灰色の街

星見守灯也

第1話、fomeus

 日が沈んだのを確認してから、アクシオンは外に出た。


 この肌に触れる青玉を昇華させたような風は、アクシオンの気を静めてくれる。

 息は白く立ち上り、天鵞絨びろうどの天へ返る。自分が天のために何かをしている気がした。


 今この自分が存在している場所からは、大きな煙突が見える。ただ黙々と白煙を上げ続けているそれは、たぶん何かを燃やしているのだ。

 昔、親があそこで燃された。

 それは、多分に悲しいことなのだろう。恐ろしいことなのだろう。

 そんなことは僕には難しすぎて分からないけれど、今日のそれは奇妙にも神聖に思えた。 高く高く、とても自分など手の届かない所に居るであろう神に捧げているものだ。


あれは何か。ただの煙であるはずがない。その動きは意志を持ち、空を覆っていく。

 手の内の熱はすぐに消え去る。あの煙の元々も、こうして熱が消えていったのだろうか。


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