異世界ファンタジー【ショートストーリーズ】
なめがたしをみ
episode.1 くしゃみ五千回で異世界リセット!
拝啓、異世界の皆様、お元気でいらっしゃいますか?
僕がそちらの世界から現実世界に帰ってきてから、早いもので三か月が経ちました。
驚いたことに、五年間そちらの世界にいたはずなのに、現実世界では一秒も経っていないようです。僕が大きなくしゃみをした後、眩暈を起こして倒れた場所で意識を取り戻しました。
異世界に転生し、右も左もわからない僕に、温かいスープを入れてくれたエルフのおじさん。
お金を稼ぐ術を一から教えてくれたドワーフのおばちゃん。
剣技を伝授してくれた第二王子のフェリア。
どれだけ感謝しても伝えきれない思いが溢れかえっています。
ただ一つ心残りがあるとすれば、
まさかラスボスである暗黒帝王サゴンの直前に、僕が現実世界に戻ってきてしまったことです。
現実世界に戻る方法が『くしゃみを五千回する』だなんて、誰も予想できなかったと思います。
僕自身、いつも通りにくしゃみをしただけでした。
すると突然、眩暈に襲われ、今の現実世界にいるわけです。
確か、暗黒帝王サゴンは僕の取得した秘術ゼンラーゴーイヌを使わなければ魔法障壁を突破できず、傷一つ付けられないと言っていましたが、その後の状況はいかがでしょうか?
あのタイミングで倒さなければ、悪魔の大群が世界を覆いつくす流れだったと思われます。
まさか、僕のことを恨んでいる方がいらっしゃるのなら、これだけは言わせていただきたい。
僕だって被害者です。
だって、そうじゃないですか。何が悲しくて、異世界に飛ばされた一般人に世界の命運を任せるんですか。
やってることはパワハラですよ、パワハラです。
こちらはよそ者なわけですから、あなたたちに言われたことに「いいえ」とも言えないわけですよ。実際、何回か「そんなこと言わずにお願いできないか」と言いましたが、あなたたちは「そんなことは聞けない」と一方的に言っていましたよね。
正直、こちらの世界に戻れてほっとしています。
現実世界では最低限の命の保証もありますし、糞強い巨人にミンチにされたのに、蘇生魔法だか神聖魔法だかで激痛を伴いながら生き返らされることもありませんしね(しかも蘇生代金として高額請求されるし)。
まあ、色々書きましたが、僕は現実世界で元気にやっています。
これも、異世界での経験のおかげかなと思っています。
それでは皆様、もうお会いすることはないでしょうが、お元気でさようなら。
□
「帝王サゴン様、ポストにこんなものが」
「ほう……なるほど……くしゃみ五千回……おい、ヘルゴースト! 魔物を全員呼び寄せて、くしゃみを五千回させろ! 異世界をもわが手中に収めるぞ!!」
「ははっ!!!」
※次回より毎週金曜日18時最新話のショートストーリ更新※
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