幻灯記

秋風のシャア

七神の泉

ある所にそれそれは綺麗な泉があった。その泉は七色に輝いており、七神の泉と呼ばれ、そこら一帯にはドワーフやエルフ、そこにしかいない希少種まで多種多様な生態系が築かれ、外と独立した世界となっていた。彼らは互いに交流なども盛んに行い一定の安寧が保たれていた。


「七色の泉の地、ここは神秘の地よー7つの守り神が、この地を収めて居るのよ。」

白、水色、紺と様々な色のドレスを身に纏った

小さな妖精達が川の畔を飛び回りながら歌と楽器で美しい音色を奏でている。それはそれは、可憐な顔をした少女達による演奏だ。妖精族は従来、不老長寿。つまり容姿はその生を得た段階で決まる。なのでどこを見ても10cm程の可愛らしい子供の容姿をしているのだが年齢は、想像に任せるとして、可愛いの事実。今もまさに健気に背中の羽を使い宙を舞い、これまた小さなギター、ピアノなど多種多様な機材を使い美しい音色を奏でている。この神秘的な光景は多くの生き物を惹きつけ、不思議と愉快な気持ちにさせてくれる。


木造の小屋の中では子供達が授業を受けており、農村ではドワーフのお婆さん、お爺さんが田畑を耕している。自然溢れるこの地ではゆったりと時間が流れる。


そんなのんびりとしたこの地には大きな木のがある。幹が太くそれはそれは立派な木。その木に備え付けてある階段を

登った先のデッキからは色鮮やかな景色を一望できるのだが、これまた赤、オレンジ、紫と紅葉のように色鮮やかなコントラストの草木や古き情緒ある街並みがたたずむ世界を拝むことができる。その中でも一際目につくのが東西南北に流れている川。この地の名所と言って差し支えない。そうこれが七色に輝く泉。七神の泉である。そして、その泉に因んでこの地を七神の泉のある地、ゴットレインと古来の者(いにしえの住人)達によって名付けられた。

その名の由来は

大昔に魔神がこの泉を狙い襲来した際に戦いの中心になったドワーフ、エルフ、クルムクルト族、グリフォン、オルドス、ゴーレム、ブルーノブルーの七種族だったことに由来しており、銅像が泉の中心部に置かれている。そして、泉の中には青年と少女の銅像が建てられている。


この世界では10歳を迎えるとエルフの統治する東門を通り七神の泉から東に10km離れた所にあるカムダムラの湖に行く習わしがある。その湖は女神が住まい、祈りを捧げると天能を授けてくれる何とも神秘的で謎めいた場所である。天能は誰一人被ることは無く、例え似ていても少し違いが存在している。天能はそのももの人生、願いを反映しその想いが反映される。また、不思議なことに親が死んだ場合、その能力は行き場を失い子供に引き継がれるという何とも遺伝の仕組みを逸脱した現象が起きる。まぁ、能力そのものが遺伝の仕組みを逸脱しているという見方もできるが、それはさておき多くの者はその現象をこう言う。継ぐ物語と。だから継がれた分だけ子は能力を持てるというわけだ。

能力は10歳からずっとその者と共に歩み、能力者が死んだとしても死と共に消え去るのではなく次の物語を探し子に移る。それはまるで寄生虫の様。天能は幾千の者の記憶を宿し宿主はそれ共に人生を生きるシステム。それこそがこの名の由来だ。そういう訳でこの地域の人々は何らかの能力を皆持っているという訳だ。結婚しなかったらどうなるかって?それは宿主に宿ったままさ。宿主と共に深い眠りにつく。永遠に。


だが、例外はあった。人生をかけ大人になった後に天能を授かった人物。これは世界を変えた者達のお話。これは愛の物語。これは奇跡の物語。



手記によるとこう記されている。

遥か昔出で立ちの王現る。王は悪魔と契約を結び、安寧を保ってきたと。

そして、幾度に継ぎ足された契約により液体は満ち溢れるだそうとしていたと。


黄金の階段を登った先に構える荘厳とした王の部屋には瞳を揺らす王と諭す黒服に身を包んだ何かがいた。

「私が…王である。」

「そうだ、ユリアスよ。君が王だとも。」

椅子に座り震える王の背後に手を伸ばし耳打ちする黒のコードを来た者。声は低く、エコーがかかっている。


「もういいじゃないか。なにも気にする事はない。」

「さぁ、破るんだ。」

王は震える手で紙をとる。


そこには契約が書かれていた。

「さぁ」

「あぁ。わかっている」

ビリ

王が紙を破ると破ると同時、微笑む黒服。

破れた紙から墨汁が重力を無視して空中に浮かび、描かれる線。黒はたちまち色を持ちスピログラフのように何十いや何千もの円が描かれる。それは光り輝く球体となる。

脈絡と紡がれし約定を来たる時またずし放棄した時、封印が解け、嵐が吹き荒れる。


陸を歩くものは大地の腐敗を。海を渡るものは赤く染まった海を眼にする。


そして、この世界の均衡も崩れ外れようとしていた。

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