4.意志が強い色、橙

天使と悪魔の違いはたくさんあるがもう一つ大切なものがある。天使は火にめっぽう弱く、悪魔は水にめっぽう弱い。これは互いの体の構造に関するものである。天使は強い炎を浴びると急激なエネルギー過多により、破裂してしまう。逆に悪魔はエネルギーが水に溶けてしまうため自力でエネルギーを作り出せない悪魔はすぐにくたばってしまう。息も長く続かない。

ビートはこれを理解していた。自分が死んでもしばらくの間、消したものや、結界は破けない。それだけの時間があればモロトモを溺死させる時間としては十分だと考えていた。


大量の水により、まるで水槽のような結界内。

モロトモは急いで、結界が張られた元になっているトイレの入口に行く。しかし、少し間に合わなかった。泳いでいこうと思ったモロトモには一つ誤算があった。体が右に傾き、全く動けなくなってしまった。右足、右手が岩の義足、義手だからその重さにより、泳げなくなったのだ。


今思い出せば、ビートは首に傷をつけ、かすっても頭ごと無くし殺す作戦ではなく、苛立たせるためにとったと思われる水道管に傷をつける行為が真の作戦であり、そのあとは自分がどうなろうと右手を義手に変えて、自分を犠牲にしてまでの相打ちをずっと考えての行動であったのだ。


モロトモは悔しかった。2対1の状況で逃げようとせず、2人とも倒してやると意志の強いビートの傲慢さにずっと踊らされていたのだ。


モロトモは水の中、遠くなっていく意識の中、手を合わせて覚悟を決めて呟く。


「巨龍」


その瞬間モロトモの手から30mはある龍が飛び出す。すぐに結界内は龍の大きさに耐えれず、弾け飛んだ。モロトモは初めて能力を使った。ここまで追い詰められたことは今までなかったからだ。


--------------------


外に出た頃にはもうモロトモの右手と右足は元に戻っていた。

すでに岩もモロトモも瀕死状態であった。水を浴びすぎてしまった。

奥の部屋から楽しそうな談笑が聞こえてくる。


なんだ今のとてつもない破裂音?

カンブラディッシュの爺さんの凄いおならだろ

わはははははははは


モロトモはイライラした。

ビートはこんな奴のために散って行ったのか。シタクウカンの奴らは今この瞬間も命の灯を守るために戦っているのになぜこんな楽しそうにできるのか


岩野郎。黒真珠を貸せ。今すぐ


黒真珠を貸してもらうとモロトモは立ち上がり、30秒もしないうちに談笑していた計26人の天使を惨殺した。そしてその肉を食い完全に体力を回復させた。


こいつらが悪魔より上の存在?吐き気がする


モロトモは呆気に取られていた。そして少しするとあと2人と思い出し、歩き出した。


おい岩野郎。ぱぱっと終わらすぞ。元闇様に殺される前にな。


モロトモが振り向くと岩は粉々に砕け散っていた。その前に1人の天使が立っていた。髪がきっちりと七三分けされた、赤髪の中年だ。

モロトモは吐き気を催した。とてつもなく嫌なオーラ。泣き出しそうだ。

震えるモロトモにその天使は一言発する。


君だよね?これやったの。強いね。

何しにきたの?迷子?


モロトモは動けなかった。動いたら間違いなく死ぬ。だが動かなくても死ぬ。ビートのような優しい殺し方ではない。酷く辛い、この世に生まれたことを後悔するような死に方だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る