太陽が泣いている

追求者

第1話



 22世紀の地球は、エネルギー危機に直面していた。化石燃料は枯渇し、再生可能エネルギーだけでは消費電力を補えなくなっていた。そんな中、人類は太陽のエネルギーを直接利用する技術を開発し、無限のエネルギーを手に入れたかに見えた。しかし、その技術には大きな代償が伴っていた。



 リナ・タカハシは、太陽エネルギーを管理する巨大企業「ソルテック」のエンジニアであった。彼女は、太陽からエネルギーを抽出する装置「ヘリオス」の開発に携わっていた。ヘリオスは、太陽の表面の一部に設置された巨大なパネルを通じて熱エネルギーを吸収し電気エネルギーに変換し、超電導状態の銅線をへて地球に送る仕組みだった。


 リナは、日々の業務の中で太陽の観測データを分析していたが、ある日、異常なエネルギー波を検出する。彼女はそのデータを上司に報告するが、上司は「一時的な異常だ」と取り合わなかった。



 ソルテックのCEOであるカール・モリスは、利益を最優先に考える強欲な人物であった。彼は、リナの警告を無視し、さらに多くのエネルギーを抽出するよう命じる。カールは、株主たちに対して「無限のエネルギー供給」を約束し、そのためにはどんな犠牲も厭わなかった。


 しかし、実際は太陽のエネルギー放出量は日に日に減少しておりリナは、太陽が限界に達しつつあることを知り、危機感を募らせる。彼女は同僚のエンジニアたちと共に、太陽の状態を詳しく調査することを決意する。



 ある日、リナは太陽が異常な活動を始めたことを発見する。太陽はまるで涙を流すかのように、巨大なフレアを放出し始めた。フレアは地球の通信システムや衛星に深刻な影響を与え、世界中で混乱が広がる。


 リナは、このままでは太陽が崩壊し、その余波で地球も滅びることを確信する。彼女は、ソルテックの幹部たちに対して「ヘリオス」の停止を訴えるが、カールはそれを一蹴する。彼は「エネルギー供給を止めることは」と言い張り、リナの提案を拒絶する。



 リナは、救うために「ヘリオス」を停止させる計画を立てる。彼女は仲間たちと共に、ソルテックの施設に潜入し、装置を停止させるための決死の行動に出る。彼らは警備員やセキュリティシステムをかいくぐり、ついに「ヘリオス」の制御室にたどり着く。


 リナは、制御室のコンソールに向かい、緊張した手でキーボードを叩き始めた。彼女の指は、停止コードを入力するために素早く動いていた。画面には、次々とコマンドが表示され、システムが徐々に停止プロセスに入っていく。


その瞬間、制御室のドアが勢いよく開き、カールが現れた。彼の顔にはが浮かんでいた。「リナ、何をしているんだ!」カールは叫びながらリナに近づいてきた。


リナは一瞬だけ手を止め、カールを見つめた。「カール、これ以上太陽を傷つけるわけにはいかないの。私たちの未来のために、今ここで止めなければならないのよ。」


カールはリナに手を伸ばし、彼女を引き離そうとした。しかし、その瞬間、リナの仲間であるエンジニアたちがカールの腕を掴んだ。「リナ、続けて!僕たちがカールを抑える!」


リナは再びキーボードに向かい、最後のコードを入力し始めた。彼女の心臓は激しく鼓動していたが、決意は揺るがなかった。画面には「停止プロセス開始」のメッセージが表示され、システムが徐々にシャットダウンしていく。


カールは抵抗しようとしたが、ジョンと他の仲間たちが彼を押さえつけていた。「リナ、急いで!」ジョンの声が響く中、リナは最後のキーを押した。


「ヘリオス」の巨大なパネルがゆっくりと停止し、太陽へのエネルギー抽出が完全に止まった。リナは深く息をつき、画面に表示された「停止完了」のメッセージを見つめた。彼女の目には涙が浮かんでいたが、それは安堵の涙だった。


「やったわ、リナ!」仲間たちが歓声を上げ、リナを抱きしめた。彼女は微笑みながら、太陽が再び輝きを取り戻すことを願った。

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 リナたちの努力により、「ヘリオス」は停止し、太陽は徐々に回復していく。人類は深刻なエネルギー不足に見舞われるが、人類は自然の力を尊重し、新たな持続可能なエネルギーを模索する新たな道を歩み始める。


 リナは、太陽の観測データを見つめながら、新たな希望を胸に抱く。彼女は、未来のために戦った自分たちの行動が、次の世代にとっての教訓となることを願っていた。


 が、それが叶うことは無い。


 数少ないエネルギーを奪い合い世界中で核戦争が勃発した。貴重な核エネルギーを使い。


 人類はどこまでも欲深かったようだ。

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