ニ人だけの生徒会
ワンステップバス
1年生
1学期
第1話 登校
2023年 4月11日 07:30 京都市営地下鉄 京都駅
[間もなく、2番乗り場に国際会館行が参ります。 危険ですから、白線の内側でお待ち下さい]
ここは京都府、京都駅。
今日も私はこの駅から学校へと向かう。
「やっぱ、いつ見ても凄い人やね」
私の名前は
今年から高校生になった、深山高校1年生!
「観光客も居るから余計に混む」
この子は
私の大切な幼馴染で、ロシアと日本のハーフ。
黒髪や茶髪、金髪が並ぶ中、一際目立つ銀髪ロングに、紅色の綺麗な目。
157cmの小さな身体に大きなお胸。
[2番乗り場の電車は、四条・烏丸御池・北大路方面、国際会館行でございまーす]
一方、私は普通の……いや、黒色に限りなく近い紺髪で、彩華と同じロング。
身長は172cmで、所謂高身長女子と呼ばれる存在。
そして、とにかく彩華が大好きだ。
彩華に関する知識なら誰にも負けないと思っている。
身長や体重、血液型、趣味は勿論の事、スリーサイズ、使ってるシャンプーやボディーソープ、生まれた時に居たNICUの番号等々……。
私は彩華と一生を添い遂げたいと思っている。
しかし、彩華が嫌だと言うならば諦めるしかない。
まだ、彩華の気持ちは聞けていないが……。
「うわぁ、今日も満員」
「満員やない日何て、無い思うよ」
入って来たのは白と薄い茶色のツートンカラーに黄色のラインが入った近鉄の列車。
近鉄から来た列車は混んでるから嫌やねん……。
扉が開き、ホームの乗客が一斉に車内へと流れ混む。
私達もその流れに乗って車内へ。
当然、座れるはずも無く、私達は多数の乗客の中に詰め込まれる事となった。
まぁ、これはいつもの事だ。
[扉付近固まらず、車内中の方へお進み下さい、国際会館行間もなく発車します]
大量の通勤・通学客と観光客を詰め込めるだけ詰め込むと、列車は扉を閉めて発車。
終点の国際会館まで20分の乗車だ。
[――次は、五条です。 エレベーターはホーム後ろ寄りにあります]
20分と言っても、この混雑が続くのは烏丸御池まで。
烏丸御池までは3駅、5分の辛抱だ。
「橘花ちゃん」
「なぁに?」
「暑いね」
「ねっ。 春でもこんな暑いんやから、夏、なったらどないなってまうんやら……」
あぁ、先が思いやられるね。
最近は地球温暖化で夏自体の気温も上がってるから、困った物だ。
まぁ、夏になったら冷房ガンガンに点けてくれるでしょう。
07:37 同車内
[――次は、丸太町です。 京都府庁は次でお降りください、エレベーターはホーム後ろ寄りにあります]
列車は無事に烏丸御池を発車。
さっきまでの地獄の様な混雑は解消され、座席にありつく事が出来た。
周囲には私達と同じセーラー服を着た学生達が大勢居る。
皆、国際会館駅まで乗車するのだ。
「ねぇ、彩華」
「ん〜?」
「制服、新しくなるんやっけ?」
「うん、9月からやって」
今着ているセーラー服は中学からのおさがり。
深山高校……って言うより、深山学園は日本じゃ珍しい幼小中高大院一貫。
私と彩華は幼稚園から通っている。
まぁ、幼稚園から通う人は少ないんだけどね。
「デザイン見た? ブレザーやって」
「見た見た。 めっちゃ変わるね」
「ねっ。 めっちゃ変わるよね」
新しいデザインは紺のブレザーに学年色の青のリボン。
灰色の生地にチェック柄があしらわれたスカート。
かなり大胆な変化。
個人的には、このブレザーの方が好きだ。
「絶対彩華似合うわ、間違いない」
「え〜? そう〜?」
「うん。 間違いない、やって彩華美人やもん」
「
「やって事実やからしゃーないやろ〜?」
「うぅ、しゃーなくない!」
彩華が私に頭をグリグリして来る。
めっちゃ可愛いんだけどコレ。
「ごめんて、ごめんて、許して」
「許す」
彩華は即答した。
何ならちょっと食い気味だった気もする。
まぁ、可愛いから何でも良いや。
07:55 国際会館駅前ロータリー
「あっ! バス出てもうた!」
学校行の送迎バスが目の前で出ていった。
まぁ、便はまだまだあるから問題は無い。
次のバスは8時丁度発、5分後だ
「でも、先頭やから絶対座れるねっ」
「うん、せやね」
床に描かれたラインに沿って並ぶ。
私達の後ろには沢山の深山中高生が並んでいた。
皆、さっき乗ってきた電車の乗客だ。
バスは3分程で来た。
バスの車種は日野セレガ。
車内は普通の高速バスと大差無い。
トイレもあるし、リクライニングもするから遠足にも使われる。
今回は先頭に並べたから、1番後ろの座席に座った。
左側にはトイレが鎮座している。
「ねぇ、橘花ちゃん」
「なぁに〜?」
「二階建てバスになるんやって?」
「うん、そうみたいやね」
学生の殆どはこの送迎バスを使う。
鉄道での最寄駅は叡山電車の二ノ瀬駅だが、少し登山をしなければならない。
故に、折角送迎バスがあるのならと、皆使うのである。
「凄いね、全部置き換えるん?」
「ううん。 新しく追加するやって」
「へぇ〜! 凄いね、バス沢山!」
「うん、駐車場バスまみれになるね」
学校にはバス専用駐車場なる物が存在するが、今でもバスが溢れている。
このまま増やしたら、もっと凄い事になるだろう。
ちょっと楽しみだな。
15分程バスに揺られて、学校に到着。
バスは校舎に直接付けてくれる。
1番後ろに座ったから、降りるのは1番最後になった。
靴を抜いで、上履きに履き替える。
履き替えたら、廊下を少し歩いてエスカレーターへ。
「7階やねっ」
「うん、謎に7階」
この学校、階分が謎である。
中学生は普通に中1が2階、中2が3階、中3が4階と普通なのだが、高校生は逆で、高1が7階、高2が6階、高3が5階と謎に下がっていくのだ。
訳が分からない。
普通に下から上でええやん……?
「エスカレーター楽〜っ」
「うん、めっちゃ楽」
上下移動は基本的に吹き抜けに設置されたエスカレーター。
この本館は中央に吹き抜けがあり、その周囲を囲う様に伸びる廊下、その外側に教室が並んでいる。
一方、別館には天文台があり、天文部がそこで活動していた。
「1番上〜っ」
7階に到着。
教室は上りエスカレーターから降りて、左折してすぐの所。
私と彩華が同じ1組だ。
クラスは8組まであり、1〜4組までが中学から入った組。
5〜8が高校から入った組である。
クラス分けは成績順であり、中学組は1組から順番に成績が良い。
高校組は5組から順位成績が良くなる。
「おはよ〜、ありゃ、誰も居ない」
教室には珍しく誰も居なかった。
普段は1人、2人は居るんだけどね。
座席はまだ出席番号順。
私の番号は7番で、彩華が6番。
1列5人で、2列目の彩華が先頭、私は前から2番目。
稀に、クーラーの風に載せて彩華の匂いが漂ってくる。
だから、この席はお気に入りだ。
「ねぇねぇ彩華」
「ん〜? なぁに?」
「今日は生徒会室行く?」
「うん、行こうかなって」
「OK、行こう行こう」
生徒会の活動日、昔は決まっていたが私達2人になってからは不定期。
不定期って言うより、常に一緒に居るから、いつでも何処でも活動が出来る。
PCさえあればトイレの個室でも可能だ。
私が副会長で、彩華が会長。
と言っても、上下関係は存在しないんだけどね。
「彩華」
「ん〜?」
「新しい両親、どない?」
「うーん、まだ分からんけど、あんまりかな」
彩華はこれまで何度も両親を取っ替え引っ替えしている。
その為、苗字が何度も変わっているのだ。
最初は
幸い、今の所、虐待を受けた事は無い。
どれも親の都合による離婚だ。
「嫌になったらいつでも連絡してな?」
「うん、ありがとう!」
「彩華は私が護る」
「えへへ、嬉しいな」
笑顔の彩華を見ると、かなり元気が貰える。
この笑顔を絶やしてはならない。
私はこの笑顔を維持する為なら何でもやる。
「あ、そう言えば、橘花ちゃん、地主なったんやって?」
「うん、なったなった」
「って事は、ここの土地も橘花ちゃんの物?」
「うん、そうなるな」
お父様が仕事の都合で土地の管理が難しくなったので、私に土地を譲った。
お父様は海軍中将で、第一潜水艦隊の司令官だ。
「学校からお金巻き上げてるんか〜」
「う、うん、そうなるね、実感無いけど……」
七条家は代々海軍家で、長男だろうが次男だろうが皆海軍に入る。
当然、私もその例に漏れず、海軍を目指しているのだ。
私が目指すのはお父様と同じ潜水艦乗り。
その為に、海軍室蘭学校を目指している。
「所で、彩華って今年の室蘭の入学者聞いた?」
「ううん。 0?」
「そう、0」
海軍室蘭学校は日本で最も入るのが難しいと言われている軍学校。
入学者は毎年0人が基本で、入学者がある年の方が珍しい。
科目に実技として射撃やCQCが要求される。
訓練は海軍出身の執事の三島さんにやってもらっている。
彩華と一緒に中1から家の道場で訓練をしているのだ。
「あ、せや」
「??」
「高校生なったからさ、射撃の訓練は始まるやろ?」
「あ、せやね!」
「何処でやるんかな?」
「流石に家は出来へんやろうし……、何処でやるんやろね?」
「ね〜」
CQCの訓練と並行して、私は日本刀の訓練もしている。
これは単純に私の興味による物で、私が小学生の頃から始めた。
具体的に何年からは覚えてないけれど、小3の時には持ってたはず。
それに関する資格とかは特に持ってない。
道場とか行ってないし。
「あ、彩華、今日の生徒会何するん?」
「予算配分だよ〜」
「あ〜……」
そうだ、思い出した。
この時期になると、各部活の予算配分をしないといけない。
去年までは5人居たから良かったけど……うわぁ、しんどい……。
「……2人で行けると思う? 彩華」
「……ちょっと厳しいかも?」
「……やっぱり?」
「……うん」
はぁ、やっぱ2人で生徒会やってくなんて無茶だよ。
かと言って、生徒会を辞めたらこの先学校運営がどうなるか分からない。
はて、これからどうすれば良いのやら!
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関西弁は関西弁でも、作者は神戸弁話者なので、実際の京都弁とは異なる場合が多々ございます。 出来るだけ近づける様に努力は致しますが、至らない場合がございます事を了承下さいませ……。 by 作者
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