前世勇者だった俺が魔王になってたから部下徹底教育して王様を倒すまで
蜜りんご
第1話
曇天に雷、瘴気、そんな禍々しい雰囲気の中佇むこの城は魔王の住む魔王城だ。
なぜそんなことがわかるかって?それは、俺が勇者だったからだ。だがしかし今鏡に映る自分の姿は、どう見ても俺が倒したはずの魔王だ。
「なにが、どうなってる?」
俺は今魔王を倒して、王様の元で祝杯の宴を行なっていたはず。それがどうしてこんなことになる。一旦状況を整理しよう。まず魔王を倒して王都に戻った時からだ。
「勇者様ご一行が帰還なされた!!」
「これで、もう魔王に怯える日々が無くなるぞ!!」
そう、街中で大騒ぎになって、王宮に辿り着く頃にはもう王様の耳には魔王を倒したことが知られていた。もう王様の使いが早々に知らせに行ったんだろう。
「勇者たちよ。よく魔王を倒し、無事な状態で帰還したな。そこに敬意を表そう」
そう王様から言われ、今まで辛かった試練や困難はこのためだったのか、と胸がじんわり熱くなった。数々のダンジョンを乗り越えてきた苦労が、報われた気分になった。
「もったいなきお言葉、感謝申し上げます。我々一行が魔王討伐の夢が叶ったのは王様に頂いた知恵や防具のおかげにございます」
「勇者は謙虚じゃな。他の仲間達のように、もっと喜んでもよかろうに」
俺は謙虚なんかじゃない。大いに喜んでいる。確かに俺は、仲間達に比べたら謙虚に見えるかもしれない。仲間達は涙を流しているし、今の言葉でぷるぷる震えて喜んでいる。他の仲間達は喜んでることが傍目にもわかるほどだった。
「過分な評価にございます。我々一行は王様のおかげで魔王討伐が達成できたのです。我々の力だけでは不可能でした」
「そうじゃな。魔王討伐を記念して今夜は宴じゃ!」
そう言う王様の一言で、王様の従者たちにあれよあれよと言う間に宴会場まで流され宴が始まった。見たこともないような豪華な食事、大量に並べられた料理の数々。そしてグラスにどんどん注がれる酒。
(これ全部俺たちに用意されたものなのか!?)
仲間達もこの美味しい食事と酒に舌鼓を打っていた。宴も終盤にさしかかったそんな時だった。
「そうじゃった。隣国で今流行っているという珍しい花を使った甘味を用意したんじゃ。魔王撃破に貢献した勇者達に食べてもらおうと思ってな」
「綺麗な白い花を使うなんて風流ですね。目の付け所が素晴らしい…さすが王様です!」
急に食べ物を勧めてくるなんて怪しいが、仲間が食べている以上俺も食べなくてはならない。確かにこの花は珍しいが毒なしの花だ。食べたら美味しく、普通に食べてしまった。
(なんだ…俺の疑いすぎか)
と思いきや、気づいたら今この状況である。
「あれ、もしかして俺…あの甘味に毒盛られて死んだんじゃね?」
一緒に同じものを仲間達で食べたからきっと仲間達もきっと死んでしまっているに違いない。もしかして俺だけ逆行もしくは転生したんだろうか。俺はこんな風に恩を仇で返すような奴は絶対許せない。それに、何よりも何も知らないまま死んだことに納得がいかない。俺は、倒されて黙ってられるほど人が良くないんだ。
「絶対王様と王宮の奴らに復讐してやる…!」
まずは、戦力集めと作戦を練ることからだな。自分が魔王であることなんか関係ない。やる気と気力は十分だ。見てろよ、王様連中め!
前世勇者だった俺が魔王になってたから部下徹底教育して王様を倒すまで 蜜りんご @persica220
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