二章 強襲、幼馴染!

第13話 再会バトル


 俺たちは村を出発して、近くの町に向かうことになった。


「目的地はさっき話した大農園のあるティンパという町です。暗くなる前には到着できると思います。今日はそのまま泊まって、明日から働いて旅費を稼ぐ予定です」


「旅費は結構厳しめ?」


「はい。予定とちょっと違ってしまったので」


 それはつまりアレですか。俺がスターボールに入るのを拒んだせいですか。ええ、そうでしょうね。でもしょうがないじゃない。せっかくの異世界なんだもん。後学のためにも直に触れなくちゃ。


「それに召喚士協会で登録するのにお金がかかるんです。今の私は野良の召喚士ですし、正式な師匠もいないから立場的に弱いんです。野良の状態で召喚獣を町の中で放つのはちょっと勇気がいるというか……世間の目が気になるというか。でも、登録証があれば、あ、こいつは大丈夫、って見てもらえるらしいんです」


 なるほど。それは大事だな。ミュウはただでさえ自信がないのに、変な目で見られたら逃げ出してしまうかもしれない。


「登録が済んだら、今度はトゥルンという大きな町に向かいます。そこなら人も多いですから母の手掛かりが掴めるかもしれません。もちろん字が読める人もいると思います」


「うん。それじゃあ頑張ろう。俺も頑張るからさ」


「そうですね。私も伝手を頼ってお願いしてみます。きっとマスターでもできる仕事があると思うので」


 何気にトゲがあるんだよな、ミュウは。


 ティンパまでの道のりは馬車の護衛を兼ねている。ミュウは馬車の中から、俺は場所の少し前を歩いている。待遇の差は仕方がない。対外的に俺は召喚獣だからな。


 今の指示は「警戒して」と「歩いて」だ。もちろんが俺が出した指示だ。なんだか感覚が研ぎ澄まされて集中力が増している気がするし、長時間歩いているのにほとんど疲れを感じない。モンスターも俺の強さにビビってるのか近づいてこない。


暇すぎて今は指示の効果時間がどれくらいなのかを計ってるくらいだ。スマホがあれば便利だったんだけど、残念ながら俺が召喚された時に一緒にこっちの世界に来たのは着ている服だけだった。


 ティンパに着き、行商から報酬を受け取る。とりあえずは宿をとってご飯にしよう。ミュウとそんなことを話していた。


「そこの召喚士、待ちなさい!」


 後ろから呼び止める声に振り返る。


「あなた、登録証は?」


 暗くて良く分からないけど、まだ若い女性がミュウに近づいてくる。俺はミュウを守るために前に出ようとしたが、ミュウが手で俺を制した。


「シャイラちゃん、久しぶりだね!」


 シャイラちゃんってのは、たしかミュウと一緒に召喚魔法を練習した子だよな。ミュウがこれまでに見たことがないくらいの笑顔を向けている。


「あなたは……ミュウ! 生きてたのね!」


 おいおい、なんつー言い草だよ。まるで生きててびっくりみたいな態度じゃないか。ミュウはどんな評価をされてたんだよ。


「ついに……ついに出会ってしまったのね。この町で!」


「うん。シャイラちゃんに会えて嬉しいよ」


 なんだか微妙に会話がずれてる。それにテンションに差がある。


「ミュウは召喚士になった。そしてこの男がミュウの召喚獣なのね!」


「そうだよ。私の召喚獣さんにしてマスターだよ!」


 見た目は他の人間と変わらないはずなのに、俺が召喚獣だってことを分かってるようだ。やっぱり何か違いでもあるのかな。


「ふぅん、それなら……ミュウの覚悟と想いの強さ、私が確かめてあげるわ!」


「望むところよ!」


 シャイラはスターボールを取り出して召喚獣を解き放った。


 いやぁ、久々に出会ってすぐバトルだなんて二人とも若いなぁ。でも、戦うのは俺たち召喚獣なんだよね。まっ、一歩先を行く幼馴染に勝てればミュウにとって大きな自信になるだろうし、いっちょ頑張りますか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る