アカシアと運命と自殺と
祭煙禍 薬
「久しぶり」
海の前,
崖の前
誰もいない場所
孤独な場所。
ここで命を絶つ
身を投げる。
ふと,微かに笑い声が聞こえる。
諦めと虚無を交えた.嘲笑。
前を見ると死神がいた。
タダなんとなくそう思うのだ
崖の目の前の空間,空中に。
長い外套に黒白装束。
儚げで美しい容姿。
見た瞬間に死神にと悟る。
こちらを見るだけだ。
見守るだけだ。こちらに対する感情など
ありはしない。
お前も私の死を望んでいるのか。
迎えに来たのか。
理も人も。
何もかもが俺を嫌っている。
趣味すらも。
価値がないと言っている。
「あ”ぁ”さよなら」
死神に手を振る。
死神は何も発さない。
ただこちらを見ようと目を落とした。
海に落ちる。
背中が痛い。
冷たい。
骨が折れた。
水がずっしり。服に沁み込み
重くなる。
私は泳げない。
嫌,この状況
プロでも厳しいか。
犬かきでは.
”溺れる”
口から水が入り
肺を侵していく
肺が 痛い。
喉が 痛い。
こんなに苦しいか
即死じゃないのか。
高い崖を選んだはず。
やっと意識が薄れる。
これから石積みか。
そして俺は死んだ。
目を開けると、
また崖の上に居た。
まるで時間が戻ったように。
相変わらず死神は宙に立ちこちらを見ている。
前と違うのは本を持っている事くらいか。
俺はたしかに死んだはず。
「何かしたのか?死神。」
「全てはアカシアの通りに。」
アカシア?持っている本と関係有るのか?
昔どこかで聞いたことがある。
全ての生命の死を記録,予知する。
死者の本アカシックレコードを
アカシアとは…
「何故俺は死ねない?」
「表情が苦いですよ?それが運命必然だからです。」
「はぁ?そりゃそうだろ素が笑顔の自殺志願者なんか居ないっ
生きていけないから死ぬんだ。」
「貴方は幸せな最期を迎える。今は死ぬ時では無い。」
「はぁそんなの関係ない。俺は死ぬ。苦しみから解放されるため~…」
「あんなに苦しそうだったのにそれをもう一度?嗤えますね。」
「・・・」
言い返せない。
「もう一度試してもいいですけど運命には逆らえません。」
「はあ。。」
「殊に自殺は不可能ですね。」
「えぇっ?まじかよ。」
「そういったものです。」
「節度を持って枠に囚われず幸せに生きる事ですね」
「ふざけんじゃねえ。」
「貴方はその時まで死ねず生きるのですから。」
そう言うと死神は消えていった。
何だったんだ一体。
俺は死ねないのか…
崖に背を向け歩き出す。家に帰ろう。
どっと疲れたまだ地獄は続くのか。
今夜,散財しまくろう。
*****
そして僕は死んだ。
死にたいと思っていたけど
あの日家に帰ると親に叱られた
曰く「親より先に死ぬことは最大の親不孝らしい。」
普通より劣ってきた人生だったが満足だ。
幸せな人生死に方。
運命で縛るアカシアは
俺が思うよりもいい物なのかもしれない。
あの時は恨んだよ死神。
でも今は言える。
「ありがとう。」
「おや,貴方ですか?■■ですね」
「あぁ,■■」
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