恋の時間

森林幹

恋の時間

気づいたら彼に夢中になっていた。


稽古で疲れている時に心配してくれる彼が好きだ。

敬語をやめて話さないかと提案するとぎこちなくも敬語を崩して話してくれる彼が好きだ。


他の子にも優しい彼が嫌だった。みんなに優しいのは彼の魅力的なところだと思うけど私だけを見て欲しいと思ってしまった。


今この気持ちを彼に伝えるのは簡単だ。でも彼には今、私の気持ちに応える余裕はないだろう。


彼は過去に負けた相手との再戦のために日々稽古に取り組んでいる。そんな彼に『恋愛』という二文字重いはずだ。


私はこの気持ちを心の奥にしまっておこうと決めた。


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先輩に恋をした。


口下手な僕に話かけてくれたのが嬉しかった。

修学旅行のお土産だとキーホルダーをくれたのが嬉しかった。

髪を切った時に僕の方をちらちら見てくる先輩が可愛かった。


『好き』と伝えることができたらどんなに幸福だろう。

恋人になったとしてその先に何が待っているのだろう。


僕にはあと一歩を踏み出す勇気がない。臆病な男だ。

だから僕は先輩を好きだという想いよりも彼との再戦に力を入れる事にした。

自分の気持ちから逃げたのだ。


僕はこの想いを忘れることにした。







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恋の時間 森林幹 @moribayasimiki5082

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