第34話 障がい者と生活するために
「たっくん、病院行くよ」
「準備終わった?診察券持った?」
「持った、あまって受給券持ってない」
「どこにしまったの?」
「えーとたしかいつものとこに・・・あ、いた。おっけこれで忘れ物ない!」
「じゃあ行こ~!」
いつもの並びでバス停まで歩く。絶対に譲らないのは、たくみが真ん中で歩いていること。普通は男性が女性を守るために車道側を歩くけど、私と瀬奈が譲りたくなくてたくみを真ん中にして歩く構図になってしまった。
「たっくん病院終わったらご飯食べよ〜?」
「どこで食うんだよ」
「木更津」
「やっぱり」
たっくんが
「たっくん・・・今度2人でおでかけしよ」
「いいよ。瀬奈っち、あいちゃん頼んだ」
「任せて!」
「にしても愛央、オメーどうしたそんな深刻な顔して」
「えっ?別に・・・」
「あーじゃあお前2人で出かける時チアの格好で来いよ」
「うん」
バスが来るまで10分。バス停には椅子があって、たくみは絶対その椅子に座る。
「立ってるだけで疲れちまう」
「最近無理しすぎてるんじゃない?」
「あるなーほんとに」
「たっくんは頑張り屋さんだもんね〜♪そういうとこ大好き」
「ちゃっかり愛を伝えるなってんだお前はよ!バカか!」
そういうたくみでも、ちゃんと私のことは考えてくれているのが丸見え。だからこそ、妹としてちゃんと支えないといけない。
「えーと確か
「でもたっくんって、定期持ってるでしょ?」
「それがさー、珍しく俺定期切らしたんだよ」
「えっ珍しい・・・更新忘れ?」
「いや、定期の種別変更だから」
「そうなんだ」
「だから手帳の効力で半額乗車にするわけ」
「なるほどね」
君津駅、桜舞い散る、春の日か。たくみが詠んだこの句は、いま私たちの所属する会社の入り口に掲示されている。
「中央病院までどうやって行くんだっけ?」
「3番乗り場の
「法木作だったら三島線あるでしょ?」
「次が14時までないんだよ。だからここにきたの」
「そうなんだ・・・」
「まぁ木更津の駅から真舟団地にいくやつでもいいんだけどさ、めんどくさいからね」
「真舟はバスがないんだっけ?」
「三島に比べたらあるけどさ、八幡台循環線だから時間がかかるんだよね」
「ふ~ん」
バス車内で、たっくんは調べ物をしていた。横でじーっと見つめていると、たっくんは携帯を見せてきたの。
「これ、なに?」
「保険。ほら、万が一俺の身に何かあって愛央たちが遺族になったら不安じゃん。とりわけあんたは俺のことをほぼ溺愛といっても過言じゃないからさ。だから、俺の保険をかけておこうってこと」
「なるほどね・・・でもたっくんのような発達障害の人が保険に入ることってできるの?」
「それが問題。だけどこの保険なら入れるから大丈夫だべ」
保険の申し込みは父親であるパパにお願いしていたみたい。たっくんのことは、たっくん本人が知っているはず。だからこそ、たっくんは自分で頼んでいたみたい。
たっくんに必要なのは、普通の応援じゃない。必要なのは、周りの人たちが支えていることが大切だと思った。
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