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街灯というスポットライトに照らされ、ギターを爪弾きながら歌う女の人はどこか神秘的で、写真になんてちっとも興味ないわたしにも、この光景は映える。もしSNSに投稿すればバズるに違いない! と思わせた。SNSやってないんだけど。
ただ、歌ってるのが流行りのありきたりなラブソングなんかじゃなくて、わたしの知らない、そう、例えば英語の歌ならもっと格好良かったのに。少し残念に思った。
「かっこいい……」
思わず声に出てしまっていたのに気がついて、慌てて口を閉じた。
「なにっ?」
時既に遅く、実はギターを模した機関銃だったのか、女の人はギターの先をこちらに向けて身構えた。
ど、どうしよう。
「に、にゃあー」
数秒迷った挙げ句、わたしは猫の声真似でやり過ごすことを思いついた。
「下手。0点」
それなのに、女の人からは厳しい評価が返ってきてしまう。わたしとしては渾身のモノマネだったのに。
「誰? 出てきて」
夜の空気によく通る澄んだ声。
女の人は人一人くらいなら殺せそうな鋭い目つきで、じっとこちらを睨みつけてくる。
しばしの沈黙。視線は外してくれない。
耐えられなくなったわたしは観念して生け垣から出ていくことにした。万が一、ギターが機関銃だった時に撃たれないように両手を頭の横に上げながら。
不審者じゃないよ、と敵意がないことを示すためできる限りの笑顔を作る。慣れていないせいで、頬のあたりの筋肉がヒクヒクと震える。
女の人の顔を見る。睨んでいるのもあって鋭く切れ長の目をしているからか、全身から冷え切った雰囲気を醸し出しているけど、とても綺麗な人。
じっと見ていると、どこか、その顔に既視感を覚えた。どこかで、見たような……?
「……もしかして、
「そうだけど。何?」
瞬間、わたしの顔は燃え上がってしまうんじゃないかってくらい熱くなった。まさか、憧れの人が目の前にいるなんて。
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