第10話

ケンは悩んでいてもなにも変わらないと思い、外でうろうろするのをやめ、家に入った。

力になれるかはわからない。けど、できることはやってみようと思った。

「エータ、右腕を見せてくれる?」

「ああ、必要ならテーブルの上で横になるが?」

「あーその方がいいかな」

エータはテーブルの上を簡単に片づけて横になった。

ケンはエータの右腕を見た。金属はねじ切られ、関節部分のベアリングは受け金具だけで中身の玉は一つもなくなっていた。ケーブルもちぎられたままで、わずかだがカビも生えていた。

「エータのこのベース部分の金属って何?」

「メインのフレームはチタン合金だ。関節部分はクロムやステンレスの部分もあるが、基本的に高耐久で、過酷な環境でも腐食しないような設計になっている」

「このケーブルとかチューブの素材は?」

「中核部分は銅のケーブルと光ファイバー。チューブは多層構造でゴムとキノコ繊維で出来た内外装の中間に衝撃吸収水が入っている」

ケンはなんとなくは理解した。子供の頃からラジコンやドローンに興味があり、休日には自分で改造したドローンを公園や工場の敷地で飛ばしたりしていた。

ただ、技術が違いすぎる。この世界に高合金を作る設備があるのか?PCや3Dプリンターがあるのか?

「あ、そういえばエータの内部は損傷してないの?記憶媒体とかは不具合あったりしない?」

「おそらく内部的にも損傷している。内容データの一部との連絡が極端に遅延する事があるのは外傷が原因だと思うのだが」

「中身はどこにはいってるんだ?頭?ボディ?」

「両方だ。分散してどこか一部でも生きていれば最低限の情報を持ち帰られるように設計されている。脇の下のプレートが外せるはずだからやってみてくれ」

エータは万歳のような恰好になった。ケンは脇に手をいれ動かしてみた。スライドすることで外れた。中身はもう一枚のプラスチックのウロコに保護されるようなデザインだったが、ケーブルをつなぐモジュラージャックのような穴を見つけることができた。

「エータ。これは外部のコンピュータと接続すればアクセスできるのかな?」

「うむ、そうだ。このような会話はこの1000年間はまったくなかったが、メモリーの重要プロテクト部分のようだな。接続後、吾輩のアクセス許可があれば可能だ」

「その、ここに、その接続できるコンピューターってある?」

「いや、見ての通りないが?」

「それはどこにある?」

「地表データが1200年前から更新されていなくて吾輩の視覚データとの照合がなく、現在位置すら不明なのだ。外部ターミナルと接続できれば視覚化してケンにも表示できるのだが、ターミナルのシグナルもE型のシグナルもキャッチできない」

「ええと?それはもう存在しないか、エータのセンサーの不具合って事かな」

「君の解析は正しい。吾輩もそのどちらかだと認知している」

「お前達はなにか魔法を使っているのか?魔法の詠唱の言葉を使っているのか?」

「うわ!?アレックスいつのまに?」

テーブルに寝転ぶエータに夢中でアレックスが隣にくるまでまったく気付かなかった。

「昼食の時間まで、まだあると思うのだが、空腹かねアレクシウス」

まったく動じずに会話するロボットはさすがロボット。

驚いた俺にも「腹が減ってきたかね」と聞いてきた。

「こ、この世界って魔法があ、あるんだよな?」

俺はどちらともなくいって二人の顔を見比べた。

「君は魔法などを信じているのかね?見た目は成人しているように見えるが精神はまだ幼稚だったのかねケン?」

「・・・」

ロボットなのに若干視線が冷たく感じる。アレックスは無言で俺を見下ろして何考えてるのか相変わらずわからないが、若干視線が冷たい。

「で、でも前にアレックスが俺を眠らせたじゃないか!あ、あれは魔法じゃ・・・」

二人の視線が痛く、最後まで言い切れなかった。

「ああ、あれをやったのだねアレクシウス」

「・・・ああ」

「あ、あれってなんですか?」

「アレクシウスの技術的な技で、二酸化炭素を高濃度に圧縮し吸わせる事で一時的な昏睡に陥らせる技法だな」

「え・・・何それ。二酸化炭素?」

違うのです。異世界に来たら魔法が使えると信じたかったのです。だからそんなかわいそうな子を見るような目で見ないでください!

「・・・それで、エータはなおせるのか?」

「あ、あの、結論から申し上げますと・・・無理です」

「・・・そう・・・か」

アレックスはがっくりと下を向いた。そこへエータが

「ケン。君のさきほどまでの見地はなんだったのかね?何が必要か答えがでていたではないか?」

「え、でもエータ。PCもないし。ああコンピューターのことね。それとチタン合金とか、ちぎれた腕もどこにあるのかもわからないし」

「ああ腕ならここにある。それは吾輩は聞かれなかったから言っていなかったな」

「え、あるの!?」

「おい!」

「ヒッ!」

アレックスさん激おこプンプンじゃないですか?

ま、まあなおせないと言ってしまったからか?

「もう一度聞く。なおせないならここで殺す」

ま、待ってください。これは無理でも「出来ます」といわないといけない〇〇ハラじゃないんですか!?この世界にそんな法律ないですよねそうですね。

「で、出来ます!」

「・・・で、何が必要なんだ?」

「外部からエータにアクセスできるコンピューター。レアメタルを含む金属数種。それを加工できる設備や技術者。それと場合によってプログラマーとかもいる・・かもですハイ」

いや、これ自分で言ってて・・・現実世界だったとしても積んでない?

個人レベルでそろえるのは不可能じゃないのこれ全部って。

・・・短い人生だったな・・・

「コンピューターなら吾輩の地図データが使用できれば見つかる可能性はある」

「・・・金属なら地底人を頼るのはどうだ?」

「ああなるほど。ヤツラならなんとかなるかもしれんな。まだ火山で鉄を打っているのか?」

「・・・わからんが、人間の中に地底人の武器をもったヤツを見た」

「ふむ、現在地と自らの足で地図を更新出来ればより効率的に行動できるな」

なんかよくわからない間に話しがまとまったようで、俺たち3人は旅に出る事になった。

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