騎士狩り物語

魔木 楓

発表台本

1 約束、そして絶望


リュウ 「レイ、いつか二人で、騎士になろう!」

レイ  「うんっ。絶対、絶対だよ!」

リュウ 「2人で世界を変えよう!」



騎士1 「探せ!」

騎士2 「逃がすなぁ!」

レイ  (何が間違っていたのだろう。

    何がいけなかったのだろう。 

    どうして母さんは……」

騎士3 「いたかぁ?」

騎士4 「急げ!」

騎士5 「時間がないぞ! 絶対に逃がすな!」

レイ母 (逃げて。あなただけでも、生きて…………レイ)

レイ  (死に際の母の声が蘇る。

    僕はただひたすらに足を動かした。

    彼らに復讐するために。なにがなんでも生き残る。

    騎士団の軍服に身を包んだ彼らを決して許さない。

    この国にいる騎士を滅すまで。騎士を狩る…… )


2 出発の朝


母   「リュウ! 早く起きないと間に合わなくなっちゃうわよ」

リュウ 「んん…… 」

母   「リュウ!」

リュウ 「…… 起きた起きたよ。…… ぐぅ」

母   「まったく、これから一人暮らしをするかもしれないのに大丈夫かしら」


リュウ (俺の名前はリュウ。先日、17歳になったばかりだ。

    今日は王国騎士団試験を受けに王都エスタに出発する日だ)

母   「忘れ物ない?エスタまでの道は整備されてるとはいえ絶対に安全とは言い切れないんだからね」

リュウ 「わかってるよ。ありがと」

リュウ (俺の住む村から王都エスタまでは二日ほどかかる。

    街道沿いを北に向かって進む)

リュウ 「それじゃあ、そろそろ行くね。今まで、育ててくれてありがとう」

母   「騎士団試験、頑張っておいで!」

リュウ 「行ってきます!」

リュウ (そういえば、あいつは来るかな。いや、ぜったい来る!

    だって、約束したんだから。一緒に騎士になろうって!)



ミスズ 「だれかー、助けて― 」

リュウ 「ん?」

ミスズ 「だれかー、っているわけないか。こんな森に人がいるわけない」

リュウ 「森の方から悲鳴が聞こえた気が。行ってみるか」


3 魔物の森


魔物  「グゥオオオオー」

リュウ 「魔物の声…… ?」

ミスズ 「うるさいなぁ。まさか近道しようと思ったら魔物の巣だったなんてついてない。足くじいちゃったから動けないし」

リュウ 「女の子⁉ 危ない」

魔物  「グゥオオオオー」

ミスズ 「ふんっ。やれやれ、魔力もあまり残ってないし。

    イチかバチか精霊魔法を使ってどうにかするしかないか…… 」

リュウ 「今のは、風魔法? そうか、まだ無事なのは魔法が使えるからなんだ!

    でも、それにも限界はある…… 。どうにかして助けないと」

ミスズ 「風精霊魔法…… 」

リュウ 「なにか、なにかないのか。魔物たちを足止めできるような何かは。

    ……っあ、火があれば……! あまり魔法は得意じゃないけど……

    炎魔法、バーニング・フレア‼」

ミスズ 「…… ん? 火、魔法…… ?」

リュウ 「そのまま魔法を撃って」

ミスズ 「え? うん

     ウィンド・ホロウ!」


リュウ 「逃げるよ。つかまって」

ミスズ 「え、うん⁈ てか、あなた誰」

リュウ 「今は逃げること最優先だよ!」

ミスズ 「ちょ、ちょっと待って、これって、お姫様抱っこってやつじゃ…… !!」



リュウ 「ふぅ、なんとか逃げ切れたな」

ミスズ 「あの、おろしてもらってもいい?」

リュウ 「え? でも、足くじいてるんじゃ」

ミスズ 「大丈夫だから!」

リュウ 「わかったよ、はい。…… っとおっとと。やっぱダメじゃん。

    ほら、つかまって」

ミスズ 「うう、どうして私がこんな目にぃぃいい」


4 出会い


ミスズ 「改めて、今日は助けてくれてありがとう。わたしはミスズ。よろしく」

リュウ 「俺はリュウ。あれは騎士として当然のことをしたまでだよ。

    まあ、まだ騎士じゃないんだけど…… 」

ミスズ 「騎士? もしかしてリュウも王都に騎士団試験を受けに行くの?」

リュウ 「うん、そうだよ。もしかしてミスズも試験を受けに行くの?」

ミスズ 「ええ。弟と約束したの。

    でもそっか、リュウならきっと立派な騎士になれるわ。

    だって私のことを助けてくれたもの」

リュウ 「ありがとう。…… にしても、魔物に襲われるだなんてついてないね」

ミスズ 「あはは…… 、まああれは、自業自得、かも…… 」

リュウ 「?」

ミスズ 「王都に行くのに近道をしようと思ったら、ちょうど魔物の巣だった世ね    ね」

リュウ 「はあ⁉」

ミスズ 「あはは…… 。ま、君に出会えたからプラマイゼロかな」

リュウ 「俺、完全に巻き込まれただけじゃん」

ミスズ 「わ、悪いとは思っているわよ。だからこの恩はいつか必ず。ね?」



幕間


レイ (久しぶりに懐かしい夢を見た。

   僕は幼馴染の男の子と木の棒を振り合って騎士ごっこをしていた。

   子供ながらにして騎士に憧れを抱いていたのだ。

   僕たちは共に騎士になることを約束した。

   あれからもう、十年以上の月日がたった。

   君はまだこの約束を覚えているか。

   叶うなら忘れていてほしい)



ミスズ 「おはよ、リュウ。朝早いのね」

リュウ 「おはよう。たまたまだよ。寝てられなくて起きちゃった。

    緊張してるのかも」

ミスズ 「意外、緊張なんかするんだ」

リュウ 「人のことを何だと…… 」

ミスズ 「大丈夫だよ。リュウは絶対に騎士になれる。わたしが保証する!」

リュウ 「なにを根拠に」

ミスズ 「だって、リュウはわたしのヒーローだから」



リュウ (昔、俺のことをヒーローだと言った奴がいた。

    子供だった俺は、そういわれたことがとても誇らしかった。

    そしていつしか本当のヒーローになりたいと思った。

    騎士になればもっと多くの人のヒーローになれる。

    安直な俺の考えに、けれどあいつだけはなれると言ってくれた。

    だから俺は、騎士になりたい。

    あの日の約束を果たすために)


6 騎士狩りの長


アイシェ 「レイ、大丈夫?」

レイ   「大丈夫だよ、アイシェ。今日さえ乗り切れば…… 」

アイシェ 「でも、無理してる…… 」

レイ   「一年前から計画した千載一遇のチャンスなんだ。

     僕一人のせいで作戦を中止になんてできない」

アイシェ 「…… 」

レイ   「心配してくれてありがとう。君がいてくれているだけで僕は…… 」


ボンド  「レイ様、作戦の最終確認の時間です!」

レイ   「ああ、今行く。いくぞ、アイシェ」

アイシェ 「貴方がそう言うのなら、私は付き従うまでです」



レイ   「王都襲撃。エスタで行われる騎士団試験を襲い、受験者を人質に騎士団

本部をたたく」


7 王国騎士団試験


騎士6 「これから王国騎士団選抜試験を開始する」


リュウ 「お互い頑張ろうな、ミスズ」

ミスズ 「うん! リュウも頑張ってね」



騎士7 「お前は何者だ⁉」

レイ  「お前には関係ない」

騎士7 「誰か、助けてくれ…… !」



ミスズ 「悲鳴⁉」

リュウ 「向こうの方だ!」

ミスズ 「行くの?」

リュウ 「もちろん」

ミスズ 「でも、罠かもしれないわよ…… 」

リュウ 「それでも。俺はみんなを守るヒーローだから」


リュウ 「いた」

レイ  「合法的に騎士に手を出してもいいなんて、騎士団試験さまさまだな」

騎士7 「やめろ、今回の試験では殺しは認めていないぞ!」

リュウ 「何をしてるんだ?」

レイ  「なにも問題はない。俺は騎士団試験を受けに来たのではないのだから。

    恨むなら、上の者たちを恨むんだな」

リュウ 「(殺そうとしている)剣を下ろせ。その人から離れろ!」


レイ  「ふんっ、俺の剣を受け止めるとは少しはやるようだな」

リュウ 「お前は誰だ!」

レイ  「答える義理はない」


レイ  「…… ちっ、あまりこの手は使いたくなかったが、仕方ない」

リュウ 「…… っ」

レイ  「炎魔法フレイム・ルナ・ブラスト」

ミスズ 「リュウ! 伏せて!

    風精霊魔法ストーム・ブリゲイズ」



リュウ 「けほっ、けほっ。何が起こったんだ…… 。ミスズ…… ?」

レイ  「精霊魔法とは…… 、なかなかやるな。騎士団のものとも思えないが……」

ミスズ 「あなたは誰? ここは殺し合いをする場所じゃない!」

レイ  「…… 」


リュウ 「…… 嘘、だろ…… 。レイ…… 」

レイ  「…… 」

リュウ 「どうして、どうしてこんなこと…… 」

レイ  「…… 」

リュウ 「約束したじゃんかよ。一緒に騎士になろうって」

レイ  「…… っ」

リュウ 「どうして…… 」


リュウ 「ぐはっ…… 」

レイ  「悪いけど、行かせてもらうよ」

ミスズ 「リュウ!」

レイ  「正直、精霊魔法を使う君とは戦いたくないけど、行かせてはくれなそう

だし」

ミスズ 「当たり前でしょ」

リュウ 「…… させない。レイ、俺がお前のことを行かせない!」

レイ  「なっ…… (あれだけの傷を負ってまだ立ち上がるのか…… )」

リュウ 「殺しによって世界を変えることなんてできないんだ!

    (思い出せ! あの日約束したことを、一緒に騎士になるって!)

    はああっ!!」


レイ  「(だから約束を忘れていてほしかったんだ…… )

    リュウ、君なら、今の騎士団を変えられるかもしれないな…… 」

リュウ 「レイ! 今ならまだやり直せる。正しい方法で世界を変えるんだ!」

レイ  「…… 」

ミスズ 「そうよ、たとえ復讐したいと思っても殺したらすべてがダメになってしま

う」

レイ  「悪魔憑き。騎士団上層部は悪魔憑きを探すために村を襲っては子どもを誘

拐している」

リュウ 「なんだって…… ⁉」

レイ  「特殊体質者保護施設、ベルデ。それが悪魔憑きを研究している機関だ」

ミスズ 「嘘、でしょ…… (シエン…… )」

レイ  「僕たち騎士狩りは、彼らを咎めるために存在する。

    だから、僕はいけない」

リュウ 「レイ…… 」

レイ  「リュウ、君は…… 、多くの人を救う、騎士になってくれよ」



ミスズ  「なに⁉」

アイシェ 「助けに来た。レイ」

レイ   「君には助けられてばかりだ」

アイシェ 「そんなことない。レイはいつもわたしの手を握ってくれる」

レイ   「ありがとう」

アイシェ 「行こう。目的は果たした。ここにはもう用はない」

リュウ  「…… レイ」


9 決意


リュウ 「…… 」

ミスズ 「リュウ…… ?」

リュウ 「…… 」

ミスズ 「…… 大丈夫?」

リュウ 「…… うん。行こう、ミスズ」

    そろそろ、時間だ。試験はまだ終わらない。

    これに合格しないと騎士になれないんだから。

    騎士になって世界を変えるために。

    レイと約束したから」

ミスズ 「…… そうね。もちろんわたしもついていくわ!

    (待っててね、シエン。お姉ちゃんが助けに行くまで)」


10 特殊体質者保護施設、ベルデ


シエン 「王国騎士ってたいしたことないなぁ。

    この力があれば、復讐を果たせる!

    待っててね、おねえちゃん」

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