第1話

周囲に広がる草原、ところどころに現実世界じゃ見られない猪の2倍はあるだろう体格をした四足歩行の動物。ぼう森のどんぐりを食べ尽くす図体がでかいやつが出てくるアニメに出てきそうなぐらいに大きい木。俺こと 戸狭間とざま 進也しんやは今ゲームの中にいた。


このゲームは最近、ちまたで流行っているMMORPG「MBO」と言われているゲームなのだが、いつもマイナーなMMORPGしかしてこなかった俺にはあまりにも広すぎる上にプレーヤーが多すぎて目眩めまいが起きそうだ。無論、ここはゲームの中なので起きるはずもないのだが。まあ、そんなことは置いといてなぜ俺がこのゲームにいるかというとほんの二日前の出来事だった。

 

久々に外に出た俺は新しいゲームが何か出ていないかといつも通っているゲームショップに来ていた。すると突然。


「進也くん」


名前を呼ばれたので後ろを振り返ると見慣れた顔が現れた。


「何を探しているの?」


と、聞かれた。


「何か新作が出ていないか見に来たんです。梨沙りささん」


そう、今話しかけてきた店員の名前は 山口 梨紗 このゲームショップで働いている数少ない知人のうちの一人だ。とても気さくな人で暗い俺にも遠慮なく話しかけてくる人だ。ただ少し問題があるとすれば‥‥‥


「新作のゲームか。うーん、あれなんてどうかな?」


距離が近い!こうなんかないの!?

パーソナルスペースみたいなのが!挙げ句の果てに胸がでかいときた。いくら年上のお姉さんで昔からお世話になっているとしても目のやり場に困る。


「聞いてる?進也くん」


「は、はい聞いています。ゲームがどうしたんですか?」


「もう、しっかり聞いててよ。このゲーム最近すっごく流行ってるんだよ!」


「流行りのゲームですか….」


「そう、最近流行っているゲーム!進也くんいつも人があまりやらないゲームばかりしてるからたまには流行りのゲームをしてみるのもいい経験になると思うんだよ!」


ま、まぶしすぎる笑顔だ。しかし、最近流行りのゲームか...昔一度だけまだフルダイブじゃない頃流行りのゲームを一度やった記憶はあるけれどあまりいい印象はないんだよな。まあでも、いつもお世話になっている梨紗さんが言うんだから信じてやってみようか。


「わかりました。じゃあ、そのゲームやってみることにします。」


「本当!?やったー!やっぱり何事も言ってみるものだね!」


という経緯があったのだがまあそれは別にいいだろう。しかし、本当にこの世界はすごいと思う。今まで人気のないタイトルばかりやってきたからかゲームの中とは思えないぐらいのクオリティーだ。確かこのゲームはAIが完全に管理しているとのことだが、このクオリティーを本当にAIだけで管理しているとしたらとんでもないAIだ。まあ、考えても仕方がないか….。


考えるのを諦めた俺は早速装備などを整えるために街に行こうとしたがまず街がどこにあるかわからなかった。

ということで、俺がいちばん最初にしようとしたのは初期に持っているものの確認だ。ストレージを開けると当然最初なので2、3つしか入っていないが一つだけ一際ひときわ目立つものがあった。そうこれがなんと言おうとこのゲームのコンセプトの一つ銃だ。それ以外は、切れ味の悪いナイフとリンゴだ。

それと、今自分が来ている服は最初から支給されている麻のTシャツと麻のズボンそれと麻でできたボロボロの靴だ。無論、この服に防御力があるわけもなく少し木にぶつかっただけで穴が開きそうだ。しかし、今まで数々のゲームをしてきたがここまでクオリティーが高くて初期衣装がこんなにも弱いのは初めてだ。一応初期武器とはいえ今自分が持っている武器はこれだけなのでどういう性能なのか確認することにした。ちなみに、ナイフは武器ではなく調理などを行うための道具で武器としては使えないようだ。

銃をストレージから出すと手にズッシリとした感触が伝わってきた。改めて銃を見ると結構かっこいい見た目をしていると思った。ところどころ傷がついてたりするが黒を基調としたリボルバー銃だ。弾は6発しかない、威力は100と書いているがおそらくかなり低いのだろうと分かった。と、今自分ができる機能を見ていると視界の右上に赤色のビックリマークが出てきた。何かと思うと空腹ゲージだった。この世界はめんどくさいことに食料を取らなければHPが減っていくようだ。ためしに、リンゴを食べるとマークは無事消えた。しかし、リンゴ程度で空腹が収まるわけがなく設定画面から空腹ゲージを見てみると6分の1しか満腹ゲージが埋まってなかった。流石にまずいとわかりプレイヤーを探すことにした。ちなみに、肉などは調理しないと食べれないようだ。融通が効かないな…

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