第4話
目覚めたら真っ暗な部屋のベットの上で寝ていた。
なんだか酷い夢を見ていたような気がしてスマホを探した。
普段なら枕元に充電して置いているはず・・・あれこの枕って俺の愛用の美少女キャラのじゃない気が・・・
段々目が暗闇に慣れたのか、ぼんやりと部屋の中が見えた。
夢だと思っていた宿屋のベットの上で隣のベットには吸血鬼が穏やかな顔で寝ている。
・・・
・・・・・・
ど、どうしよう!?
慌てて騒いで吸血鬼を起こしたら大変な予感。
静かに冷静になろう。
はい深呼吸。静かにすってーはいてーふう。
ええとまず昨日から1日たったのか?まだ日の出前か。
コイツはアレックス。吸血鬼。
あれ?
なんか違うのか?
俺の知っている吸血鬼の弱点は・・・
太陽に弱い
ニンニク、十字架が苦手
後は流水が渡れないとか、人の家に招待無しで入れないとか、このへん曖昧。
アレックスは太陽の下でも元気だったな。
そういえばレストランで普通に食事していなかったか?
赤ワインはまあ、らしい好みだけど、長い犬歯もあるし。
ううむなんかわからなくなったな。
スースー寝息を立てて寝ている。
寝顔がかわいいな。
え、いや違!?
俺なんかおかしくなったのか?
変な世界に来て、おかしくなったのは確かだけど、おっさん相手にかわいいとかないわー。
ま、まあそれは保留で、吸血鬼って呼吸するの?
ちょっと酒に酔って無礼講してしまったけど、だ、大丈夫ですよね大将?
ま、まだ生きてるし、案外優しかったなコイツ。
服を買ってくれたし、ごはんも宿もおごってくれて。
盗んだ?強盗したお金だけど、俺に何があるんだ?
起きたら聞き出さないとだな。
逃げるのは・・・無理だな。
まずここがどこだかもわからないし、誰も頼れない。
身体能力的に1秒もかからないで捕まる自信あるわー。
ああ、もうついていく一択しかないのか。
なんかこう異世界に行ったらすごいスキルとか派手な魔法とかで
「俺tueeee」
とかじゃないのかよ。
目の前で人が死んで、おしっこ漏らして、殺人犯に慰められてごちそうになって・・・
「起きたのか」
ビクッと自分の体が反応したのを二秒後に理解して
「は、はい」
「よく眠れたか?もうすぐ日の出だな」
「だ、大丈夫です。それよりもアレックス」
「・・・」
お互いベットの上で上半身だけ起きている姿勢だったが、アレックスはベットの上でケンに向かって座った。
ケンは無意識だったが、ベットの上で正座した。
「あ、あの、あなたの目的はなんですか?」
アレックスは無言で立ち上がり、椅子にかけていたTシャツをベットの上に広げた。
そして中央にプリントされた絵を指さして
「お前は鉄の擬人を知っているのだろう?」
「え・・・ガンダ・・・ロボットの事?・・・ですか?」
「ろぼっと・・・そんなような事も言っていたな。やはり知っているのだな?」
「え、あ、多分」
アレックスはまっすぐにケンに体を向け、90度の角度で頭を下げた。
そして、絞りだすようにひび割れた声で
「・・・頼む、俺たちを救って・・・殺してくれ!」
「ちょ、ちょっとそれだけじゃわからないよ。と、とにかく頭を上げてください!」
ケンは今起きている出来事にどうしていいのかわからなかったが、とにかくアレックスの下げている頭を上げてもらおうと向かいに立ち、肩を持って体を起こそうとしたけど動かなかった。
アレックスの顔の辺りから水滴が一滴だけポトリと床に落ちた。
それを見たケンは、なんでそうしたか自分でもわからなかったが、吸血鬼を抱きしめた。
窓の外から朝日が差し込んで、街が動き出す音が聞こえてきた。
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