Repeat

嵐 けだもの

伝承編

1.Repeat point

簡素な世界。下と上

ウエクウカンでは天使が平和に暮らし、

シタクウカンでは知能のない悪魔たちが共食いしあう弱肉強食の世界。

天使は今夜も大界天聖堂で談笑をしながら味気ない時間を過ごす。

最近トイレが近くなったカンブラディッシュは自身の老いた体をひしひしと感じながら来世について考えていた。


天使は全員合わせ500人いる。誰が亡くなると約30日後空から新たな天使が赤子として降ってくる。その降ってくる角度により、名字を決めている。なのでたとえ何があったとしても500人からの増減はない。減っても30日後にはまた500人に戻るからだ。

天使は悪魔とは違い食事も摂らない。聖臓と呼ばれる臓器でエネルギーを作り出し、エネルギー過多になると水に吐き出す。これが天使のトイレの定義である。


人生最初から最後まで仲間たちとほのぼのと過ごしてきた日々を思い出しながらトイレまでの廊下をあるくカンブラディッシュは今までに感じたことのない刺激を感じた。その途端、体は制御できなくなり倒れる。声が出ない。


"これが痛み"


カンブラディッシュは突然自分に死が迫ったと思った。今まで看取ってきた天使たちは何かに苦しんで死んでいった記憶はない。死とは冷たくこんなに辛いものだったのかと目に涙を浮かべた。

体から温もりが抜けていく感じがする。寒い。

そう思いながらふと上を見上げた。

血まみれの手。青白くか弱そうな手をしている。こんな天使は見たことない。


悪魔…


生気を失ったほとんど息の音しか聞こえない声でそう呟くとカンブラディッシュは死んだ。


あと29、おい岩野郎ちゃんと黒真珠持っておけよ


オールバックで目に赤い模様が入った悪魔が隣の長髪の男性が十字架にかけられている彫刻が施されている少し浮いている不気味な岩に話しかける。


よーーしこのままトイレに向かうぞ!


上機嫌な悪魔の声が長い廊下に響く。


悪魔と謎の浮いた岩が広いトイレに入った瞬間を見ていた天使がいた。


ここには誰もいないのか。よし次探そ


悪魔はまだその天使に気づいていない。

トイレから出ようとした瞬間異変に気づく。


結界?


悪魔は不思議に思った。さっき入ってきたばかりなのに誰が自分たちをこの短時間でトイレに閉じ込めたのだろう


貴様達。何者だ

なぜ悪魔なのに言葉を話せる?どうやってウエクウカンに来た?その浮いている岩はなんだ?


天使の声が聞こえてきた。振り向いた途端、槍にとてつもないスピードで突かれる。悪魔は軽くかわしたが少し右足をかすってしまった。だがなぜか悪魔は笑顔だった。


2人目発見。あと28人だな


天使は気狂ったやつだと悟った。かすっただけとはいえ血が出てる。それなのに少しも痛い顔せず笑っていることに微少の恐怖を感じた。


俺はモロトモ。隣の岩は喋れないし、名前も知らない。天使も戦う奴がいるのか。さっきのやつは近づいても全く気づかず情けない声で死んでいったからな。これは驚いた。


悪魔のモロトモはのうのうと話す。これに対して微少の恐怖を押しのけて天使はモロトモを必ず殺すことを決意し、口を開く。


我の名はビート・エートス

主になんの危害も加えていない我が同胞を殺していたのを見た。ここウエクウカンで血が一滴でも流れることは許されない。低俗なシタクウカンからきた悪魔よ死んで詫びろ


この戦いが天使と悪魔の戦争に繋がる、初めてのものであった。



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