23 神様は宴を好む
大騒ぎの初日は、予定調和と大小さまざまなイレギュラーとをくぐり抜けて、ひとまず無事に終了した。ただ、どの生徒も、文化祭の本番は明日、外部から人がやって来る日だと思っている。今日はまあ、前哨戦といったところか。
2年4組では、今日のホストキャバクラに参加した生徒たちが、大急ぎで記念撮影を済ませてしまった。明日は店のシフトに入らない生徒もいるからだ。その後のホームルームには、仮装を解いて制服で参加しなくてはならない。
彼らの教室は店なので、机や椅子をセッティングしてしまっているため、それらを極力動かさないよう、床に座ってホームルームに出席する。教室企画にもクラスステージにも参加しなかった
一方、2年1組でもホームルームが終わり、
外はやっぱり暗い。同級生数人と「では」などと声を交わし、歩道を歩いた。空腹だ。ひとりでハンバーガーショップに入っても仕方がなかろうから、帰ることにする。道すがら書店の前を通りかかったので、ふらっと中へ入り、日本史の書籍と「お茶漬け恋模様」なる小説の文庫本を購入する。大通りを外れ、細い道を進むごとに、明かりの数が減っていく。
ひらけた農耕地が道の片側に広がるところへ出て、おや、と江平は思った。道の先、
となると……。
近づいていくと、わはははと、老年と壮年の男性が笑い合う声が響いてきた。思った通り、近所の男性ら数人が、父と道端で談笑している。
「弓弦くん、今帰りか、おつかれさん」
「どうも。ただいま」
ご近所と父に軽くあいさつしてその場を離れ、江平は離れ屋へ戻った。立ち話するにはあまりにも空腹だったのだ。いつものように夕食と入浴のために
――あのぶんだと、夜中に照明を消すまで、また一杯飲むやもしれぬな。
日本といいギリシャといい北欧神話といい、多神教の神々というのは酒飲んで盛り上がるのが好きらしいと、江平は思った。一神教よりも、どことなく人間くさいエピソードが多いように思える。などと、どうでもいい分析をしながら、江平は母屋の玄関を開けた。この夜はフクの姿を見かけなかった。二晩続けての騒々しさに、
彼方の市街地の方角から、障害物のない農耕地をわたって、救急車のサイレンが、かすかに届いた。
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