私に推しカプが舞い降りた

不二丸 茅乃

もうこれしかない


 ※作品名やキャラクター名は伏せてますが伏せきれてません。もしお気付きになられても固有名詞は出されないようお願いします。


 ※男女CPに付いて書き殴っている話です。





 『それ』との出会いは既に二十年経っている、らしい。

 その頃の私はとても不品行な十代で、不良ではなかったが不登校ではあった。保健室で半年ほどを過ごしただろうか、元々学力の良い方ではない私の成績は更に下がることとなる。

 とは並べつつも本題はそこではない。私の通っている学校がいかに底辺だったかなど重要ではないのだ。


 私はそんな保健室登校している間に、他校の異性の先輩と関わる機会があった。

 その先輩はド聖人だったのだがオタク気質で、あちらには恋人がいたし私にとってはタイプ外だったので艶めいた話は一切ない事が前提として挙げておく。

 そんな先輩に悪い遊びを教えてもらったのだ。


 ゲーセンに行く という悪い遊びを。




 こちとらオタクの端くれだったので、家には白と小豆色のアレの時代からゲームはあったし、ゲーセンの存在は知っていた。通っていた事もある。

 ただ私が通っていた頃は音ゲーを目当てとしてい話が逸れた。

 先輩が紹介してくれたゲーセンに音ゲーはあった。私が人生で唯一心血と金を注いだ足で踏むタイプのアレはなかったのだが。私はそこで他の音ゲーを触りつつも、その先輩が進めてくれたゲームに触れることになる。


 ――格ゲーと呼ばれるものだ。


 家には白と小豆色、それからsuperと名の付く灰色、それから数字を名に持つ黒、それから円盤が入る灰色、その後継機の黒、といった感じでまぁまぁゲームはあった。

 しかし、格ゲーといえば恐らくこの国で一番有名なやつのsuperな本体版しか触ったことがない。

 レバガチャしか出来ない女に、先輩は優しく優しくゲームの内容を教えてくれたのだった。

 技はなんとか出せるようになったものの、いつまで経ってもゲームシステムに慣れることは無かった。

 この年になってもだ。

 私は二次元の登場人物に恋心を抱く所謂『夢女子』なる者だったので、そのゲームを続ける理由はそれで説明が出来るだろう。案の定そのゲームでも夢女子気質を発揮した。

 ……していた、のだが。




 それからほどなくして私は、その作品で、確か人生初となる同人誌(コピー本)を出した。

 ただ、その内容は『作中に登場する人物のみで構成された男女カップリング本』だった。




 時は流れる。


 不登校だった私はゲーセン通いがきっかけで教室に入れるようになった(自分でも因果関係が不明だが)。

 なんとか無事に卒業しつつも、まぁ底辺な生活を送ってもう何年が経ったのか。

 なんだかんだ底辺ながらも今の生活にはそこそこ満足しており、今は身の丈に合わない資格を取得するために勉強もしている日々である。

 そんな日々の中で、私はどうしようもない事情で片道一時間半ほどの道を往復で運転する羽目になった。

 寝る訳には行かないその状態だが、自分の車なので運転のお伴に流す曲は自分で自由に決められる。

 何を流そうかなー、と悩んで目に留まったのが、遥か昔に購入してここ何年も聴く事のなかった先述のゲームのサントラ……サントラ? である。厳密にはサントラではないのだが、説明すると主旨から外れる。

 久しぶりに流すとやっぱり曲もいいのである。


 ……あのゲーム、今どうなってんのかな。


 新作が出たとかいう話は聞いていたが、不登校だった学校を卒業し、時間が経つにつれてそのゲームは触らなくなってしまった。

 家庭用も持っていたが結構古いものだ。

 曲を聴いたことで昔の記憶が蘇り、久々にそのゲームの情報を摂取したいと考えながら握るハンドル。

 無事無事故で往復が出来た。その間、私は何度も何度も聞いた男性ボーカルの、学力が無い故にほぼ意味の分からない英語歌詞を覚えている範囲で口ずさんでいた。




 ~~ここまで背伸びした前置き~~




 帰宅して、最新作までの動向を調べて、私の第一声はこれだった。


「は!? 生き返ったの!?」


 ――現実世界で言うにはなんとも不穏当な言葉である。


 しかし固有名詞を上げないながら説明させてほしい。


 そのゲームには『死んでいながらも体を操られて戦っている』という設定の登場人物がいたのだ。

 私が同人誌を出したという話は先程出したが、その同人誌で書いたカップリングの片方がこの人物だ。

 そしてその人物には詳細は端折るが『愛憎渦巻く元恋人』がいる。こっちも同人誌で書いたカップリングの片方だ。

 この二人が私の『推しカプ』だったのだ。


 既に死んでいるにも関わらず、体を操られたままもう片方の前に姿を現す。そして二人は殺し合う。


 私がその作品を知った時にはもうその状態だったし、その人物が『死んだ』とされた理由が本当にどうしても覆しようのない理由だった。これは事情を知っているオタクなら皆苦い顔をする。

 二人は生きながらにして幸せになる事が、無い。

 無かった。

 無かった筈なのだ。少なくとも二十年前は。

 だから私はコピ本で二人の間にある愛憎を書きたいと思ったし、その二人の狭間で揺れ動くヴェ、………二人に揉まれる苦労人の話も書きたいと思った。失礼しました、あまりの愛に固有名詞が出かけました。

 死んだのだ。

 死んでいたのだ。

 確かに死んだのだ。


 それが。


 ――生き返った。


 私の触っていない十五年ほどの間に、作品の内容も登場人物も劇的に変わっていた。

 一番好きだった登場人物はプレイアブルからリストラされてる。

 作中の人物同士が結ばれて子供まで出来てる。

 死んだ筈の男は生き返った。

 パン屋が、……パン屋!!?!?!??!????!?

 という、この作品を知っている人物であれば今ごろニヤニヤしながらこの文章を眺めていることだろう、と思えるような状況。

 あまりにあまりな内容に、私は動画サイトで公式が出している動画を始め色々と漁った。ちょっと意味が分からなかった部分もありつつ、なんとか飲み込めた。


 なんやかんやあって生き返った。これは間違いないようだ。偽物とかじゃなく。

 それでもまぁ、推しカプの間にある愛憎が即無かったことに、なんてことにもならない。

 それぞれ背負っているものがあって、優先するべきはそっち。


 ……でもあなた達……何故………どうして、そんな、最新作で、イチャイチャ………?

 どうか結婚して……。二人で……幸せになって…………(喜びの嗚咽)




 説明させてほしい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 私がプレイしていた頃の二人は○○○○という○○に所属していたが○○○が○○○様を裏切った事により○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○

 説明できないから二行で諦めました。

 まあ十ウン年という期間余所向いてたら推しカプが公式でイチャイチャしている、って話なんです。

 それを知った時の私の感情は宇宙猫だったのですが、公式のイチャイチャを摂取している間に気が触れたとでも言いますか。


 Q.『あれ』はイチャイチャですか?

 A.(オタク目線で)はいそうです。

 Q.そうは見えないのですが?

 A.男側が女側の名前呼ぶとき特定の状況下で、頭に『私の』って付けるんやぞ。


 この感情の昂ぶりを何処に向けたらいい? と思って脳内整理の為にも文章を書いています。チラシ裏にでも書いとけ、って突っ込みは御遠慮ください。ついついこの脳内の暴走を推敲もしないまま、私を甘やかしてくれる友人にぶつけてしまって反省したところです。

 浦島太郎になった気分です。どうしてあの二人は同じ方向を見ているんです? あなた達この間まで向かい合ってタマの取り合いし、……え、なに? 十五年は『この間』じゃない??? 主題はそこじゃないのでどうでもいいです。


 とにかく!

 昔同人誌まで書いた、悲恋で終わる筈の二人が!!

 どれだけ今はイチャイチャしてるのを公式で見られて幸せかって話をしているんだ!!(ドン!)


 しかし私は今通常の生活を送りながらも身の丈に合わない資格の為に勉強をしている身分。

 悍ましいことに、その試験の勉強と同じくらいそのカップリングについて考えています。

 俺……試験に受かったら……移植される新作買うんだ……。手元にいつでもイチャイチャを……。


 落ちたら?


 公式と皆様の二次創作啜って生きていく。


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