EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)55

クライングフリーマン

みゆきの恋

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。現在は休暇中。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

 本郷弥生・・・EITO大阪支部、後方支援メンバー。

 大前(白井)紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

 神代チエ・・・京都府警の警視。京都府警からのEITO出向。『暴れん坊小町』の異名を持つが、総子には、忠誠を誓った。

 芦屋一美(ひとみ)警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。アパートに住んでいる。

 用賀(芦屋)二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。オスプレイやホバーバイクを運転することもある。後方支援メンバー。総子の上の階に住んでいたが、用賀と結婚して転居した。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋グループ総帥。EITO大株主。芦屋三姉妹の長女で、総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。芦屋三姉妹と総子は昔。ご近所さんだった。


 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

 佐々一郎・・・元曽根崎署刑事。横山と同期。大阪府警テロ対策室勤務。通称佐々ヤン

 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

 用賀哲夫空自二曹・・・空自のパイロット。EITO大阪支部への出向が決まった。二美の元カレだったが、二美と結婚した。

 中込邦子・・・みゆきの母。スーパー銭湯を経営している。

 合田義昭・・・みゆきの家の元隣人で幼なじみ。ロックバンドの元タイフーンのメンバー。麻薬所持で逮捕された。


 =====================================

 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


 午前9時。EITO大阪支部。会議室。

 マルチディスプレイに小柳警視正が映っている。

「結論から言おう。どうやら、大前君がファンだった小谷は、本物のワルじゃなかったらしい。停戦以外に白旗用意するなんて、珍しいな、とは思っていたが。三人の『枝』、和久井エミリー、山中智子、柴田瑠璃子だが、KK木更津商会に借金していたことは事実で、それをネタに組織に引きずり込んだのは、小谷じゃない。脅迫するメールが届いたらしい。それに、小谷は誰かに相談の上、作戦を実行していたらしい。」

「じゃ、小谷は幹じゃなかったと?」「「いや、表の幹、だな。ラスボスと言うより、先輩幹かも知れない。3人は、そんな口のききかただったと言っている。渋谷区、江東区、足立区での強盗殺人放火事件は、確かに彼女達が関与しているが、強盗殺人は認めていない。詰まり、誰かが強盗殺人をして、放火で彼女達に後始末させたと推測出来る。」

「じゃ、先輩幹が強盗殺人をしたか、他の人間またはグループにさせたということですか。」

「うむ。小谷からは、『がん促進剤』の片鱗は確認出来なかった。肉片がない状態だからな。だが、3件の放火事件では、消防、MAITO、エマージェンシーガールズの懸命な消火活動・避難活動をしたお陰で、遺体は全焼していない。そこで、蛭田教授の提案で、療養中の宮田先生に探査して貰った。殺された高齢者達は、3.0のワクチンを接種した形跡があり、尚且つ、スクランブル高校の高校生が給食に仕込まれた『異物』が胃の内容物から検出された。それは、蛭田教授が言う毒、免疫低下剤だ。」

「待って下さい。じゃ、殺された高齢者達は『高齢者治験』、高校生達は『若者治験』を行ったということですか。『先輩幹』の指示で。ワクチンと薬のセットは、高齢者には致命的で、若者は下痢、ですか。」

「そうなるな。被疑者の容疑は、強盗殺人事件を除いて放火事件の容疑で立件起訴ということになった。名前はまだ分からないが、今度の『幹』は、『先輩幹』かも知れないな。また、何か判明したら連絡する。」

「ウチも行きたかったナア。」と、小町はぼやいた。

 小町と大前は、度重なる小町の乱暴で小柳警視正に呼び出しを食らっていた。

「今度、合同の時は、一緒に行こ。それでエエヤンな、兄ちゃん。」

 総子は、小町をなだめつつ、大前に縋った。

「お前も成長したな。それで、どうやった、小谷せん・・・小谷の最後は。」

 総子は、見たままを大前と小町に告げた。

「可哀想にな。理事官の言うとおり、小谷は、また利用されたんやな。せめて・・・。」

 大前は、手を合わせ、黙祷した。総子も小町も習って黙祷した。

 EITOエンジェルズが出勤してきた。状況を察して、皆も黙祷を捧げた。

 黙祷が終ると、大前は、理事官の連絡の要点を皆に伝えた。

「許せん奴は、『先輩幹』やな。」と、ジュンが言った。

「その時の、こちらの状況次第やが、また応援要請があったら、皆、覚悟して臨んでくれ。報告書がまだの者は、今日中に出してくれ。松本さんが来られるから、訓練する者は指導を受けてくれ。解散。」

「コマンダー。」「何や。あゆみ。」「足、くじいたみたいやけど、早引けしてええですか?」

「おお。はよ病院行って来い。戦士には『メンテナンス』も大事や。」

 午前11時半。藤沢病院。

「低血圧やな。点滴しとき。なんで、くじいた、って嘘ついたんや?大前さんは見抜いているぞ。ええ上司やな。彼氏、出来たんか?」という院長に、「そ、そんなん・・・。」と、みゆきは言ってしまった。

「総ちゃんに言いにくかったら、いつでも言うてな。」と、ワコがみゆきに言った。

「親子揃って、『イケズ』やな。」と、みゆきは顔を赤くした。

 午後1時。

 みゆきの母、邦子がやって来た。

「そやから、やめとき、って言うたのに。レディースなんか入って、将来絶望やなあて思ってたら、大前さんが更生したのを確認したから、グループ丸ごとEITOで預からせてくれ、って頭下げて頼みはったから・・・。」

「お母ちゃん、点滴は、栄養剤や。」「え?」

「寝不足。任務で遅いときもNewTube見てたから。」

「なるほどな。これ、落してたぜ。」と、言って用賀が持って来たのは写真だった。

「なるほどなって、用賀さん・・・。」あゆみが言おうとすると、「野暮なことは言わない主義でね。二美に袋にされちまう。」

「用賀さん、二美さんとは、自衛隊で?」「ああ、相棒組む事が多くてな。今は戸籍も相棒。」

「その人、タイフーン10号だろ?」「知ってるの?」

「知り合いじゃない。たまたま雑誌を立ち読みしていたら、載ってた。10人組グループの10番目。でも、人気は1番。皆と意見が合わずに独立。よくある話だ。で、今度は事務所の圧力か、パパラッチが狙い始めた。何とかスキャンダルで、芸能界から追放しようと躍起だ。」

「その10号さんと付き合っているのか?って、最近煩いんです、用賀さん。ウチは戦スーパー銭湯です。予約は午後10時からです、って答えるんですけど。」

 邦子は、何度かEITOから送ってきてくれた用賀を覚えていた。

「誰が?」「週刊誌記者みたい。実はね、タイフーン10号こと合田瑞穂は、昔、ウチのお隣さんやったんです。それで、みゆきは、ファンになって。」

「追っかけできひんから、New Tubeばっかり観てて。」みゆきは、顔を赤らめた。

「しつこいようなら、警察に言った方がいいですよ。」

 翌日。合田は、警察に逮捕された。大麻所持で。

 午前9時。EITO大阪支部。会議室。

 みゆきは、欠勤届を電話してきた。

「用賀君から、事情は聞いてる。会えるかどうかは分からんぞ。佐々ヤンに進捗聞いておいてやる。多分、嵌められたんや。小谷みたいに。南部さんに、調べて貰うように言っておいた。今日は休め。出動かかっても、お前は呼ばんとく。」

 大前は、総子が見ているのを感じた。「兄ちゃん、成長したなあ。」

「お前の台詞ちゃうやろ。」「じゃあ、誰の台詞だ?」

 マルチディスプレイに、小柳警視正が映った。

「実は、タイフーンには、妙な噂が立っていて、マトリや公安がマークしていた。グループの誰かが、合田のマンションに持ち込んだのかも知れない。グループの半分は那珂国人だ。ルートがあってもおかしくはない。それと、メンバーの1人が行方不明だ。南港から消えた。関連しているとしたら、『テロ案件』と言えなくもない。調査の上、必要ならEITOの正式出動だな。」

 マルチディスプレイから、小柳が消えると、いつの間にか現れた小町が、アカンベエをしていた。

 もう慣れてしまったので、皆は黙殺している。

「兄ちゃん。合田のマンションの聞き込みと、南港の聞き込みやな。」

「流石、総ちゃんは呑み込みが早いな。」と、紀子がフォローした。

「よし。出動や。仮でも出動や。」と、大前は皆を送り出した。

「コマンダー。合田の資料、府警から届いています。それと、消えたメンバーの車両ナンバーも。」

「よっしゃ。ヘレン。車両ナンバーは、オスプレイに送ってくれ。」

「了解しました。」

 ヘレンは、元EITOエンジェルズメンバーだったが、芦屋三美の会社事務員を経て、EITO大阪支部の通信士をしている。ヘレンも成長したな、と大前は思った。

 午前11時。南港。スクラップ工場。

 用済みのクルマを乗り捨てることで有名な場所だったが、吉本知事は、府営のスクラップ工場を建てた。今は、勝手に工場内に捨てに来られない筈だが、やはり『俺が法律だ』の輩はいる。

 問題の車両はすぐに見つかった。

 EITOエンジェルズ姿の総子達は、府警に連絡した後、車内をざっと調べた。

「チーフ。これ見て下さい。」稽古が、トランクの中の予備タイヤに血痕があるのを見付けた。

「チーフ。男の4人組ですわ。夜中に運び込んでる、鉄条網切って。」と言ったのは、祐子だった。

 府営だけあって、吉本知事の指示は簡単に行き届く。知事はEITOに借りがあるから、融通を利かせてくれる。

 総子は防犯カメラを確認した後、府警から刑事が来たので、調査報告をし、後を託して、近所の聞き込みに回ることにした。

「了解。ちょっと聞くけど、暑くないの、その制服?」と、刑事が尋ねると、「気持ち次第、って言いたいとこやけど、今の制服、クーラーが内蔵。剪定とかしてるおっちゃんらが服冷やす扇風機付けてるでしょ、あれと同じようなもん。」

 気さくな今日子が言った。「へえ。」と、警察官達は感心した。

 スクラップ工場の近くのアパート等を聞き込みに回っていた小町から、総子のインカムに連絡が入った。

「チーフ。スクラップ工場に侵入した連中の目撃者が、他の廃工場に侵入したのも見た、って言ってます。」

 正午。

 総子が、ジュンや小町達のグループに合流して、廃工場を捜索していると、物置だったような場所から、遺体が出てきた。

 既に遺体は痛み始めている。

「ジュン。コマンダーに連絡。真子。さっきの刑事さん達、呼んで来て。」「了解。」

 午後2時。EITO大阪支部。会議室。

「廃工場で亡くなっていたのは、タイフーン3号こと伊丹敏夫。殺されて車はスクラップ工場に放棄された。海に放り込んでも、すぐに見つかる恐れがあるから、廃工場に運んだんやろ。正に『灯台下暗し』やな。」

「コマンダー。南部興信所の調べでは、その伊丹と、独立した合田は親しかったそうです。ひょっとしたら、伊丹殺しも合田のせいにする積もりやったのかも。」と、ぎんが発言した。

「うん。佐々ヤンの話では、伊丹との写真やら、伊丹の革ジャンやら出てきたらしい。ぎんの推理通りやろうな。」「推理やなんて・・・。」

「謙遜せんでもエエ。誇りに思え。タイフーンの仲間割れもあるやろうが、何かまだきな臭いな。」

「大前君の鼻も大したもんだな。謙遜しなくていい。誇りに思えばいい。」

 マルチディスプレイからの声に振り返ると、小柳警視正だった。

 小柳警視正が、小憎らしく大前のぎんに対する褒め言葉を流用したのを敏感に感じた小町は、画面を睨んだ。

 EITOエンジェルズは、そっとしておくことにしている。小柳と小町に何があったのか分からないが、『触らぬ神に祟りなし』だ。

「どういうことです?」「うん。タイフーンのメンバーの誰かだろう。タレコミがあった。KK木更津商会と以前業務提携、実は子会社だった、靱公園前カンパニーが反社と取引している、というものだ。すぐにガサ入れに向かった。恐らく麻薬の出所だな。那珂国人のメンバーを、改めて、事情聴取する為に、既に府警に『参考人』名目で呼び出してある。合田は、釈放だ。手続きに時間はかかるが、辛抱してくれ、みゆき隊員。夕方には会えるぞ、カレシに。」

 画面が消えると、「一言多いネン!」と、小町は毒づいた。

 病院から帰っていた、みゆきに大前は優しく言った。

「結婚式には、呼んでくれよ。」

 午後5時半。大阪府警前。

「合田の兄ちゃん。」みゆきが、母の邦子と迎えた。

「みゆき。もう、兄ちゃんとちゃうやろ。芸能界はもう止める。タイフーン10号は、みゆきだけのモンや。おばちゃん、おかあちゃんって呼んでもええかな?」

「いいとも!・・・あ、ええよ、義昭ちゃん。婿さんがお義母さんって呼ぶのは当たり前や。はよ『高島屋』聴かせて。」

 クルマの中から様子を見ていた総子は小町に、「あんたらは、いつ『高島屋』するん?茂原刑事から聞いてるで、許嫁のこと。」と尋ねた。

「チーフ、知ってたんですか?」

「うん、兄ちゃんが、コマンダーが皆に言ったで。『花嫁修行』の為にEITO大阪支部に来たって。」

「うそーん。イケズぅ。好かんタコ!!」小町は、涙目になった。

 総子は、イヤリングを弄った。このイヤリングは通信機でもある。

 EITOエンジェルズは皆、この会話を傍受していた。

 ―完―


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EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)55 クライングフリーマン @dansan01

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