は、この状況を利用してタイタンの要衝を制圧し、戦略的優位を確立することだ。」
**メイ・シーア少将:**
「現在の敵配置を確認します。衛星タイタンには、主要な防衛拠点が三つ存在します。空中基地ロマノフ、ラスプーチン、そして地上基地イワンです。衛星防衛の主力であるビッグフラッドはエウロパ宙域にいるため、タイタンの防衛は駆逐艦3隻、護衛艦5隻が主体で、戦力は大幅に削減されています。これにより、タイタンの再占領が現実的な目標となりました。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
「敵防衛艦艇の規模は、駆逐艦3隻と護衛艦5隻が確認されています。この戦力は、我々の奇襲攻撃によって無力化が可能です。3拠点への同時攻撃が最も効果的であり、地上部隊と航空支援の連携を最大限に活用する必要があります。」
**ガラ・エリオス中佐:**
「ロマノフには一般人の強制収容所があるとの情報があります。拘留人数は最大で200名と推定されています。他の基地には、人質の存在が確認されていません。人質の安全確保を最優先すべきです。」
**メイ・シーア少将:**
「エリオス中佐、理解していただきたいのは、今回の作戦の主目的はタイタンの再占領であり、人質救出は二次的な目標です。我々が立てた計画は、タイタンを迅速に制圧し、戦略的拠点を確保することを目指しています。人質の犠牲はやむを得ないコラテラル・ダメージとして容認せざるを得ません。」
**ガラ・エリオス中佐:**
「しかし、少将、人命の救助は常に—」
**メイ・シーア少将:**
「中佐、過去の英雄的な行動は評価しますが、今回はそれとは異なる状況です。我々の目の前にいる敵は冷酷で、人質が無事である保証はありません。タイタンの防衛拠点を制圧することで、より多くの命を救うことができると考えています。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
「少将のおっしゃる通りです。中佐、あなたの意志は理解しますが、今回は短期決戦が求められます。タイタンの要衝を迅速に制圧し、敵の増援到着前に作戦を完了させる必要があります。」
**ガラ・エリオス中佐:**
「…了解しました。それでも、ロマノフへの攻撃に参加し、可能であれば人質の救出を試みたいと思います。」
**メイ・シーア少将:**
「中佐、私はあなたの参加に反対します。人質救出に固執することで、作戦全体の成功を危うくする恐れがあります。貴殿の能力は、別の場面で発揮されるべきです。」
**カースティン・リ・ド・ヴァルド中将:**
「メイ少将の意見には一理ありますが、エリオス中佐の意志を尊重し、参加を許可します。ただし、作戦の最優先事項はタイタンの再占領であることを理解し、行動してください。」
**ガラ・エリオス中佐:**
「了解しました。目的を見失わず、全力で任務を遂行します。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
「中将、作戦が成功した場合の問題についても触れておきたいのですが、ビッグフラッドがエウロパから戻ってきた場合、タイタンの防衛線をどう維持するかが大きな課題になります。ビッグフラッドは全長1.5キロメートル、マルチターゲット攻撃能力を備えた艦であり、現地防衛戦力では対応が困難です。」
**カースティン・リ・ド・ヴァルド中将:**
「その点については、既に戦略会議で検討済みだ。タイタンの再占領が成功した場合、地球連合艦隊の増強を早急に行う。具体的には、重巡洋艦3隻、駆逐艦5隻を投入し、タイタン宙域の防衛ラインを再構築する予定だ。また、地上部隊に対しては、陸戦部隊の増員と対空防衛システムの強化を進める。」
**メイ・シーア少将:**
「さらに、タイタン周辺の宙域にはドローン偵察部隊を展開し、ビッグフラッドの動向をリアルタイムで監視する必要があります。最悪の場合、ビッグフラッドが戻る前に再度の反攻作戦を計画することも視野に入れておくべきです。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
「それであれば、タイタン周辺の防衛線を一定の期間、安定的に維持できると考えます。しかし、我々が占領した拠点を守り切るためには、迅速な行動が求められます。」
**カースティン・リ・ド・ヴァルド中将:**
「全員、準備に取り掛かり、48時間以内に作戦を開始する。作戦の成功と、その後の防衛体制の構築に全力を尽くしてくれ。成功を祈る。」
**全員:**
「了解しました。」
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**議事録作成者:** フォートレス・セクター7 作戦部員
**承認:** カースティン・リ・ド・ヴァルド中将
**ジャック・ヒーリング大佐の回顧録 「*暗黒の軌跡:土星圏攻略戦の記憶*」より抜粋**
土星圏攻略は、地球連合にとって極めて重要な戦略的目標だった。海王星連合の勢力が土星の衛星に拠点を築き、太陽系全域での支配を試みていた中で、我々はその野望を挫くためにあらゆる手段を講じた。特にタイタンの奪還は、戦局を有利に進めるための決定的な一手となるはずだった。
フォートレス・セクター7で行われた作戦会議で、私は初めてガラ・エリオス中佐と対面した。彼の姿は戦場での伝説そのもので、静かな威厳と冷徹な判断力が感じられた。作戦会議の際、中佐は一見冷静であったが、彼の目には深い悲しみと鋭い決意が宿っていた。その目は、過去の苦難を乗り越えてきた者だけが持つものであり、私は一瞬、彼の胸中にある何かが作戦に影響を与えるのではないかと感じた。
エリオス中佐が突如、ロマノフへの攻撃に参加することを志願した時、その場にいた全員が驚いた。彼は作戦の成否よりも、人質救出に強い関心を持っているようだった。これに対してメイ・シーア少将は、冷静に彼を諭し、作戦の主目的がタイタンの再占領であることを強調したが、中佐は意志を変えなかった。その瞬間、私は彼の強固な意志と、過去に彼が救出してきた無数の命への責任感を痛感した。
作戦会議が終了した後、カースティン・リ・ド・ヴァルド中将が私に声をかけてきた。「ヒーリング大佐、もしエリオス中佐の人質へのこだわりが作戦遂行の妨げになるようであれば、あなたがロマノフ方面の現地指揮官として、しかるべき対処を取らねばならない。彼は優れた戦士だが、時として感情が判断を曇らせることもある。」
その言葉は私にとって重く、何を意味するのかはっきり理解していた。エリオス中佐が作戦を危険にさらすようなことがあれば、私はその場で彼の行動を制止しなければならないということだ。中将は私に、その場で最悪の決断を下す可能性を伝えたのだ。
作戦会議後、私は筋力トレーニング室でエリオス中佐と再び顔を合わせた。彼はいつものようにトレーニングをしていたが、私の気配に気づくと、バーベルを置いて近づいてきた。
「準備はできているか?」彼が先に口を開いた。
「もちろんだ。だが、中佐、あの作戦会議で見せた決意は、かなり強いものだったな。」私は彼の心中を探ろうと、慎重に言葉を選んだ。
「ヒーリング大佐、私はこれまで多くの命を救ってきたが、その重みは消えない。特に今回は、ロマノフの人質が私の心を掴んで離さない。」彼の声は静かだったが、その奥には深い悲しみと決意が感じられた。
「わかるよ、だが…」私は続けた。「この作戦は、あなた一人の戦いではない。全体の勝利のために、時には冷酷な決断を下さなければならないこともある。」
彼は一瞬、考え込むように目を閉じた後、頷いた。「それは理解している。ただ…もし救える命があるなら、私はその手を伸ばさずにはいられない。」
その言葉が、私の心に深く響いたが、同時に不安も感じた。エリオス中佐は素晴らしい戦士だが、その強い情熱が時として彼自身を危険に晒すことになるかもしれない。
そして、この会話の後に続くタイタン攻略戦で、我々は「致命的な破局」を経験することになる…。それは、誰もが予期し得なかった悲劇であり、この戦いがもたらした最も深い傷跡だった。
**緊急報告: ガニメデ司令部**
**発信者:** トリトン宙域 重巡洋艦タニムラ 通信兵站管理部および艦長 連名
**宛先:** ガニメデ司令部
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**件名:** タイタン ロマノフ空中基地撃滅作戦に関する緊急報告
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**概要:**
タイタンのロマノフ空中基地撃滅作戦に参加中の地球連合軍人員との通信が突然不通になりました。予定通りロマノフ空中基地への潜入が行われたと見られますが、作戦従事者および人質の安否が不明のままです。
**詳細:**
目視観察および監視ドローンのサーモグラフィによる観測に基づき、以下の事象が確認されました。
1. **潜入成功の可能性:**
作戦計画に基づき、地球連合軍部隊がロマノフ空中基地への潜入を完了したと見られます。
2. **炎上および半壊:**
潜入から数分後、ロマノフ空中基地において大規模な炎上と構造の半壊が発生しました。この状況は目視観察およびドローンからのサーモグラフィデータにより確認されました。
3. **現状分析:**
炎上の原因については、事故、攻撃、自爆のいずれであるか判断がついておりません。炎上と煙がサーモグラフィの効果を大幅に低減させており、詳細な確認が困難な状況です。また、現時点で基地から離脱する機影は確認されておらず、作戦従事者および人質の安否は依然として不明です。
**現在の状況:**
安否確認のために取れる手段は現状では限られており、追加の努力によって状況を改善する可能性は低いと判断されます。
**要請:**
当初の作戦計画に基づく基地制圧の継続の可否について、ガニメデ司令部司令官の指示を求めます。現状を踏まえた戦略的判断が必要とされます。
状況の緊急性と、作戦遂行中の諸部隊の安全を確保するため、至急の指示をお願い申し上げます。
**最終ブリーフィング: ロマノフ空中基地潜入作戦**
**場所:** 重巡洋艦タニムラ、作戦準備室
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**状況報告:**
重巡洋艦タニムラは、予定通りロマノフ空中基地周囲の宙域および空域のクリアリングを完了。敵戦力は報告通り少数であり、クリアリングは迅速かつ容易に成功した。これにより、基地突入の準備が整った。
**ブリーフィング開始:**
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(前方のモニターには、ロマノフ空中基地周囲のリアルタイム映像が映し出されている。基地の周囲にある氷と岩が混在する荒れた地形、そして基地内部の構造図が並んで表示されている。)
「諸君、いよいよロマノフ空中基地への突入を開始する。目的は、基地の制圧および人質の救出だ。だが、まずは現地の状況を確認しておこう。今映っているのが、リアルタイムの映像だ。基地周囲には大規模な防衛網は確認されておらず、クリアリングも問題なく完了した。」
(ヒーリングは基地の構造図を指し示し、部隊の動きについて説明を続ける。)
「この構造図は当然すでに頭に叩き込んでいると思うが、地球連合がタイタンを所有していた時代のものだ。だから、内部の構造は大幅に変更されている可能性が高い。予期しない障害や罠があることを念頭に置いてくれ。突入後、まずは主要な制御室を制圧し、基地全体のセキュリティシステムを把握する。敵の反撃が予想されるが、迅速に対応してくれ。」
**チームリーダー(直属の部下):**
「了解しました、大佐。突入後の優先事項は、基地内部の最新状況を速やかに把握し、制圧を進めることですね。目標地点に到達した後は、各分隊が予定通りに展開し、エリート部隊が指揮を取ります。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
「そうだ。そして重要なのは、人質の安全確保だ。収容所に速やかに到達し、敵の抵抗を排除する。敵は容赦ない。自爆装置や罠が仕掛けられている可能性があることを忘れるな。」
(ヒーリングは部下たちに視線を送り、しばし沈黙する。部下たちはそれぞれうなずき、理解を示す。)
**ガラ・エリオス中佐:**
(ヒーリングのブリーフィングを無言で聞いているエリオス中佐は、終始静かに佇んでいる。彼の目はモニターに映る基地の映像をじっと見つめ、微動だにしない。ヒーリングの指示に対して何も口を挟まず、ただ全体の進行を観察している。)
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(最後に、全員の目を見て一言。)
「皆、これが最後のブリーフィングだ。これまでの訓練通り、冷静かつ正確に行動してくれ。この作戦の成否は、我々全員の連携にかかっている。生きて戻ることを約束しよう。さあ、突入準備だ。」
(部隊員たちは無言で頷き、各自の装備を最終確認し始める。)
**ガラ・エリオス中佐:**
(突然、モニターをじっと見つめながら低い声で発言する。)
「地形が違う。」
(部屋の空気が一瞬、張り詰める。ヒーリングと部隊員たちは一斉にエリオスの方を見やる。)
**ジャック・ヒーリング大佐:**
「違う…?何が違うんだ?」
**ガラ・エリオス中佐:**
(指をモニターの一部に向け、短く断言するように。)
「峡谷が塞がっている。それに、あんな場所に山はない。」
(部屋は静まり返る。ヒーリング大佐がモニターを確認し、基地周囲の地形図とリアルタイム映像を見比べる。)
**チームリーダー:**
「読み間違いか、それとも記載ミス…?」
**ガラ・エリオス中佐:**
(鋭い声で断言する。)
「ない。
こういった作戦では、突入経路は一通りで良いが、人質を救出して脱出するために、ありうるすべての地表に沿った離脱経路を検討する。俺が頭に入れるのは基地の構造図より、周囲の地形図だ。特にこの峡谷は、レーダーやホーミングが生きている状態で、西側から脱出する際の経路の一つだった。別資料の航空図CGでも確認して、俺は頭に入れている。それと違う。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(ヒーリングは再度モニターに目を戻し、深く考え込む。)
「中佐、もう一度確認するが、我々は既に制空権を確保している。そして、この作戦は三つの基地の同時攻撃が不可欠だ。ビッグフラッドがエウロパから戻ってくる可能性を考慮すれば、時間的余裕はほとんどない。サーモグラフィのデータでも何も異常は検出されていないし、電波通信の形跡も確認されていない。伏兵が潜んでいるとは考えにくい。もし敵が意図的に脱出経路の一つを潰したのだとしたら、その意図が何であれ、我々はその場の状況に合わせて経路を再調整するだけだ。」
**ガラ・エリオス中佐:**
(依然として冷静な表情を保ちながら。)
「大佐、確認が必要だと言ったのは、この地形の変化が単なる偶然ではなく、敵の罠である可能性を考慮してのことだ。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(ヒーリングは一瞬黙り込むが、すぐに理論的な反論を続ける。)
「だが、中佐、我々は既に戦術的な優位を確保している。制空権が取れている以上、敵が我々を罠にかけるための余地は限られている。たとえ地形が変わったとしても、その場で臨機応変に対応することが可能だ。」
(部屋の空気が一層緊張する。ヒーリングはエリオスをじっと見つめるが、やがてその目に迷いがないことを悟る。)
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(深いため息をつきながら。)
「…わかった。確認を優先しよう。ただし、時間がない。確認に時間をかけすぎれば、三方面からの攻撃のタイミングがずれてしまう。迅速に、慎重に動くことを忘れるな。」
**ガラ・エリオス中佐:**
「了解した、大佐。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(最後に部隊全体に目を向けて。)
「諸君、今から中佐の指摘を踏まえ、再確認を行う。それが終わり次第、突入を開始する。作戦のタイミングは重要だ。迅速な行動を頼む。」
(部隊員たちは一斉に応答し、再び準備に取り掛かる。エリオスは依然として冷静な表情を保ちながら、確認作業に向けて動き出す。)
エリオス中佐の指摘により、ロマノフ空中基地周辺の地形変化についての確認作業が優先されることとなった。時間が限られている中での迅速な判断が求められる。
---
**第二次ブリーフィング: ロマノフ空中基地潜入作戦**
**場所:** 重巡洋艦タニムラ、作戦準備室
---
**状況報告:**
偵察ドルイドによるエコー検査は解像度が低いこともあって、明確な異常は検知できなかった。しかし、重巡洋艦タニムラに偶然搭載されていた最新型のニュートリノ探知装置により、ロマノフ空中基地周辺の異常地形の正体が明らかになった。探知結果は、金属製の巨大な構造物が氷の地層に埋もれていることを示している。これにより、作戦の状況は一変することとなった。
**ブリーフィング開始:**
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(モニターに映し出されたニュートリノ探知装置の解析結果を見つめながら、驚きを隠せない表情で。)
「驚いたな…。これは地下基地か?こんなものが隠されているとは、まったく状況が変わってくる。」
**チームリーダー:**
(画像を分析しつつ、慎重に発言。)
「形状からすると、宇宙艦ではないでしょうか? 氷の地層に完全に埋められ、エンジンの外部放熱が切られていれば、サーモグラフィにも映りません。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(疑念を抱きつつ、冷静に言い返す。)
「まさか…伏兵的な宇宙艦だとしたら、我々が制空権を取るまで隠し続ける意味がわからない。何か他の意図があるのか?」
**ガラ・エリオス中佐:**
(静かにだが、確信を持って発言。)
「電磁波遮断も完全に行われている。重要なのは、隠蔽が常識外れに執拗だということだ。単なる伏兵や秘密基地であれば、これほど徹底した隠蔽は必要ない。宙域外からの探査を避けるだけでいいのだし、それにはもっと簡単な方法がある。この執拗さは意図がある。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(深く考え込んだ後、決断を下す。)
「…確かに、君の言う通りだ。だが、これ以上突入を遅らせるわけにはいかない。ビッグフラッドが戻る可能性を考えれば、時間がない。したがって、タニムラの乗組員から経験豊富な者を選抜し、増員することを提案する。」
**ガラ・エリオス中佐:**
(同意しつつ、自らの役割を明確にする。)
「賛成だ。私は収容所のある空中基地ロマノフを担当する。人質の救出を最優先に、迅速に行動する。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(指揮を分担する形で指示を続ける。)
「了解した。別動隊は私が指揮する。秘密裏にその金属構造物に向かい、チタンドリルを使って穿孔し、内部に突入・制圧・鹵獲を目指す。もし構造物に動きが見られた場合は、タニムラの艦載機から地中貫通爆弾を使用し、徹底的に攻撃して止める。」
**チームリーダー:**
(決意を込めて発言。)
「準備は整っています、大佐。別動隊は指示に従い、構造物を攻略します。」
**ジャック・ヒーリング大佐:**
(再度全員に向けて指示をまとめる。)
「諸君、時間は限られている。我々は迅速かつ確実に行動しなければならない。作戦の成功は我々全員の連携にかかっている。エリオス中佐、ロマノフでの君の判断に期待している。私も別動隊を指揮して、あの謎の構造物を解明する。全員、配置に就け!」
(部隊員たちは緊張感を持ちながら、各自の準備を整える。エリオス中佐は再度モニターに目をやり、決意を新たにする。)
**ブリーフィング終了:**
タニムラの乗組員から増員された部隊とともに、作戦が再編成される。エリオス中佐がロマノフ空中基地を担当し、ヒーリング大佐が別動隊を指揮して、隠された金属構造物の攻略を目指す。時間は限られている中での、迅速な行動が求められる。
**緊急作戦立案書**
**作成者:** ジャック・ヒーリング大佐
**宛先:** ガニメデ司令部、重巡洋艦タニムラ艦長および関係部隊
---
### **作戦名:** タイタン・ロマノフ空中基地および隠匿構造物制圧作戦
### **背景:**
ロマノフ空中基地周辺の異常地形に関する調査の結果、ニュートリノ探知装置によって、氷の地層に埋もれた巨大な金属構造物が確認された。この構造物が単なる伏兵や秘密基地ではなく、より高度な戦略的要素を含む可能性が高いことから、従来の作戦計画に修正を加え、2か所の目標地点に対する同時攻撃を実施する。
### **目標地点:**
1. **ロマノフ空中基地**
- **目的:** 基地の制圧および人質の救出。
- **担当:** ガラ・エリオス中佐指揮下の部隊。
- **行動:** 突入後、主要制御室を制圧し、基地全体のセキュリティシステムを掌握。次に、人質収容エリアに迅速に進行し、敵戦力を排除しつつ、可能な限り多くの人質を救出する。救出後は事前に選定された脱出経路に従い、安全に基地外へと退避する。
2. **隠匿構造物(地下に埋没した金属構造物)**
- **目的:** 構造物の内部構造の解明および制圧・鹵獲。
- **担当:** ジャック・ヒーリング大佐指揮下の別動隊。
- **行動:** 別動隊は構造物への秘密裏の接近を行い、チタンドリルを使用して氷の地層を穿孔。突入後、内部の制圧を実施し、構造物の目的を解明。必要に応じてデータおよび技術資料を回収し、敵の技術や戦略の詳細を把握する。単に地中貫通爆弾で先制攻撃を加えることは、①十分な打撃を与えることが期待できない。②敵の目的がわからない。③内部に人質が収容されている可能性がある ことから現段階では不適と考えられた。ただし作戦進行状況によっては、重巡洋艦タニムラの艦載機による地中貫通爆弾を使用し、即時無力化を図ることも選択肢となることを確認した。
### **秘密行動の具体的方法:**
1. **隠密接近:**
- 別動隊はタニムラの機密モジュールを利用し、目標地点である隠匿構造物への接近を行う。使用するシャトルはレーダー反射抑制コーティングを施しており、敵に探知される可能性を最小限に抑える。
2. **チタンドリルによる穿孔:**
- 構造物への接近後、チタンドリルを使用して氷の地層を突破。ドリルは低周波振動を利用し、敵に探知されにくい形で進行する。穿孔完了後、エントリーチームが構造物内部に突入し、即座に制圧行動を開始する。
3. **制圧および鹵獲:**
- 突入後、制圧部隊は構造物の各所を迅速に押さえ、内部にある技術資料やデータを回収する。構造物が敵の宇宙艦である場合は、エンジンや制御システムを無力化し、鹵獲の準備を整える。
4. **地中貫通爆弾の準備:**
- 構造物に異常な動きが確認された場合、タニムラの艦載機により地中貫通爆弾を投下。構造物を即時破壊し、敵の戦力を完全に無力化する。
### **指示:**
- すべての部隊は各自の担当する目標地点で迅速に行動を開始し、確実な制圧を目指すこと。
- 隠匿構造物とその中に内蔵されている戦力に関して最大の注意を払う。
- 作戦成功後、タニムラにて合流し、即座に撤退行動を開始する。
- 本作戦の成功は、タイタン圏における地球連合軍の戦略的優位を確固たるものとするために不可欠である。全員が冷静かつ迅速に行動し、目的を達成することを求める。
**署名:**
ジャック・ヒーリング
地球連合軍特殊部隊指揮官
**ジャック・ヒーリング大佐の回顧録 「*暗黒の軌跡:土星圏攻略戦の記憶*」より抜粋**
出撃の直前、緊張が高まる中で、私は作戦名に「オペレーション・オルフェウス」を提案した。冥府に降り立ち、愛する者を連れ戻そうとする古代の英雄オルフェウスを、この極限の作戦に重ね合わせたかったのだ。オルフェウスのように、深淵から人質を救い出すことが、我々の使命である。
その提案に対して、ガラ・エリオス中佐は、少しの間沈黙していた。そして、獰猛に笑いながら口を開いた。
「オルフェウスの冥府下りは失敗したじゃないか。冥府から戻れたとしても、愛する者を失ったままだった。オペレーション・ヘラクレスにしよう。」
~~ かくして、赫赫たる力を誇りしヘーラクレースは、冥府の暗闇に降り立ちぬ。彼は、テーセウスとペイリトオスの魂が、闇の王ハーデースの命によりて、陰々たる石の椅子に囚わるる様を見いだせり。ヘーラクレース、剛勇をもってテーセウスの手を取り、怨霊の呪縛を裂きて、地上へと彼を導き還せり。かく、彼は友を冥府より奪い返し、再び日の下に解き放ちぬ。~~
**大西洋新聞**
**アテネ-オリュンポス市共催オリンピック: 歴史的コースでマラソン競技本日開催**
本日、アテネ市にて、オリンピックのマラソン競技が開催されます。コースはマラトナス市からアテネ市までを結ぶもので、古代ギリシャの伝令フィディピディスが走ったとされる伝説の道をたどります。このルートは、紀元前450年のマラトンの戦いに由来し、アテネ・クラシックマラソンでも使用されている、極めて象徴的なコースです。
マラソン競技は、オリンピックにおいて特別な意味を持つ種目であり、その起源はこのマラトンの戦いに遡ります。伝令フィディピディスが、戦場からアテネまでの約42kmを走り抜き、戦勝を伝えた後に力尽きたという伝説に基づいています。この物語は、マラソンが単なる競技ではなく、歴史と文化、そして人類の精神的な強さを象徴するものとして重要であることを物語っています。
このコースは、世界中のランナーにとって挑戦的なルートとして知られています。特に10km地点と31km地点に待ち受ける急な上り坂は、選手たちにとって最大の難関です。これらの坂は、歴史的な背景と結びついているだけでなく、ランナーの持久力と精神力が試される場所でもあります。
現代のオリンピックにおいても、マラソンは大会の象徴的なフィナーレとして位置づけられており、世界中の観客が注目する競技の一つです。古代の伝統を継承しながら、現在のオリンピック精神にふさわしい高い競技レベルが求められています。
この歴史的なマラソン競技は、オリンピックの精神を体現する場であり、選手たちが古代から現代へと続く伝統を尊重しながら、全力を尽くす姿が見られることでしょう。
今回のオリンピックは、海王星連合の攻撃で甚大な被害を受けたオリュンポス市とアテネ市の共催となっており、閉会式はオリュンポス市で行われる予定です。開催地を分担することで、オリンピックの平和と再建のメッセージが一層強調されるでしょう。
ライナーガンマTV速報
タイタンで大爆発発生、地球連合軍の作戦行動中
本日、地球連合軍が作戦行動中の、土星の衛星タイタンで大規模な爆発が発生しました。この爆発は木星の衛星ガニメデからも観測可能なほどの規模であり、現場付近の状況は依然として不明です。
現地からの情報は非常に限られており、爆発の原因や被害状況についてはまだ確認されていません。地球連合軍の作戦が行われていた中での爆発であるため、作戦と関連している可能性も考えられますが、詳細は不明です。
現在、地球連合軍の司令部からの公式発表が待たれています。続報が入り次第、お伝えします。
**ジャック・ヒーリングの自伝 「*暗黒の軌跡:土星圏攻略戦の記憶*」より抜粋**
現地時間は深夜であった。衛星入植地の昼夜の概念はややこしい。とにかく空は漆黒の闇に包まれていたが、我々の緊張は極限まで高まっていた。ガラ・エリオス中佐率いるα部隊は、既にステルス機で空中基地ロマノフに突入していた。彼らには人質を輸送するための垂直離着陸機も伴っていた。彼のチームの成功を信じつつも、我々の任務は別にあった。
私は峡谷部を調査するβ部隊と、地面の隆起部を調査するγ部隊を再編成し、自らはβ部隊に参加することにした。γ部隊は副官であるマネッシュ・ドネスツリカヤ中尉が指揮を執り、それぞれ約20名の精鋭で構成されていた。離脱や、人質が居た場合の輸送に使うための離着陸機が遅れて来る手筈になっていた。
我々は空中からチタンドリルを用いて、氷で塞がれた峡谷部へと突入した。ドリルが氷を貫く音が、タイタンの静寂を引き裂く。内部への侵入に明らかな抵抗はなかった。後に判明したことだが、私たちはその時すでに海王星連合軍の駆逐艦「トルネイド」のデッキに侵入していた。敵はこの艦を凍土に埋め、巧妙に偽装していたのだ。
潜入が発覚したのは避けられなかった。緊急警報が艦内に鳴り響く。我々が制圧を試みる間もなく、「トルネイド」は氷を割り、離陸を開始した。直ちに敵兵が集合してくることは明らかだ。私たちは、艦の制御を奪うか、もしくはこの状況から脱出するかという二つの選択肢を迫られた。
爆撃機は、「トルネイド」の離陸の兆候を感じ取り、地中貫通爆弾を準備していた。しかし通信が不通になっており我々から合図を送ることができなかったために、艦が完全に離陸するまでに間に合わず、損害を与えることはできなかった。この時点では、敵の意図は全く掴めていなかった。今更駆逐艦が一隻投入されたところで、離陸した艦が十分な加速を得られていない状況であれば、いずれ我が軍の軍艦に捕捉され、撃墜されることは明らかだ。であれば普通に考えたら、敢えて白兵戦で艦を奪取する必要自体ない。
私は決断を下した。敵の艦のコントロールを奪い、その意図を阻止することにした。何を狙っているかは不明だったが、私たちはこの状況を逆手に取るつもりだった。作戦全体の状況はともかく、「トルネイド」における局地的な状況は敵の計算外であることは間違いなかった。我々はまず撃ち落されないように友軍に連絡を取るところから始めようとしたが、「トルネイド」が通信妨害モジュールを展開しており、それを回収するまで通信が実行できないことが明らかとなった。
その時、窓の外が突然昼間のように明るくなった。私は反射的に顔を上げた。何が起こったのか理解する前に、もう一機隠されていた駆逐艦「サンダーボルト」が氷の中から姿を現し、その巨大な熱線が真一文字に天を引き裂いたのを目撃していたのだ。光の奔流は恐るべき速度で空中基地ロマノフに向かい、直撃した。
私たちの耳には、凄まじい爆音が響き、爆発の衝撃が地面を揺るがした。状況が敵の計算外であることは明らかと言えたが、我々自身の計算外であることもまた、明白だった。
**太陽系戦争 戦後証言収集プロジェクト**
**証言者:** 伍長 テーレンス・ベッテル(海王星連合軍)
---
「私は、空中基地ロマノフに配属されていました。その日、通常の警戒任務に就いていただけで、作戦については何も聞かされていませんでした。いつものように見回りを終えて持ち場に戻ろうとしていた時、夜の闇に包まれていた基地に突然警報が鳴り響き、すぐに事態の深刻さを悟りました。基地の対空防衛システムは稼働していましたが、地球軍の部隊がそれをかいくぐって突入してきたのです。私は命令を受け、現場へ急行していました。
途中で、小規模な爆発音が聞こえ、基地全体が揺れました。最初地震かと思いましたが、断続的な揺れで、すぐに基地の状況が尋常ではないことを感じました。指示を仰ごうとしましたがトランシーバーが不通で、更に混乱しました。私たちは敵に包囲されているのではないかという恐怖が胸を締め付けました(編集者注:この地震は予め基地に設置された設置型爆弾の起爆により、地球連合軍兵士の退路を断つためのものであったと考えられる)。
次の瞬間、信じられないほどの轟音が耳をつんざき、基地全体が振動し、壁が崩れ始めました。何が起きているのか理解する間もなく、私の体は強烈な衝撃波に包まれ、気がついた時には峡谷の淵に投げ出されていました。
正直なところ、自分がまだ生きているとは思えませんでした。数百メートルは落ちたはずです。全身が痛み、頭がぼんやりとしていて、周りの状況を把握するのにしばらく時間がかかりました。恐る恐る目を開けると、眼前には崩壊しつつある基地の残骸が広がり、炎があちこちで燃え盛っていました。私は反重力スーツを含む防護・戦闘の完全装備をした状態で、たまたま炭化水素の滝壺に落ちたために、助かったのだとあとで聞かされました。
あの爆発の衝撃、そして基地が崩壊する様を忘れることはできません。生き残ったこと自体が奇跡だとしか言えません。
**アンドレア・フォスターの証言**
「私は太平洋新聞の記者として、報道の最前線に立っていた…少なくとも、そう思っていました。しかし、タイタンにて、私は海王星連合軍に捕らえられ、強制的に娼婦にされていました。
記者として、あったことをありのままに伝えたいと思いますが、人間の所業ではありませんでした。言うことを聞かなかった者や、人気の低い順から殺されていくのです。他の囚人が悪口や不平不満を言っているのを密告すれば、角砂糖を与えるという、異常なルールによって私たちの団結を阻み、気力を削いでいました。そのルールの中で私たちは海王星軍のやつらに媚を売ることを余儀なくされ……私自身、あさましい動物になったような気分でした。何の法律も倫理も私たちを守ってはくれませんでした。あの暗黒の日々を、私たちは誰にも想像できないほどの絶望の中で過ごしました。
その日も、いつもと変わらない恐怖と屈辱と苦痛に耐えながら、収容所の一角に閉じ込められていました。深夜まで働かされて、それが済んですぐで、私たちはみな疲れ果てていました。突然、基地全体が激しく揺れ、それで目を覚ましたのだったと思います。振動の度に私たちは怯えましたが、次の瞬間、信じられないことが起こりました。
暗闇の中、突然現れたのはガラ・エリオス中佐の一隊でした。彼らは私たちを助け出すために来てくれたんです。マスクにはライトが装着されていました。
脱出のために急いで他の囚人を起こしていると、外がとんでもなく明るくなり……、収容施設には窓がないので本来は「外」など見えるはずがないのですが……、とにかく明るくなり、まるで昼間のようでした。次の瞬間、ものすごい轟音が響き渡り、基地の半分が崩壊しました。私は何が起きたのか全く理解できず、ただ呆然と立ち尽くしていました。目の前で、隊員や他の人質が吹き飛ばされ、彼らの姿は一瞬で見えなくなりました。その中には、海王星連合軍の兵士や看守もいて、彼らはまるで炭のようになっていました。
信じられない光景でした。恐怖と混乱が渦巻く中で、私自身もどうすればいいのか全くわからなくなっていました。
しかし、ガラ・エリオス中佐は違いました。彼は、まるで全く予定通りであったかのように、堂々と立っていました。冷静に周囲を見渡し、状況を一瞬で把握しました。彼の声は、まるで私たちを現実に引き戻すかのように響きました。『脱出するぞ』と、彼は力強く呼びかけました。
轟音で耳が麻痺していて、彼が三回言った時にようやく聞こえたのです。オゾンと硝煙の嫌な香りが立ち込めていました。兵士たちは生き残っていた人質たちにガスマスクを与えました。しかし『脱出する』と一言で言っても……、私は、無理だと思いました。彼が入ってきた道は、今やどう見ても塞がっていたからです。
**太陽系連合軍兵士の軍法会議での証言**
*証言者:* 太陽系連合軍所属兵士
*証言場所:* ガニメデ国立大学附属病院病棟(リモート証言)
*証言内容:*
「私は現在、全身に重度のやけどを負っているため、ここガニメデ国立大学附属病院の病棟からリモートで証言しています。あの日、私たちはロマノフ空中基地の救出作戦に従事していましたが、突然の大破壊によって状況は一変しました。攻撃の正体は不明でしたが、その瞬間、任務が完遂できないことは明らかでした。
ガラ・エリオス中佐が指揮を執っていたのですが、彼の右側に展開していた兵士たちはすべて吹き飛ぶか蒸発してしまいました。左側に展開していた者だけが生き残り、私を含めておそらく8人ほどだったと思います。ですが、その瞬間に点呼を取る余裕はまったくありませんでした。
守るべき人質も多くが爆発で吹き飛ばされ、残った者たちも重傷を負っていました。私たちは、垂直離着陸機までたどり着くことは難しいと思いました。正直に言えば、爆発の範囲を考慮すると、おそらく垂直離着陸機も吹き飛ばされており、帰還の手段は残っていないと感じていました。
もちろん収容所の壁はすでに焼失していましたが、数百メートルの高度から燃え盛る瓦礫の中へ飛び降りるのはどう考えても安全な脱出方法ではなく、検討の余地もありませんでした。
私はその時、中佐の真後ろにいました。彼は顔の右半分が焼けた状態で頭を上げ、左右を見渡した後、即座に希望を捨てずに人質の脱出を指揮しようとしました。その勇気には言葉を失うほどでしたが、我々は第二波攻撃を警戒して地に伏せることしかできませんでした。あの攻撃の火力は、まさにアースクエイク級の火砲に匹敵するものであり、海王星連合軍の新兵器である可能性を真剣に考えざるを得ない状況でした。
その時、私は人質を置いて撤退するべきだと進言しようと考えました。まともなリスク管理の訓練を受けていたなら、誰でもそうするでしょう。しかし、その時、私は気道熱傷か何かで声が出なかったのです。いや、実際には声は出ていたのかもしれませんが、鼓膜が破れていたため自分の耳には聞こえませんでした。結果的に中佐の耳にも届かなかったと思います。
中佐は身振りで兵士や囚人たちに隊列を組むよう指示しようとしていたようですが、私たちはその指示に従うことができませんでした。混乱の中で、私は近くの脱出ポッドに使用不可のマークが出ているのを見て、なんとか中佐にそれを知らせようとしました。声を出すか、指で示すかして、中佐にその事実を伝えたのです。
あの瞬間、私たちが直面していたのは、ただ生き延びるための本能的な行動でした。私たちは完全に追い詰められていたのです。中佐がいくら英雄的な態度をとっていようと、それは同じことでした」
ゼログラビティ体操 ユーラシア代表キーラー・ファタール 競技後のコメント
「戦場で英雄たちが命を懸けて戦ってくれているおかげで、私たちはスポーツや文化、芸術を楽しむことができます。この栄誉ある場で競技できることに、深く感謝しています。」
**太陽系連合軍兵士の軍法会議での証言(続き)**
*証言者:* 太陽系連合軍所属兵士
*証言場所:* ガニメデ国立大学附属病院病棟(リモート証言)
*証言内容:*
(軍医の報告)「証人の容態が一時的に悪化しましたが、鎮静剤を投与し、証言を再開する準備が整いました。」
「あの時、状況は絶望的に思えましたが、突然現れたのは海王星軍の駆逐艦でした。収容所の破れた壁に横づけしたその艦を見た瞬間、私たちは天祐だと感じました。海王星軍のマークが見えたとき、私は一瞬白兵戦を覚悟しましたが、艦から出てきたのは、なんと友軍のヒーリング大佐でした。
『収容所の間取りは変わっていなかったようだな』と大佐は言いながら、状況を冷静に把握していました。エリオス中佐も即座に行動に移り、動ける兵士と市民をまず艦内に入れるよう指示しました。その後、中佐は自ら動けない囚人たちを担ぎ込んでいきました。
私自身は、痛みでほとんど立ち上がることができず、這って駆逐艦に乗り込もうとしていました。その時、突然ものすごい爆風が背後から襲いかかり、私の体はその衝撃で宙に浮き、そのまま駆逐艦の格納スペースに飛び込む形となりました。私の全身のやけどは、恐らくその爆風によるものでしょう。
駆逐艦は、爆風に吹き飛ばされるようにしながら、まだ人質や兵士を残した状態で離陸を開始しました。状況を考えると、あの場で駆逐艦が離陸する以外の選択肢はあり得なかったのです。
あとから聞かされた話ですが、あの爆風は、海王星軍の駆逐艦『サンダーボルト』が艦体ごと基地に突撃し、エンジンをオーバーロードさせて大爆発を引き起こしたものでした。局所的には、その爆発は第一波の攻撃よりもはるかに強烈なもので、破壊力は計り知れませんでした。私は駆逐艦から見下ろしながら、その威容を誇っていたロマノフ空中基地の外郭のチタン線が、まるでチーズのようにとろけ落ちていくのを目の当たりにしました。
海王星連合の馬鹿ども…、めちゃくちゃしやがる。
その後、私は駆逐艦の中で意識を失いましたが、奇跡的に命を取り留め、今こうして証言しています。」
~~ かくして、赫赫たる力を誇りしヘーラクレースは、冥府の暗闇に降り立ちぬ。彼は、テーセウスとペイリトオスの魂が、闇の王ハーデースの命によりて、陰々たる石の椅子に囚わるる様を見いだせり。ヘーラクレース、剛勇をもってテーセウスの手を取り、怨霊の呪縛を裂きて、地上へと彼を導き還せり。かく、彼は友を冥府より奪い返し、再び日の下に解き放ちぬ。
されどペイリトオスに至りては、ハーデースの呪いが一層深く彼を絡め取り、ヘーラクレースの力をもってしても、その鎖を断ち切ること能わざりき。~~
**太陽系連合軍報告書**
**件名:** 空中基地ロマノフ作戦完了報告書
**作成者:** ジャック・ヒーリング大佐
**宛先:** 太陽系連合軍司令部
---
**1. 作戦概要:**
空中基地ロマノフにおいて、推定100名の人質が拘束されているとの情報に基づき、救出作戦を決行しました。侵入戦力のみでの基地制圧、もしくは侵入戦力での人質救出と、その後の対地攻撃による基地制圧を企図したものでした。結果として救出できたのは14名に過ぎず、残りの人質は死亡または行方不明となりました。敵軍による激しい攻撃と、捨て身の作戦による基地の崩壊が原因と考えられます。
---
**2. 部隊の損害状況:**
- **α部隊(ガラ・エリオス中佐指揮)**
- 突入メンバー: 22名
- 死亡または行方不明: 18名
- 重傷: 4名
- **β部隊(ジャック・ヒーリング大佐指揮)**
- 突入メンバー: 20名
- 死者: 0名
- 軽傷: 14名
- 重傷: 2名
- **γ部隊(マネッシュ・ドネスツリカヤ中尉指揮)**
- 突入メンバー: 22名
- 全員の安否不明(詳細不明だが、駆逐艦サンダーボルトが任務を遂行できたことから、全滅したとみられる)
**合計損害:**
- 総突入人数: 64名
- 死亡または行方不明: 40名(うち全滅と見られるγ部隊22名)
- 軽傷: 14名
- 重傷: 6名
---
**3. 基地の状況:**
ロマノフ空中基地はほぼ完全に焼失し、基地機能の回復は見込まれていません。基地全体に渡る火災と爆発により、主要施設は壊滅的な被害を受けており、残存施設も使用不能な状態です。
---
**4. 敵軍の損耗:**
敵軍の損耗も極めて大きいと推定されます。基地人員のほぼ全員が戦闘または基地崩壊によって死亡したと考えられます。また、基地に駐留していた海王星連合軍の駆逐艦2隻(トルネイド、サンダーボルト)とその乗組員もおそらく全滅しています。
---
**5. 総評および次の行動:**
今回の作戦は、目標であった人質救出においては成功とは言えず、大きな損失を被りました。特にγ部隊の全滅が確認されれば、人的損失は甚大です。しかし、敵軍に対しても相当な損害を与えたことは確実であり、基地の無力化は成功しました。
次の行動としては、生存者の早急な救出と戦場の完全な掃討を行い、敵の残存勢力がないことを確認する必要があります。
---
**署名:**
**ジャック・ヒーリング**
*地球連合軍 大佐*
**ジャック・ヒーリングの自伝 「*暗黒の軌跡:土星圏攻略戦の記憶*」より抜粋**
予期せぬ大爆発に私は第二撃が来たと思った。エリオス中佐の体は風に吹かれる枯れ枝のように空中に投げ出され……
デッキに居た私が彼の腕をつかんで、落下を止めた。私は肩が外れたが、エリオス中佐のほうがはるかに重症だった。われわれは彼を引っ張り上げると、彼の呼吸が止まっていることを確認し、即座に標準的な救命措置を開始した。私が開始し、隊員に引き継いだ。
**地球TV 速報**
アテネで開催されたオリンピックのマラソン競技で、男子は地元ギリシャ出身のヤニス・ミュラー選手、女子は火星ニューローマ出身のスヴェトラナ・セムタヤ・メフィトホーニナ選手が、それぞれ金メダルを獲得しました。地球と火星の新たな英雄たちが誕生し、オリンピックの歴史に新たな一章が刻まれました。
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