五章 再会、決着、そして……
第33話 時は近い
朗報だ。
俺はとっておきの情報を手に入れた。帰りが遅くなってしまったけど、裏取りもできた。早くミュウに伝えたい。俺は宿に向けて必死に走っていた。
宿に戻り、荒れた呼吸のままで自室の扉を開く。あまりの勢いに何事かとミュウが驚きの表情で俺を出迎えた。
「ミュウ、聞いてくれ! ついて手がかりを掴んだぞ!」
「……え? 本当ですか!?」
「ああ、そうだ! 送還魔法を手掛かりを掴んだぞ!」
「はぁ?」
……あれ?
なんかミュウの反応が想像と違うぞ。もっとこう、流石マスターです! みたいな感じでくると思ったんだけど。
「私のお母さんを探すのを優先してくれるって言ってたじゃないですか!」
「も、もちろんだ。別にそっちを
ミュウがジト目で俺を睨んでくる。
「……ホントだよ?」
「なーんて、冗談ですよ。送還魔法が見つかれば、お母さんの捜索に集中できますもんね。それにマスターがちゃんと情報収集してくれてるのは耳に入ってます。お客さん情報で」
「こわっ。お客さんのネットワークも侮れないな」
「それでどういうことですか?」
俺を手玉に取るとは。これじゃまるで俺の方がコミュ障みたいじゃないか。ミュウめ、やるようになったな。
「なにやら探検隊が新しいダンジョンを攻略したらしくてさ。そこで送還魔法が見つかったんだって。それをトゥルンの召喚士協会が買い取って大会の景品にしたらしいんだよ」
「なんか意外とあっさりですね」
「そういうな。それでな、なんでも昔の巻物らしくてさ。力をこめるだけで送還魔法を
ミュウがちょっとがっかりしたような表情を見せる。まだ完璧じゃないけど勉強中だもんな。せっかくなら成果を試したい気持ちもあるんだろう。
「でも大会って召喚士の大会ですよね。私たちで勝ち抜けるんでしょうか。不屈パンチなしで……」
ミュウは召喚士になってから日が浅い。戦闘経験もほとんどない。不安がるのは当然だろう。でも大丈夫だ。
「大丈夫だ。あくまで一都市の大会だからな。世界中から召喚士が集まってくるわけじゃない。参加者も少ない」
「巻物って意外と価値がないんですね」
「そりゃ、文字が読めない召喚士用だからな。文字が読めるなら
「それでも勝つのは難しいですよ」
「大丈夫だ。俺はさっきギリギリで申し込みしてきたけど、参加者は俺たちを含めて2チームだけだった。もう締め切られた時間だ。つまり一回勝てばいいだけなんだ。 小さな規模の大会だから、そんなに強い奴が出てくることはないだろ」
「マスター、なんか格好悪いです……」
「バカ言え。俺が格好良かったことなんてなかっただろ」
「そんなことないです。ちゃんとありましたよ?」
えっ、ええぇ!?
そんな上目遣いで言われましても……
「まだ短い付き合いですけど、マスターの格好いいところ沢山ありましたよ?」
ミュウが真面目な表情で答えてる。しかも少し頬が赤くなっているとか……、そんな表情で言われても困るんですけどぉ!
「ふふっ、冗談です」
「あ、ああぁぁ……ああっ!!」
ミュウはとんでもないバケモノに進化したのかもしれない。これなら優勝は間違いないだろう。
そんなことを考えていると、突然、宿の扉が開かれた。
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