第17話 

「熱に弱い…だと?」

「あぁ、さっきのロケット砲、ダメージが入っていたが、それはロケット砲の威力じゃない。

ロケット砲が爆発した温度によるものだ」


「ということは…大砲で撃退できたのは…!」

「おそらく火砲の熱量だな」


そう、ケルベロスの装甲は物理攻撃に対する異常なまでの防御力を誇る代わりに、強い熱量に弱かったのだ。


さっきからこっちに来なかったのも、大砲が準備されているのを察知したからだろう。

…だが残念だったな。

ここなら大砲も射程内だ。


これは絶好のチャンスだ。

俺はフェニックに連絡し、大砲を発射してもらうように頼む。


「フェニック、大砲を撃てるか?」

「あぁ、いつでもいけるぞ」


「よし、ケルベロスにぶち込んでくれ!」

「え?急にどうしたんだ?」


「ケルベロスの弱点が分かった!アイツは熱に弱い!そこで火砲が必要だ!」


「熱に弱い!?…そうか、そんな弱点があったのか。だから鉱山の方には逃げなかったのか…。分かった、発射するぞ。全員ケルベロスから離れろ!」


攻撃隊全員がケルベロスから距離を取ったのを確認し、何発もの大砲が発射された。


ドォォォォン!


「ウォォ、ウォォォン!」

ケルベロスに直撃した大砲は爆発し、全身の装甲がどんどん溶けていく。

すっかり装甲は溶け落ち、今ではドロドロになった金属を被った犬である。

最早、丸裸状態だな。


「よし、行くか!」

俺は再度剣に炎を纏わせ、火力を上げる。

最高の一撃をお見舞いしてやろう。

そして、ケルベロスの眼前に突っ込む。


「食らえ!ケルベロス!」

「ヴォォォォォン!」


剣を振り下ろし、勢いよく斬りつける。

ケルベロスの全身から炎が燃え上がる。

防御力のなくなったケルベロスは黒焦げになり、倒れ伏した。


「意外とあっけなかったな」

イフリートに比べるとあっさり倒せたな。

でも、弱点を見つけられなかったら相当悪戦苦闘してただろうな。


「うぉぉぉ!やったぞぉ!」

「ケルベロスを倒した!」

「すごいぞリエス!」


ケルベロスを倒した俺に称賛の声が上がる。

毎回、俺がおいしいとこ持っていってるような気がするな。


「リエス、私たちのタマリンドを救ってくれてありがとう。君は私の恩人だ」

「気にするな、レオ。俺は俺の目的を果たしただけだ」


すると、無線に連絡が入った。

「リエス、ありがとう。パーヴォの仇を討ってくれたこと、感謝する」


相変わらずクールな話し方だが、フェニックからは確かな感謝と悲願達成の思いが感じられた。


―――――――――――――――――――――


「リエス、君には本当に感謝している!お礼と言ってはなんだが、受け取ってくれ」

そう言ってレオは、金貨10枚を渡してきた。


翌日、レオがケルベロス討伐に協力してくれたお礼がしたいと言うので、俺は市役所にやってきたのだ。


「いいのか?こんな大金?」

「気にすることはない。むしろもっとあげたいくらいだが私の財布から出しているのでね。これで我慢してくれ」


「そうか、ではありがたくもらっておくぞ」

俺は金貨10枚をもらった。


「ところでこれからどうする?」

「また旅に出る。機構魔獣を全滅させることが俺の目的だからな」

そして、俺が部屋から出ようとした時…。


「お待ち下さい。リエスさん」

「どうした?アンドロ」

突然、アンドロから呼び止められた。


「その機構魔獣による被害記録、少し古い物ですよね」

「あぁ、確かにな。最後の記録は2年前のものになってるな」


「こちらが最新版のものです。良かったら差し上げます」

「そうか、わざわざすまないな。じゃあ俺はこれで。少しの間だったが世話になったな」

俺は市役所を後にした。


さて次は…

フェニックにも別れを告げないとな。

俺は工場に向かうことにした。


―――――――――――――――――――――


「フェニック、いるか?」

「リエス、どうしたんだ急に?」


「そろそろタマリンドを出ることにする。別れは言っておきたくてな」

「そうか…」

俺がこう言うと、フェニックは寂しそうな顔をした。


「安心しろ、お前は親友の頼みを果たしたんだからな。悲願達成だろ」

「それなんだが…最後に一つ頼んでいいか?」

「なんだ?」


すると、フェニックは真剣な顔をして言った。

「俺と友達になってくれ!」


「…友達?」

「俺、パーヴォがいなくなってから、友達がいなくてずっと寂しかったんだ」

なんだ、そんなことか。


「俺たちは仲間だろ?仲間なんだからもう友達になったようなもんだ」

「リエス…!」


「それじゃ、またな」

「もう行くのか?」


「安心しろ、俺たちは離れていても友達だ。友達に距離なんて関係ない」

「そうか…またここに戻ってきてくれるか?」


「あぁ、いつかきっと。それまで待っててくれ」

「あぁ、いつまでも待ってる」


俺はフェニックに別れを告げ、ウリエルに乗って飛び立った。






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