第4話 ステータスを見てみよう

「そう言えば、シロガネ」

「ん?」

「シロガネは、ステータスは確認した?」

「ステータス?」


 シロガネは首を捻った。

 ポカンとした様子で、間抜け面になる。


「その顔、確認して無いんだね」

「うん」

「それじゃあちょっと見せて。こうやって、手をこうして」


 ニジナはジェスチャーで、シロガネに伝えた。

 手を振る動作を見せると、シロガネも真似をする。

 すると目の前に何か出て来たので、目が見開かれる。


「えっ?」

「メニューが出て来たでしょ? その中から、ステータスを押して」

「ステータス。あっ、これ?」

「そっ。出てきたら、下のアイコンをONにして、私に見えるようにして」

「下のアイコン……あっ、これ?」


 シロガネはニジナに言われるがまま、アイコンをタッチ。

 表示されていた画面が、シロガネだけではなく、ニジナにも見えるようになる。

 顔を覗かせ、「どれどれ~」と確認する。


「おっ、シロガネは特化させなかったんだね」

「特化?」

「うん。気が付かない?」


 ニジナが見たシロガネのステータス。

 パラメータも含め、バランスは良さげ。

 特化させているパラメータは一つも無いのだが、二つだけ突出していた。



■シロガネ

性別:女

LV:1

HP:30/30

MP:20/20


STR(筋力):40

INT(知力):30

VIT(生命力):30

MEN(精神力):35

AGI(敏捷性):45

DEX(器用さ):30

LUK(運):35


装備(武具)

メイン1:〈普通の剣ショートソード〉ATK:10

メイン2:


装備(防具)

頭:

体:〈普通のシャツ〉

腕:

足:〈普通のパンツ〉

靴:〈普通のシューズ〉

装飾品:


スキル(魔法を含む)



「ふーん」

「ふーんって、分かってないでしょ?」

「うん、分かってない。けど、これじゃダメ?」

「ダメじゃないけど……まあ、シロガネのリアルフィジカルなら、大丈夫かな?」


 ニジナはシロガネが強いことを知っている。

 こう見えて真面目でストイック。

 ダラダラしているように見えて、やることはちゃんとやっている……と信じている。


「むぅ。そういうニジナは?」

「わ、私?」

「うん。ニジナ、格好が違うから」


 シロガネの視線はニジナに向く。

 シロガネと違い、少しゲームを遊んでいるからか、レベルも高い。

 装備品も初心者ではなく、それなりに集めていた。


「ニジナのステータス、見せてよ」

「いいけど……そんなにシロガネと変わらないよ」


 ニジナも決して自慢できるものじゃなかった。

 本人曰く、面白みは無い。

 けれどシロガネに見せて貰ったので、自分も代わりに見せた。


「はい」

「うん……おっ」



■ニジナ

性別:女

LV:5

HP:80/80

MP:55/55


STR(筋力):51

INT(知力):45

VIT(生命力):42

MEN(精神力):47

AGI(敏捷性):30

DEX(器用さ):56

LUK(運):45


装備(武具)

メイン1:〈普通の長剣ロングソード〉ATK:15

メイン2:〈普通の鉄盾アイアンシールド〉DEF:10


装備(防具)

頭:

体:〈新米冒険者の軽鎧上〉

腕:

足:〈新米冒険者の軽鎧下〉

靴:〈新米冒険者の軽鎧靴〉

装飾品:


スキル(魔法を含む)

【調理】【調合】【裁縫】【お世話】【連携経験値(小)】【スイッチ】【風属性魔法(小)】



 確かに面白みは無く、遊びもない。

 大きく、敏捷性(AGI)が低いだけで、他はかなりバランスが整っている。

 そのおかげか、全体的なパラメータは、シロガネが高いが、特出している面で言えば、ニジナが大きい。もっとも、一番に目を惹くのは、スキルの数だった。


「凄いスキルの数。これ、なに?」

「えっと、私、ゲームを始めて色々と得意なことに挑戦してみたから、色んなスキルを手に入れたみたいだよ」

「スキル……そんな簡単に手に入るの?」

「うーん、どうかな? 得意な事なら、それがスキルに反映されるみたいだけど。相性とか練度があるから、なんとも言えないかな?」

「……よく分からないけど、大変そう。私はいいや」


 PCOではスキルは自分自身を高める重要なもの。

 その入手方法も、ただ他の人と同じことをすればいい訳じゃない。

 そのスキルに関することを磨き、練度を上げる。得意になったり、好きになったり、人によって条件も変わり、ネット上にも何が強スキルかどうか、一切の概念が無かった。


「シロガネ、スキルに気を取られなくてもいいよ。みんな違うんだから。できることをやってみよ! それが、PCOだから」

「それがPCO……定型文?」

「えっと、ボケて無いよ?」

「ボケて無いの? 変なの」

「へ、変?」


 ニジナはつい首を捻る。

 シロガネが真顔で答えたので、つい目が点になってしまった。


 けれどそれを聞いて、シロガネも安心する。

 答えが決まっていないゲーム。

 あまりゲームは得意では無いけれど、それならできそうだと思えた。


「それじゃあシロガネ、早速冒険に行こうよ」

「冒険?」

「うん。まずは戦ってみよう。シロガネならすぐに慣れるから」

「慣れる……分かった」


 シロガネはニジナに従った。

 もちろんニジナもシロガネが他にしたいことがあるなら優先した。

 けれどお互いに支え合っているからか、どちらも意見を掻い摘み、とりあえず街の外、フォンスからダンジョンへ向かった。

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