2. 開戦

天使も悪魔も2種類いる。補助系と戦闘系。 

天使も悪魔も生まれつき1つなんらかの能力を待つ。それが補助向けであったら補助系、戦闘向けであったら戦闘系となる。

天使は特に優秀な能力を持つものは王からシキと呼ばれる称号をもらい、王の護衛など大切な役割がある。


だが平和なウエクウカンで色や戦闘天使が活躍する場面はなく、真面目に特訓し来るかもしれない緊急事態に備える天使などほとんどいなかった。


ビートは王から橙の色を得ており、他の天使より比較的王への忠誠心が強く、天使の中でも実力者であった。


モロトモはさっきかすった傷の血を拭った。その時にあることに気づく。


的?


傷ついた場所に的のような模様が浮かんでいる。弱肉強食のシタクウカンを生き延びてきたモロトモはすぐに気がついた。なんらかの能力だと。

この相手の能力が全く分からない戦いには常識がある。誰しも死にかけながら覚えることだ。それは相手の能力を過大評価すること。

能力と発現条件。

これを見誤ると形成が逆転する可能性が高いのだ。

モロトモは、的は敵に傷をつけた時に発現し、能力は的を貫くと即死、優しくてもその体の部位が使えなくなる。こう睨んだ。

となれば相手の恐ろしく素早い槍をかわし、致命的な位置に手刀を決めること。

モロトモの判断力はシタクウカンでの死んだ方が何倍もマシな世界を生きていくことにより急激に養われた、自分の身を守る尊きものであった。


動くな。すぐに楽に殺してやる。


ビートが言う。モロトモはすぐに口を開き、相手の槍が飛んでくるタイミングを正確に判断する。


勘違いしているようだから教えてやる。

死ぬのはお前だ。


瞬きをする間もないスピードでビートが差し迫る。モロトモは横に身体を傾けビートの腰に手刀を入れる。しかし、ビートも早かった。右足の的に少し槍がかすった。


モロトモは少し笑った。さっき完璧にかわせなかった槍を今回は多少かすったが槍のスピードに反応して、相手の腰に手刀を入れられたためだ。


ビートは憤怒した。シタクウカンで互いに低俗な殺し合いをし、他を食わないと生きていけない下等な悪魔に攻撃を喰らったためだ。

自分は天使で悪魔と異なり浄く、完璧な存在。

そう言う思いが強くあった。

それと同時に困惑もしていた。こんなに強い悪魔を見たことがない。何かシタクウカンで異変が起きており、天使の障害になるものと思ったからだ。


一発いれてやったよ。お偉い天使さん


モロトモが煽る。その途端モロトモはバランスを崩し倒れる。


かすっただけだからな。まあこんなものか。


ビートがため息混じりで言う。

モロトモは右足を見て仰天した。右足がなくなっている。痛みは全くなく元々右足がついていなかったのではないかとさえ思えた。

ここでモロトモは確信する。相手の能力は一度攻撃が当たった場所に的をつけ、槍で完璧に貫くと、この世から相手の存在を消す能力。今回はかすったため右足のみが消えた。


モロトモは今までこんなチート能力を持つものは自分より遥かに強い数人の悪魔だけだと思っていた。


バランスをとりながら俺を倒すことはできない。今度こそ動くな。俺の攻撃は他の天使と違って痛みを伴わない。安らかに逝け。


ビートが冷酷な顔で言う。モロトモは覚悟を決めることしかできなかった。


 ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ


突然地震のような音が響く。ビートもモロトモも互いに音の原因をキョロキョロと探す。


岩野郎?


モロトモが不思議そうに岩に話しかける。

男が彫ってある不気味なあの岩がガタガタの原因であった。

ビートは岩を警戒した。


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