第24話 下向く運気と鹿島朱美。
お盆商戦、広島紫と市原黄汰には立て続けに面倒ごとが舞い込んできてしまった。
まず、お盆2日目。
時間が取れたので夕飯だけでも2人で食べていた市原黄汰と広島紫。
食事中に市原黄汰のスマートフォンには市原黄介からの着信。
「おお、どうしたんだい黄介?」と電話に出た市原黄汰だったが、お盆に帰省した息子の横には元妻もいて、今会いたいと言っている事、広島紫がいるのなら、なおのこと会いたいと言っていると言われてしまう事。
市原黄汰は一度は断ったが、広島紫が「きっと何かの用事があるんです。会いましょう」と言ってしまう。
市原黄汰は最後まで市原黄介に、「会っても復縁も何もない、ゴリ押しも聞かないよ。それでも会うのかと聞いてくれないかい?」と言っていたが、元妻も広島紫も会うと言っている。
市原黄介は相変わらず父親の確度を誉めてしまう。
母は何らかの思惑を持って、復縁を迫ろうとしていた。
・・・
市原黄汰は頑として町屋で会おうとしない。
それはそのまま家に来られては困る事で、市原黄汰は日暮里駅で4人で会う事を提案していた。
広島紫の前に現れたのは、数ヶ月前に初めて会った市原黄介。そしてその横に居た女性は、化粧気の強いショートヘアの女性。
言い方は悪いが、見た目通り気の強い人で、表情は喧嘩腰。
広島紫を上から下まで見てから、「彼女…ねぇ」と自己紹介もなく言い、市原黄汰と市原黄介から「やめなさい」、「母さん」と注意を受ける。
市原黄汰と広島紫は食後だったので、喫茶店で話をする事になる。
主な話は元妻・
広島紫はキチンと自己紹介をして「市原さんと、昨年夏からお付き合いをさせていただいています」と言ったが、鹿島朱美は挨拶もそこそこで、「いくつ?歳の差ありすぎじゃない。別れて自分の年齢に見合った人と付き合いなさい」と言い出す。
市原黄汰と黄介に注意をされて、不機嫌で不服そうに改めて自己紹介をする鹿島朱美にいい印象はない。
鹿島朱美は酒でも呑んでいるのか、会話に脈絡も主語も何もなく、「別れて」ともう一度言い出した。
・・・
見かねた市原黄汰が、普段見せない表情で「やめないか」と言うと、一気に言った。
「住まいの更新、普段の生活費、そこら辺で貯金はカツカツ。思い描いた自由な暮らしとかけ離れてしまったから、一度戻ってきてお金を貯めて、再度出て行こうとしてもダメだよ。君は縁を切ったと自分から言ったんだ。写真ひとつ残さなかった。連絡先も消した。ウチの鍵も手放した。もう私たちの繋がりは黄介の親の立場だけでしかない」
それは正にその通りだった。
そもそも自由になりたいと言い、全てを手放して心機一転仕事に出たが、今まで背負って来なかったもの達のウエイトは想像以上に厳しいものだった。
スマートフォンも最新機種にして、必要の有無に関係なく容量も大きなものにして、曲も聴き放題、動画も見放題にして、家でのQOL…生活の質を充実させた。
ほんの少し乗るだけの自転車も、楽をする為に電動自転車の良いものを手に入れた。家具家電も今までなら市原黄汰を説き伏せたり、ゴネ倒さなければ手に入らなかった物。ゴネ倒しても手に入らなかった物を、使い試すように買ってみた。6年間貯金しておいたお金を使い、夢見ていた家を作り、仕事に通い、自由に生きた。
だが、生活に対して収支のバランスは合わずに下方修正を求められる。
何よりキツかったのは住まいの更新料だった。
住まいの更新をした結果、手元の金はドンドン減ってしまい、心許なくなってしまう。
自分の意思で縁を切ったのに、なんて薄情な元夫だと不満を募らせ、連絡先を消させたのに、連絡の一つもよこさない。黄介と3人で会いたいくらい漏らせばよいものを、泣き言一つ言わずに飄々と暮らすと思っていた。
そんな時の市原黄汰の交通事故は僥倖だった。
1人の暮らしに限界を感じたところで、仕方なく復縁を匂わせたら飛び付いてくる。
そしてまた十分な貯金を得たら出ていけばいいと思っていて、親子の縁を使って黄介を呼び出して、「お父さんとお母さんが復縁したら嬉しい?」と聞いてみた。
元々離婚に反対したのは息子の黄介。
市原黄汰は黄介が困るから考え直さないかと最後まで聞いていた。
黄介が復縁を望めば円満解決だと思ったのだが、黄介の返事は「父さん、彼女いるよ」だった。
鹿島朱美が「はぁ?」と聞き返すと、「この前の交通事故の時に会ったよ。まだ20代の人だけど、父さんと相性もよさそうだし、その先とかはわからないけど、父さんも充実してたから復縁はないんじゃない?いいじゃん。母さんも自由、父さんも自由だよ」と言われてしまった。
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