第8話 俺を信じるのだ


 スターボールから飛び出した俺とミュウは、ミュウの自宅に戻って食事を済ませた。そして今日の戦闘の反省会を始めた。


「問題だ」


「はい」


「何が問題だ?」


「……え? それは召喚獣さんが出すんじゃないんですか?」


 話が繋がらないな。というか、俺が問題を出すだと。なに言ってんだ、コイツは。


「クイズじゃねーよ、アホ!」


「ご、ごめんなさい」


 ふむ。戦闘のことは置いといて、まずはこれを直した方が良さそうだな。


「ミュウはちょっと簡単に謝り過ぎじゃないか? そのせいで謝罪が軽くなってるし、癖になってるから性格に影響してるように思う。性格を変えるのは難しい。それなら言葉から変えていこう」


「ごめんなさいじゃない言葉を使えってことですか? ……じゃあ、ごめんなすって」


「大して変わってねーよ!」


「ご、ごめんな……あ、ごめんにゃ?」


「ちゃんと言い換えられました、みたいに満足するんじゃない! そもそもそういう話じゃないから!」


 しかし翻訳機能は優秀だな。昔の日本の言葉にも対応してくれてるのかよ。ミュウがなんで召喚魔法を使えるのか不思議だ。才能があるのか、ひょっとしたら召喚魔法にリソース使い過ぎたせいで他が駄目になったのかも。


 ともかく言葉から性格を変えるのも難しそうだ。少なくとも短期間で結果が出るようには思えない。他の方法を考えないと。


「ミュウは今回の戦いで自分のどこが駄目だったか分かるか?」


「全部です!」


 自信持って言うなよ、コンチクショー。


「俺が思うに、ミュウはアクシデントに弱い」


「……はい」


 かなり想像で補った推測だが、そう間違ってはいなかったようだ。本人にも自覚はあるんだろう。ないと困るが。


「それに自分に自信がなくて、自分の指示が正しいか不安があるんじゃないのか? だから言葉に出せないんだろ。言葉に出して失敗した時のことを考えてるんだろ?」


「……すごい。よく分かりますね。でもその通りです」


「俺には人類が長い年月をかけてたどり着いた数々の知恵がある。それを使えばミュウのことを知ることなど簡単さ」


「それで、私はどうすればいいんでしょうか?」


 なんだか普通の召喚士と召喚獣の関係とはまるで違う気がする。こんなに腰の低い召喚士なんていないだろう。まあ、今はその方が好都合だ。


「自分のことが信じられないんだったら俺を信じればいい。失敗したら死ぬのは俺なんだから」


「なるほど。確かにそうですね」


「なるほどじゃない! 全く、最近の若いヤツはこれだから……」


「あ、凄いおじさんっぽい話し方」


 ぐっ、確かにミュウに比べればその通りなのだが。


 戦国武将は十代とか普通だし、女の子は十代前半とかも普通にあった。恐らく、この世界でも結婚年齢はかなり早いはず。


 既に十代後半っぽいミュウが結婚を焦るのも理解できる。村の友人たちが次々と結婚していく中、マザコンの父親との将来を考えて焦っていたんだろう。それを思えば、ミュウが酷いこと言ってきても優しくできる気がするぜ。

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