第2章: 秩序との対立

時の城で静かに時間を見守っていたエルドリスは、彼の領地に迫りつつある新たな脅威の影を感じていた。遠くの地で活動を広げるメカニクスと呼ばれる種族――冷酷で感情を排除し、完璧な秩序を追い求める機械的な存在たちだった。彼らは、自由や感情を「不必要な混乱」と見なし、それを徹底的に排除する使命を帯びていた。


「エルドリス様、大変です! メカニクスの軍勢が我が領地に向かっているとの報告が入りました!」


慌てた様子で飛び込んできた使者が告げた。エルドリスは静かに立ち上がり、時の城の高台から遠くを見渡した。灰色の雲が空を覆い、彼の領地に冷たい風が吹き始めていた。遠くに、規則正しく整列し、無感情に進軍するメカニクスの軍勢の影がぼんやりと見えていた。


「ついに動き出したか……。」エルドリスは静かに呟いた。


メカニクスのリーダー、オルガスは、完全な秩序を具現化した存在だった。冷酷で、感情を一切持たない機械の如き存在。彼にとって、混沌や自由、感情といった概念は無価値であり、ただ完璧な規律と秩序こそが世界を支配すべきだと考えていた。


オルガスは、無限に正確な計算と効率的な思考に基づいて動いており、すでにエルドリスの領地が「混乱の温床」とみなされていた。彼の計画は単純明快だった。すべての感情を排除し、秩序の名のもとにすべてを規律で統一する。


「自由や感情に価値はない。完璧な秩序こそが唯一の道だ」と、オルガスは冷たく宣告した。



エルドリスは、オルガスの動機を理解しながらも、彼の方法がもたらす結末に深い危機感を覚えていた。秩序が絶対化される世界では、自由も創造性も存在しない。個々の意思や感情が抑圧される未来は、世界そのものが停滞し、やがて滅びに向かうだろうと彼は考えていた。


「秩序だけでは、世界は成り立たない。混乱と感情もまた、世界を動かす力だ。私はそのバランスを守らなければならない。」


エルドリスは、冷静に作戦を考え始めた。彼の力は、圧倒的な破壊や暴力ではなく、知恵と未来を見通す能力だった。過去から学び、未来を見通し、最も効果的な行動を選ぶことで、彼は戦わずして多くの危機を回避してきた。


しかし、今回は直接対決を避けられないと感じていた。オルガス率いるメカニクス軍は、冷徹な計算のもとに圧倒的な秩序を押し付けてくる。感情に訴えることが通じない相手に対し、エルドリスは知恵と戦略で戦うしかなかった。



エルドリスは、まず自らの能力で時間を探り、未来の可能性を見通した。**「クロノ・リフレクト」**の力を使い、何度も異なる未来をシミュレーションした結果、彼は一つの結論にたどり着いた。


「正面から彼らを迎え撃つのではない。時間と状況を操り、彼らの行動を無力化することが必要だ。」


彼は領地の各地にある自然の要素を使い、メカニクスの冷徹な進軍を遅らせる策を講じた。水が豊富な地域には堰を作り、洪水を引き起こす準備をし、森には煙を放ち、視界を遮るためのトラップを仕掛けた。エルドリスは自ら前線に立つことなく、知恵と時間を駆使して、相手をジリジリと追い詰めていった。


そして、戦闘の最中に**「エモーティア」**の魔法を発動し、メカニクスに従わされていた者たちの心を解放した。彼らは冷徹な機械の支配から解放され、再び自分たちの感情と自由を取り戻した。


「秩序だけでは、生命は存在しない。混乱こそが進化の源だ。」エルドリスは、メカニクスの軍に対して、冷静に言葉を放った。



しかし、オルガスは冷徹だった。彼の目にはエルドリスの策略も無意味に映っていた。彼は感情を持たず、すべての障害を排除するべく機械的に動き続けた。


「すべての混沌は、秩序に従う運命にある」とオルガスは言い放った。「お前の知恵も感情も、私には無意味だ。」


オルガスは、メカニクスの絶対的な規律をもって次々にエルドリスの策を無効化し、さらに冷酷な攻撃を仕掛け始めた。感情を持たないオルガスにとって、エルドリスの知恵や感情は「非合理的な要素」でしかなかった。


エルドリスはその冷徹な行動に対して、新たな作戦を練る必要があることを理解した。

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