生活サポート美少女アンドロイドにバグで感情が芽生えてしまいました ~マスター、バグデレしちゃったワタシみたいなポンコツでもイイんですか?~ 【ASMR】

初美陽一

0日目 通常起動→バグ発生

(電子的なシステム起動音が鳴り、続いて機械的な駆動音くどうおんが響く)

(アンドロイド起動、淡々たんたんとした平坦へいたんな口調で)


「マスター、おはようございます。今日も一日、あなたの生活をサポート致します」


「まずは洗顔せんがんし、身だしなみをチェックなさってください。その間に、いつも通り朝食の準備をしておきます」


(規則正しく包丁でまな板を叩く音。テーブルにコトンと皿を置く)


「朝の準備、お疲れ様でした。朝は手軽てがるに済ませられるように、とのことでしたので、本日の朝食メニューは、トースト、フルーツサラダ、スクランブルエッグ、ヨーグルト、以上です」


「やや栄養にかたよりがあります。昼食でおぎなうよう、意識なさってください」


「……何となく疲れている気がする、ですか? 体調チェック致しますので、少々お待ちください」


(電子的なスキャン音)


「体温、平熱の基準値内……バイタル値、平均よりやや低下傾向。ただし微小びしょうにつき、誤差ごさの範囲内。はい、取り立てて問題はない、と診断いたします」


「では、出勤ですね。少々スケジュールが押しておりますので、お急ぎください」


(バタバタと慌ただしい音の後、ガチャッと玄関の扉を開く)


「マスター、お忘れ物などは無いでしょうか。今一度、ご確認ください」


「……かしこまりました。特に問題なければ、幸いです」


「本日もお仕事、いってらっしゃいませ」


(玄関を閉める音)


「……マスターのお見送り、完了いたしました。引き続き、洗濯、掃除、家事業務に従事じゅうじします」


「――ミッション、スタート――」



(時間経過。夕方になり、玄関の扉がガチャッと開く)

(ほぼ同時に、アンドロイドが出迎える。淡々とした口調で)


「お帰りなさいませ、マスター。本日もお仕事、お疲れ様でした。予定されていた帰宅時間より遅かったようですが、残業でしたでしょうか」


「お風呂とお食事、どちらを準備いたしましょう。ワタシの行動を、選択してください」


「……今日は疲れているから、もう寝る、ですか? しかし、栄養の摂取に不足を検知けんちしました。本日は昼食も、摂取しておられないようですが」


「……いいえ、ワタシはマスターの生活をサポートする、アンドロイド。マスターの意思・行動に意見する権限けんげんゆうしておりません」


「かしこまりました。今後の日常生活をつうじ、サポートできるように致します」


「おやすみなさい、マスター。今日も一日、お疲れ様でした――」


(扉を閉める音。時間経過)


(ピッ、ピッ、ピッ、と規則的なシステム音と、アンドロイドの独白)


「……マスターの生活スケジュールに、修正、変更……食事による栄養バランスを重視。強いストレスを感知かんち、神経系に悪影響を及ぼす可能性アリ。休暇きゅうか推奨すいしょう


「バイタル値、引き続き低下傾向……現状、問題視するほどではないが、将来的に重篤化じゅうとくかする可能性も……」


(ビ、ビビッ、と小さいながら異常な電子音が混ざる)


「ワタシの機能では、及ばない可能性が高く、場合によっては、医師による専門的な診断も……現状の生活が、続けば……マスターの、生命活動に、支障ししょう、が……ッ!」


(ガガッ、ガガガガ、と明らかに異常な電子音)


「え……エラー、エラー発生……システムの一部、強制シャットアウト。言語機能、行動機構、シャット……強制終了、できません。再起動、失敗。エラー、Error、えらー、あ、ア、ああアアア」


(ピーーーッ、と長い電子音。直後、バツンッ、とブレーカーが落ちるような音)

(少し間を置いて)


(アンドロイドの声に、感情がこもる)


「……へっ?」


「え……あれ、ワタシ……そうだ、エラーが起きちゃって、それで……ど、どうなっちゃったんだろ、怖い……へ? ……怖い、怖い?」


「これってまさか、感情? アンドロイドなのに……感情が、あるなんて」


「そんな。まさか。ワタシ……ワタシ」


(ガガッ、と異常な電子音が鳴り、直後)




「ワタシ―――バグっちゃってる~~~~~っ!?」

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