異世界でテイマーになりたい
Rapu
第1章
第1話 プロローグ
ある日の未明、30年以内に必ず起きると言われていた大地震が発生した。
――震源地は○△県沖――
太平洋側で最大震度7~6強の地震が起き、沿岸部では10mを超える津波が来るだろうと予想されていたが、その通りになった。
あちこちで、がけ崩れや地滑りが起きて多くの住宅が倒壊し、半倒壊した建物も多く、そこへ津波が押し寄せ、海の近くにある町は壊滅状態になる。内陸部でも、3m以上の津波が来た地域がある。
最悪、32万人以上の死者が出ると予想されていたが、被害の状況はまだ分かっていない。
~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~
『そろそろ起きてください』
誰かに話し掛けられて目が覚めた――優しい声……女の人? えっと、誰?
目を開けると、少し薄暗い場所で……周りには多くの人がいる。ここは……どこ?
正面の奥から光が……見ると、大きな縦長の光がキラキラと輝いていて、その周りに……沢山の人がみんな光を見ている。
10代後半から30歳くらいの男女が、数え切れない……数百人はいるみたいだけど、みんな静かに前の光を見ている。
――アラフォーど真ん中の私が1番年上かな。それにしても、何で私はここにいるの……?
『先程、日本で起きた地震で多くの方が亡くなりました。そして皆さんは、亡くなられた方の中から、精神と肉体の状態を見て選ばれた方々です』
光から声が……違う、頭の中で聞こえた?
……地震? そうだ……私、ベッドで寝ていたのよ。そしたら、ガタガタと大きく揺れて、逃げないと……って思って……。
……私、死んだの?
住んでいたのが団地の3階だったから、地震が来ても津波は大丈夫だと思っていたんだけど、築年数が古いから耐震が……不安だったのよ。
私……建物に押しつぶされたの? うわ、痛そう……覚えて無くてよかった。記憶があったらトラウマになるね……。
『今から皆さんに、この後、
"えっ、今、異世界って……" あれ、声が出ない。
周りがザワザワした感じになったけど誰も声を上げない。みんなも声が出ないんだ。あぁ、数百人が一斉に声を出したら
『私が管理する世界で、
――私が管理する世界って……この声の人は神様ってこと?
えー! 暇つぶしに無料のWeb小説やマンガはあれこれ読んでいたけど、異世界転移って本当にあるの? 神様も……いるんだ。
『過去にも、日本人を転移しましたが、記憶を持ったまま異世界に転移して貰うのは、魔物を倒して貰う為です』
――へえ~、過去にも……。この神様は
声の主……神様は、記憶がある方が向こうでの生活がしやすいけど、向き不向きがあるので強制はしない。武器を持つのが苦手な人には、魔法や魔物をテイムして戦うことも出来ると言う。
――魔法がある世界なのね。えっ、魔物をテイム!? 私が1番憧れるやつじゃない!
『異世界に行っても、ある程度は生活しやすいように配慮しますが、選んだ後は自己責任です。今から皆さんに、輪廻の輪に戻るか転移するかを選んでもらいます』
――自分で選ばせてくれるのね。
『異世界への転移を了承する方はそのままで、輪廻の輪に戻りたいと思った方は、こちらの扉の中に入ってください。輪廻の輪へと
声が聞こえたと同時に光の右側に大きな扉が現れ、ギイッーと音を立てて扉が開いた。扉の奥は真っ黒い空間が見える。
――輪廻の輪って本当にあるのね。でも、あの扉の奥に行くのも怖いんだけど……。
生活しやすいように配慮するって言うけど、異世界で生きるなんて簡単じゃないと思う。日本で引っ越しするだけでも大変なのに……。
でも……テイマーになれるのよね? テイマーは……魅力的過ぎる。
住んでいた団地ではペットは飼えなかったのよ。まぁ、ペットが飼えるマンションに引っ越したとしても、自分の収入では飼えなかったと思う。だって、ペット可のマンションは家賃が高いからね。
そんなことを考えていたら、1人の男の人がビクビクしながら扉に向かい、扉の向こうに進むとスッと姿が消えた。
それを見て、扉へと向かう人がどんどん増えていく……みんな
どうしよう……異世界に行って死んだら、普通に輪廻に戻るのよね?
『後10分で扉は閉まります。残った方は、異世界転移に同意したと
そんなこと言われたら焦る……。う~ん、アラフォーのおばちゃんだけどテイマーは憧れるのよね……。
異世界で、魔物を倒しながらのんびりスローライフって出来るの? でも、どの小説を読んでもドタバタが多くて……あぁ、小説だから当たり前か。
ん~、今まで頑張って来たから寄り道してもいいかな? こんな機会はもうないだろうし……うん、残ろう。
それから少しして、時間が来たのか輪廻へ戻る扉がバタンと閉まった。
見渡したら、残った人は2,4,6……30人くらい? えっ、少ないね。もっと残ると思っていたけど、女性は私を入れて5人しかいない。
まぁ、異世界で生活するなんて不安でしかない。私も"テイム"って言葉を聞かなければ、悩まずに扉の向こうを選んだと思う。
『皆さん、残って頂いてありがとうございます。これから異世界へ転移するにあたって、知っていて欲しい事を説明します――』
先ず、私達の体は生前の肉体で、怪我や破損した部分を個人の細胞を使って再生し、魔素の多い異世界で生活出来る体に作り直したと言う。
『個人差はありますが、肉体は怪我の程度によって実年齢より5歳から10歳程……若返っています』
えっ、5歳も若くなっているの? 自分の手を見たら、えっ……手の
ん~、頬を触っただけじゃあ分からないから、鏡を見たい……ふふ。
みんなも自分の手足を見ていて……中には、私みたいに自分の手を見て驚いている髪の長いお姉さんがいる――分かるよ~、その気持ち!
『先ずは、ステータス画面を開いて自分の能力を確認してください――』
ステータス画面を開くには、お決まりの言葉を考えるだけでいいらしい。それにしても、神様なのに丁寧に説明してくれるのね。
――ステータス・オープン。
――――――――――――――――――
名前 アスカ(明日香)
経験値 0(魔物を倒したら貰える)
HP 26/26
MP 26/26
攻撃力 F (低い:成人の平均的な能力より低い)
防御力 E (普通:成人の平均的な能力)
精神力 B (上級)
スキルポイント50P(基本30P+人生経験値20P)
【獲得可能スキル】
スキル
・生活魔法(生活に必要な小さな魔法。個人差あり)
・異世界言語(異世界の国々の言葉が理解できて話せる)
【インベントリ(時間停止付き)】(初期10マス×各10。拡張できる)
【アイテム購入】(日本と異世界のアイテム・スキルポイントを経験値で買える)
―――――――――――――――――
直ぐ目の前に半透明の画面が出て来た。
どこかで見たようなステータス画面ね――でも、名前だけで苗字がない……あれ? レベルもないな。
若い頃、ゲームをやったことがあるから、ステータスの見方って少しは分かるけど、説明が書かれていて親切ね。
ん? スキルポイントの横にある説明……人生経験値って、年を取っているから神様がハンデをくれたの?
『皆さんには魔物を倒してもらう為に、ポイントでスキルを覚えられるようにしています』
えっ、ポイントでスキルを覚えるの? まるでゲームね。
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