まだ眠っているきみへ

九十九空間

まだ眠っているきみへ

    「何回だって言うよ、世界は美しいよ」

              (羊文学「光るとき」)


九月、未明の町は

ひんやりとして

青いベールに覆われている


ずっと乗っていなかった

自転車のタイヤに

空気を入れて近所を走った


空気を入れたばかりのタイヤは

硬く弾むから

足に余計、力が入る


鳥のさえずり

川面が

夜明け前だけ反射する光

まだ星の残った空

朝の予感にふれるより早く、僕は、


恋していた

僕は、きみに恋をしていた

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