灰の勇者の下剋上

水無月桜

プロローグ

人がずっと怖かった。何か人が話していると自分への悪口だと思ってしまう。

だから俺は学校でずっと一人だった。家でも基本的に一人。

両親は俺が小さいときに交通事故で亡くなってしまった。


一か月に一度、親戚がお金を私に来てくれるだけ。それ以外はずっと一人だった。

生きづらい世界だなとずっと思っていた。

「この世界から逃げ出したい…」

それが俺の口癖だった。まあこんなことを言っていても何も起きないし変わらないのだが。


そうしいて放課後になると陽キャたちが俺に掃除を任せてくる。

もうこんなのは慣れっこだ。逆に言うと怪我する危険のあるものでもないのだから優しい方だろうな。教科書を水で濡らされたときは結構めんどくさかったかな。

担任は俺がいじめられているのを見ても特に何も言わないしな。

まあ面倒だから関わりたくないのだろう。


そうしていつも通り掃除をしていると不意に教室の扉が開いた。

「あ、また風間くんは掃除を任されてるんだ…大丈夫?手伝おうか?」

彼女はクラスメイトの花沢絵里。誰にでも優しく学校でも人気者だ。

彼女は優しいからこんな俺にも声をかけ助けようとするのだろう。

けれど俺にはそれすらも鬱陶しいと感じてしまっていた。


「大丈夫…こんなの慣れっこだし。それにもう終わるから」

「えっと、そっか。もしなにか手伝ってほしいことがあったら言ってね?」

そう言って花沢さんは教室から去っていく。

彼女に助けを求めたら俺は救われるだろうか。いや、さらにいじめられるだけだな。

花沢さん男子からの人気高いらしいし。陰キャのお前が調子乗んなとかなるやつだ。

「…はあ、帰ろ」

そうして俺は家に帰った。


そうして次の日、俺はいつものように適当に授業を聞いていた。

うちのクラスはやんちゃなやつも多いので授業中に喋って怒られるやつがいるという場面は多かった。

そうして授業を終えるチャイムが鳴る。


「それじゃ、授業終わるぞ」

そう言って起立礼をして、担任は教室から出ていこうとする。しかしその瞬間――

「なんだこれは?!」

急に教室全体の床が光り始めた。

(まじでなんだこれ…?)

そうして光が教室を包んでいく。

(どう、いう、こ…と…)

そうして俺たちのクラスは意識を失った。


目覚めたところは全く持って見覚えのないところだった。

(なんだこれ夢か…?)

視界に映るのはフードを被っている男たちと冠を被った男女だった。

「おお、成功しましたぞ!!」

「おめでとうございます国王様、王妃様!」

(国王…?王妃…?)

意識がもうろうとしていて状況を全然理解することが出来なかった。


周りを見渡すとクラスメイトと担任も一緒に居た。

そうして目の前にいる王妃?様はこう言い放つのだ。

「異世界へようこそ!勇者様!」

「…は?」

俺は…俺たちは異世界へと召喚されたようだ。

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