セーブポイント設置人さん! 冒険者のためにセーブポイント設置の旅に出たけど、俺自身は死んだら一発アウト!?

白神天稀

プロローグ

「ついに、この日が訪れてしまったか」


「覚悟はできてます、族長!」


 ようやくこの日がやってきたな。


「リスよ、おぬしを……」



 この小さい村で育ってきて、いつかこの広い世界を冒険することが夢だった。

 自由気ままに、国々を渡り歩いて、たまに名声やお宝を手にする。寝床でいつも妄想してた憧れの生活だ。


 今日から俺、リス・フォルポンドの冒険者人生がようやく始まるんだ!



「『セーブポイント設置人』に任命する」


 そうセーブポイ――え?


「……へ?」


「聞こえなかったか? 『セーブポイント設置人』に任命する」


「……は、」



 はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!?????


 え、なっ、セーブポイント!!!?? 勇者とか魔物討伐の旅に出ろじゃなくて????



「すまんの、村の未来のためじゃ」


「まってまって村長まってよ、ねぇ村長?」


「黙れ穀潰し」


「急に辛辣!!」


「はぁ……聞くがよいリス。おぬしは若く、体も丈夫で、仕事もろくに就かない穀潰しじゃ」


「無職なのはごめんて」


「ぶっちゃけおぬし死んでも村存続的にノーリスクじゃし」


「命の価値は平等であれ!」



 昔から厳しかったけど、成人してから村長の当たりキツくなったよなぁ。

 まあ俺が働かず遊んでるのが原因だけど。


 そんなこと考えてると村長、なんか袋から取り出したな。水晶?

 あーセーブポイントか。旧式で百年くらい前のだけどまだ動くんだ。へー。


 ……ガキの頃に一個持ち出して山で失くしたやつだな。うん。



「このセーブポイントはな、万が一でも命を落とすような事態になったとしても、冒険者を旅の途中まで戻してくれる魔法のアイテムなのじゃ」


「それは知ってるけど! セーブポイントって昔のものなんでしょ!? 今は教会とか、民営の冒険ギルドや宿屋が契約セーブやってるってのに……」


「あ、なんか全部ストライキしとるらしいわ」


「働けやクソが! って俺が言えたことじゃねぇ!!」


「エルフの森で焼き畑したら王都中で抗議ストライキが流行っとるそうじゃ」


「エルフと火は混ぜんなってあれだけ……」



 いや、今はエルフとかどうでも良い。それより問題はこの仕事だ。



「というわけで、頼むわ」



 まったく村長のじいさんめ、面倒な仕事を任せやがる。


 とはいえ、期待に応えるってのも悪くはない。

 ここで仕事を終えて帰った暁には、英雄待遇とまではいかなくても祭りの一つでも……



「あ、ちなみに死んだら終わりじゃ」


「え?」


「ま、他の者がそうならんようセーブポイント設置するのがおぬしの役目じゃからの」


「は? ちょっ」


「死んだらドンマイじゃ。がんば」



『がんば』じゃねーよクソジジイ!!!!



 ……と、こうして俺は村を追い出された。

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