棺の傍で眠る者
廻蛾
眠り
「今日、一緒に寝て欲しいんだ。」
8月中旬、幼馴染の
「どしたん?珍しい。」
と素直に聞いた。すると渚が、
「私、今日は1人じゃ寝れなくて。」
と答えたので、いたずら心が湧いた弘人が
「何?1人で寝るのが怖くなったん?」
と聞いた。そしたら即座に
「違う!」
と返ってきた。その発言を少し疑ってた弘人はいたずらっぽく言った。
「またまた〜そんな事言って〜。思いっきり顔に出てるぞ〜?『怖いこと思い出しちゃったから一緒に寝て〜』って。」
渚は図星を突かれたのか、少し顔を逸らして何も言わなくなった。それを見て弘人は言った。
「…話聞くやで?」
渚はゆっくり語り始めた。
「私のおばあちゃん、家族に迷惑かけたくないからって1人暮らししてたでしょ。」
「うん」
「おばあちゃん、寝てる間に心筋梗塞になって死んじゃってから12日後に発見されて、それが発見されてお葬式したって1月前に話したやん。」
「うん」
「最近、自分もそうなるかもしれないって思うようになってから、1人で寝るのが怖くって。」
「そうかそうかぁ…ふふっふひひっははははは!」
話を聞き終えた弘人が急に笑いだした。
渚はそんな弘人に赤面させながら怒る。
「ちょっと今からしばいていい?(#^ω^)」
「いや〜すまんすまん。なんかあんさんそういうちょっぴり怖がりなとこほんまに変わらへんなぁ思うて。」
冗談交じりにそう言った弘人は,笑いながら言葉を続ける。
「もしあんさんがそれでぽっくり逝ったら、わしがあんさんの隣で一緒に
そう言った弘人に渚が、
「その時は寝づらいからって隣に布団敷いて寝ないでよ。」
と冗談を言う。それに対して、
「大丈夫だぁ。せめてあんたの
と言う。対して渚はまた冗談を言う。2人はこんな感じの話を疲れて眠るまで続けた。
そんなことをしていた弘人は今、白い箱の中で
渚は弘人の傍で言った。
「約束、でしょ。」
そう言うと、渚は箱に寄りかかって目を閉じた。
9月某日の真夜中の葬儀場に、1人の寝息が響き、数十分後、そこにまた静寂が訪れた。
棺の傍で眠る者 廻蛾 @babakaukakaka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます